キーパーソンインタビュー

「コンテンツ事業No.1+ボーダーレス展開」に向けIP軸の事業横断戦略を加速する

(株)バンダイナムコゲームス 代表取締役社長 大下 聡

(株)バンダイナムコゲームス
代表取締役社長 大下 聡

1976年4月
(株)バンダイ入社
バンダイネットワークス(株)代表取締役社長、
バンダイビジュアル(株)代表取締役社長を経て、
2012年4月
現職就任

IP(キャラクターなどの知的財産)を、さまざまな出口に展開するコンテンツSBU(戦略ビジネスユニット)では、中期ビジョンとして新たに「コンテンツ事業国内No.1+ボーダレス展開」を掲げました。
今回は2014年4月に(株)バンダイナムコゲームスの社長に就任した大下聡に、コンテンツSBUの方向性や今後の抱負について聞きました。

バンダイナムコゲームスの社長に就任した今の心境を聞かせてください。

大下:私はこれまで、バンダイ、バンダイネットワークス、バンダイビジュアルで、さまざまな事業に携わってきました。その経験から、エンターテインメントビジネスを左右するのは、経済環境ではなく、変化するユーザー嗜好や進化するテクノロジーにスピーディに対応し、チャレンジし続けることができるかどうかだと思っています。コンテンツSBUには幅広い事業領域があり、我々の可能性はまだまだあります。とてもやり甲斐があって楽しみだというのが、今の心境です。

「新しい中期計画がスタートしました。

大下:前中期計画(~2012年3月)でコンテンツSBUは市場環境やユーザー嗜好の変化にスピーディに対応することができず苦戦しました。そこで「リスタートプラン」をスタートし、スピードあるグループへの変革、収益力向上と財務体質の強化に取り組みました。その一環で、自分達の強みを活かすことができる商品・サービスへの選択と集中や、従来の出口別組織からIPを軸とした組織体制への見直しを図りました。この結果、特に国内の各事業ではヒットが生まれ、業績も上向いてきています。しかし、家庭用ゲームのワールドワイド展開や海外展開についてはまだ課題もあり、回復の途中段階です。これまでは「守り」中心でしたが、現中期計画では「攻め」に転じ、各事業で国内No.1を目指します。その上で、その強みを欧米やアジアなどにボーダレスで展開していきたいと考えています。

重点戦略を教えてください。

大下:「既存事業再構築⇒No.1戦略」「IP軸・事業横断最大化戦略」を推進するほか、グループ横断の機能戦略である「グループ連動ネット戦略」をコンテンツSBUが推進役となり進めていきます。今後は、リスタートプランで進めたIP軸の展開を加速させます。いかにIPの価値を最大化させるかを重視し、コンテンツSBUで我々が展開する複数の出口間で連動を図り、戦略的に商品・サービスを提供していきます。これに加え、トイホビーやアミューズメント施設など、ほかのSBUとの連動も図ります。さらに、事業領域という視点だけでなく、地域や年齢層などの視点からも、対応できていない部分はないか、もっとできることはないかを考え、IPを軸に戦略的に発信していきます。
「グループ連動ネット戦略」は、我々が展開するさまざまなWebサイトやネットワークサービスのユーザーを1つのIDでつなぐことで、既存のメディアやサービスとの連携を図り、ユーザーに直接情報発信するマーケティングツールとして活用しようというものです。バンダイナムコIDの登録者数は4月時点で200万人強ですが、これを3年後には3,000万人にし、バンダイナムコグループならではのサービスを提供する新しいビジネスモデルを構築していきたいと考えています。

4月2日に(株)バンダイナムコスタジオを設立しましたが、この目的は?

大下:中期計画のスタートに合わせて、バンダイナムコゲームスの約1,000名の開発部門を分社化しました。これは責任と権限を明確にすることで、よりスピーディかつクオリティの高い開発部隊にするとともに、開発に特化した制度・仕組みを導入し環境を整えることで、モチベーションアップを図ることが目的です。すでに新会社はスタートしており、独立した開発会社として自立するために、知識や技術、経験といった財産が、社員のやる気と一緒になって湧き出ており、これから楽しみです。今後は映像製作を行うサンライズのように、新たなIP創出も行う気鋭のIP創出会社になってもらいたいと思っています。

家庭用ゲームの戦略は?

