キーパーソンインタビュー

バンダイならではの強みを生かしカード事業のターゲット層を拡大する

(株)バンダイ 取締役 垰 義孝

(株)バンダイ
取締役 垰 義孝

1984年4月
(株)バンダイ入社
メディア戦略部門、カード事業部門などを経て、
2007年4月
取締役就任

国内で好調に推移しているトイホビーSBUのカード事業は、ネットとカードを融合させた新たなビジネスの開発など、顧客拡大に向けて積極的に事業展開を進めています。今回は(株)バンダイで自販事業政策を担当し、カード事業部などを管掌する垰 義孝取締役に、カード事業の現状や新たな商品展開、そして今後の事業展望などについて聞きました。

バンダイならではの強みを生かしターゲット層を拡大する

カードゲームの市場規模は?

垰:現在、ノーマルカードである「カードダス」と、「データカードダス」に代表されるデジタルカードを合わせると、約900億円の市場規模があります(バンダイ調べ)。不透明な経済環境の中、100円単位で楽しめる価格設定も支持されているようです。バンダイのカード事業も、カードダス、デジタルカードとも安定した収益を上げています。

バンダイはデジタルカード分野では高いシェアを保っていますね。

垰:この分野は、2003年に他社からデジタルカードの筐体が投入されたことで市場が急拡大しました。バンダイがデータカードダスでこの分野に参入したのは2005年で、後発メーカーなのですが、今では8割を超えるシェアを獲得しています。
バンダイの強みの1つは、プラットフォーム戦略です。バンダイでは単独ソフトの専用筐体ではなく、データカードダスという筐体の中にソフトを入れ替える仕組みを作り、効率的な運営と柔軟なソフト展開を可能にしました。

最近は玩具との連動も活発です。

垰:バンダイのもう1つの強みは、ペリフェラル戦術にあります。ペリフェラルとは周辺機器のことで、例えば「仮面ライダーバトル ガンバライド」では、変身ベルトのデザインを筐体に反映し、さらにそのベルトで使用するメダルやスイッチなどのキーアイテムと連動して遊ぶことができます。プラットフォーム戦略とは逆のように見えますが、ソフトを入れ替えただけでは子ども達に新しさが伝わりません。プラットフォーム戦略にキャラクターの特性に合わせたペリフェラルを加え、周辺商材と連動させて遊びを広げていることが、バンダイがシュアを獲得している大きな要因だと思います。
さらに、豊富なキャラクターラインナップを活用することができるのも強みの1つです。11月下旬には新タイトル「データカードダス ダンボール戦機」を投入し、現在計7タイトルが稼働しています。

2010年11月から新型のデジタルカードマシンを導入しましたね。

垰:フラットパネルリーダー搭載の新型マシンは、グループの(株)バンダイナムコゲームスと共同開発したもので、フラットパネルでカードのデータを読み込み、パネルに置いたカードを動かすことで画面上のキャラクターを操作できる新しい筐体です。また、別売の「ヒーローアバターカード」で自分の分身(アバター)をゲームに登場させることもできます。昨年の「ドラゴンボールヒーローズ」、2011年7月に導入した「ガンダムトライエイジ」とも高い人気を集めており、データカードダスと新型マシンを合わせて、約2万4,000台が稼働しています(2011年9月末現在)。

ガンダムトライエイジ

ガンダムトライエイジ
©創通・サンライズ ©創通・サンライズ・MBS

新型マシンの導入で事業環境に変化はありましたか?

垰:データカードダスのメインユーザーは、未就学児から小学校低学年ですが、新型のデジタルカードマシンは、さらに上の年齢層に事業を拡大するために導入しました。その結果、「ガンダムトライエイジ」は、小学校高学年から中学生を中心に幅広い層に支持されています。また、新型マシンはネットワーク機能により、コントロールセンターから「ミッション」と呼ばれる期間限定的なテーマを随時配信できることも特徴の1つです。例えば「ガンダムトライエイジ」では、放映中のTVアニメ「機動戦士ガンダムAGE」の進捗に合わせてゲーム内容が更新されるなど、密接に連動できるようになりました。さらに、前日の稼働状況がデイリーに送られてくるため、より柔軟で迅速な対応が可能になりました。

さらなる事業拡大に向けカードを軸に新たな遊びを創出する

ネットカードダスも好調ですね。

垰:2010年に発売した「プロ野球 オーナーズリーグ」が2年目の今年も好調を維持しています。「ネットカードダス」は、カード事業の新たな可能性を探っていた中で、カードとネット環境を融合させて誕生しました。カードに印刷されているシリアルコードをパソコン画面に打ち込んで登録すると自動的にゲームが進行します。プロ野球好きの大学生やサラリーマンにターゲットを絞り開発しました。
10月にはオリジナルコンテンツの新タイトル「サイバーワン」を発売し、実在企業とのコラボレーションや、「週刊少年サンデー超増刊号」(小学館刊)と連動するなど、新たなチャレンジにも取り組んでいます。

プロ野球オーナーズリーグ

プロ野球オーナーズリーグ
(社)日本野球機構承認 NPB BIS プロ野球公式記録使用
(社)全国野球振興会公認

「バトルスピリッツ」シリーズが4年目を迎えました。

垰:2008年に発売を開始したカードダス「バトルスピリッツ」シリーズは、カードゲーム市場でのシェア拡大を目指して投入しました。2011年9月末にはシリーズ累計販売枚数が6億枚を突破し、10月からは新シリーズもスタートするなど着実に定着しています。当初から小学校3年生男児にコアターゲットを絞り、彼らに合わせた緻密なマーケティング展開をしてきた成果が現れてきたと思っています。グループの(株)サンライズが制作しているアニメとも密接に連動しており、5年、10年と続く息の長い商品に育てていきます。

バトルスピリッツ

バトルスピリッツ
©サンライズ/バンダイ・メーテレ

今そのほかの新展開は?

垰:2011年の夏から「ARカードダス」の販売を開始し好調な出足です。今の最新の技術とカードを融合して生まれた商品で、カードに印刷されたARマーカーをiPhoneなどで読み込み、事前にダウンロードしたアプリケーション上で対戦します。まるでカードからキャラクターが飛び出たような感覚を味わうことができます。

今後の事業展望について教えてください。

垰:バンダイのカード事業は、トイのターゲットでもある未就学児から小学校低学年までを確実に押さえ、その渦の中心に常にバンダイがいる環境を、カードが先兵となって先陣を切る形で作り上げたいと考えています。それを軸に、カードと新しい技術の融合により、新たなターゲットに向けた新しい遊び、サービスを創出することで、さらなる事業拡大を目指します。また、海外展開の強化も大きなテーマの1つです。現在、来期以降の本格展開に向けたさまざまな準備を進めていますので、ぜひご期待ください。

※このインタビューは、2011年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。