大下:国内は収益が回復してきましたので、バンダイナムコスタジオも有効活用し、業務用と連動可能なフランチャイズタイトルの投入や、旬なタイトルのスピーディな投入に努めていきます。また、パッケージソフト発売後のダウンロード販売で継続的な収益を上げるなど、ユーザーニーズの変化にも対応します。課題は欧米ですが、組織と体制の整備により、海外拠点を営業・マーケティングに特化しました。日本発でワールドワイドで通用するフランチャイズタイトルの販売を行うことで、収益が出せるビジネスモデルを構築していきたいと考えています。2012年度も「鉄拳タッグトーナメント2」をはじめ、「機動戦士ガンダム」シリーズなど、これから期待のタイトルを続々と投入する予定です。

鉄拳タッグトーナメント2

「鉄拳タッグトーナメント2」
©NBGI

業務用機器・景品は海外展開も推進 SNSや映像音楽も新たな挑戦を続ける

業務用ゲーム機や景品は?

大下:すでに国内で高いシェアの業務用ゲーム機は、技術力・開発力に磨きをかけ、4月に導入開始した「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス フルブースト」のような人気シリーズに加え、「釣りスピリッツ」「ビッグバンスマッシュ」など新機種の投入も行います。また、海外に向けても、リデンプション機(ゲームの結果に応じてチケットを払い出す機械)など現地で人気の高い機器を展開していきたいと思います。
景品では、フィギュアなどのクオリティの高さにより、市場でNo.1の地位を築いています。今後は「一番くじ」などロトビジネスで国内でのさらなるシェア拡大のために、従来のコンビニ流通に加え、書店、カラオケなどの新規流通を開拓するとともに、アジアを中心とした海外展開にも力を入れます。

釣りスピリッツ

「釣りスピリッツ」
©2012 NBGI

ネットワークコンテンツは?

大下:ネットワーク環境と端末の普及により、オンラインゲームの人気がSNS、PCともに高まっています。今後はバンダイナムコゲームス、バンダイナムコオンライン、BNDeNAでそれぞれの強みを活かしたネットワークコンテンツを提供し、安定的に事業展開していきます。業界団体やプラットフォーマーとの協調をさらに深め、より安心していただける市場環境づくりとサービスの提供を行っていきたいと考えています。

マクロスSP クロスデカルチャー(仮)

マクロスSP クロスデカルチャー(仮)
©1982,1984,1992,1994,1995,1997,1999,2000,2002ビックウエスト
©2007ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS
©2009ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
©2011ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
©BNDeNA

映像音楽コンテンツはどうですか?

大下:映像音楽コンテンツにとっては、IPを創出育成する、獲得するということが重要なミッションの1つです。グループでIPの創出育成を行うことで、イベント上映とパッケージ販売をほぼ同時に行った「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」のように、1つのIPを核にさまざまな仕掛けを行うことが可能になるからです。2012年度は「機動戦士ガンダムUC」に加え、「宇宙戦艦ヤマト2199」でもその経験を活かした展開を準備しています。また、グループ発IPの「TIGER(タイガー) & BUNNY(バニー)」の映画化も予定しています。映像音楽コンテンツでは、映像だけでなく、音楽やライブという出口も積極的に活用し、IPを盛り上げていきます。

機動戦士ガンダムUC

機動戦士ガンダムUC
©創通・サンライズ

今後の抱負をお願いします。

大下:グループ全体の中期ビジョン「挑戦・成長・進化」のスローガンの通り、まずは計画を達成し、国内事業No.1を目指します。そのためにも、社員には明るく元気に、ポジティブに取り組んでもらいたいですね。

※このインタビューは、2012年6月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。