キーパーソンインタビュー

女性ならではの感覚と発想で女児にも幼児にも強いバンダイを目指す。

(株)バンダイ 取締役 飛田 尚美

(株)バンダイ
取締役 飛田 尚美

1986年4月
(株)バンダイ入社
1996年1月
(株)バンダイ・デジタル・エンタテインメント出向
2000年10月
バンダイネットワークス(株)転籍
2004年10月
(株)バンダイ再入社
2009年8月
(株)バンダイ ガールズトイ事業部ゼネラルマネージャー
2012年4月
(株)バンダイ取締役 新規事業政策、ガールズトイ事業部担当 兼 プレイトイ事業部ゼネラルマネージャー 兼 チーフたまごっちオフィサー

好調に業績を伸ばすトイホビーSBUでは、中期ビジョンである「真のグローバル化」を目指して事業ごとに積極的な取り組みを行っています。今回は今年4月に(株)バンダイの取締役に就任した飛田尚美に、担当するプレイトイ事業、新規事業政策の現状と商品展開、そしてチーフたまごっちオフィサーとして仕掛ける「たまごっち」の新たな取り組みなどについて聞きました。

これまでの経歴を教えてください。

飛田:バンダイに入社してから8年ほど女児玩具の企画開発に携わり、その後、マルチメディア端末「ピピンアットマーク」の立ち上げプロジェクトに参加しました。この事業からは2年ほどで撤退することになりましたが、培ったノウハウを活かし、グループ会社で「iモード」向けコンテンツ事業を行うことになりました。そこで私は、待ち受け画面にキャラクターを毎日配信する「いつでもキャラっぱ!」などの開発に携わりました。その後、2004年に再びバンダイに戻り、今年の4月より取締役として、新規事業政策やガールズトイ、プレイトイの担当に加え、チーフたまごっちオフィサーを務めています。

「たまごっち」はプリキュアと並ぶ女児向けの大きな柱です。

飛田:チーフたまごっちオフィサーとして、グループの重要IPの1つである「たまごっち」を、商品やメディア展開などさまざまな仕掛けにより、長く安定して支持されるIPに育成していくことを目指しています。
「たまごっち」は1996年に発売され、世界中で大ブームを巻き起こしました。その後、2004年に「かえってきた!たまごっちプラス」で復活し、現在は小学生女児の定番玩具・キャラクターとして定着しています。バンダイにとって、7~9歳をメインターゲットにした「たまごっち」は、3~6歳向けの「プリキュア」と並ぶ女児向けシリーズの柱です。「たまごっち」が高い人気を維持しているのは、2004年の復活以来、玩具としてだけでなく、キャラクターとして広く子どもたちに受け入れられるようにしようと育成してきたことが大きいです。その一環で、3年前からTVアニメの放映を開始し、「たまごっち」本体の展開だけでなく、アニメ関連商品を拡充することで、世界観の浸透を図ってきました。現在ではアニメ関連商品が、「たまごっち」本体と匹敵する売上規模となっています。

「たまごっち」は、9月からTVアニメの新展開がスタートしますね。

飛田:放送4年目を迎える今回のテーマは「夢」で、新たなキャラクターも続々と登場します。バンダイでは、アニメに登場する「ゆめキラバッグ」などの関連玩具をはじめ、人気の「たまもり」シリーズや遊べる消しゴム「たまケシ」などのさまざまな商品を展開していきます。
また、11月には「たまごっち」の新本体「Tamagotchi P’s」の発売も予定しています。新しい本体は、子どもたちのコミュニケーションツールという「たまごっち」のコンセプトをより強く打ち出す機能や、関連商品とのより一層の連動強化など、今まで以上に長く楽しんでいただける内容です。今後も、「たまごっち」本体と、アニメ関連商品の両面から、「たまごっち」を盛り上げていきます。

Tamagotchi P's

Tamagotchi P's
©BANDAI,WiZ
©BANDAI-WiZ/
TV TOKYO-2011 Team たまごっちTV

ゆめきらバッグ

ゆめきらバッグ
©BANDAI,WiZ
©BANDAI-WiZ/
TV TOKYO-2011 Team たまごっちTV

「たまごっち」の海外展開は?

飛田:「たまごっち」は海外市場でも支持されるポテンシャルを持っていますので、海外で復活させることも、テーマの1つです。北米では、1997年の第1次ブームを体験した世代を中心に、「TAMAGOTCHI L.i.f.e.」というブランドで、アパレルや雑貨などを展開していこうと準備しています。一方アジアでは、今秋から「Tamagotchi iD L」のテスト販売をスタートしています。

Tamagotchi iD L

Tamagotchi iD L
©BANDAI,WiZ

スマートフォン・エンターテインメントやファンシー雑貨など新カテゴリーも仕掛ける

プレイトイ事業の状況は?

飛田:6月に発売した「スマートペット」は、今年の「日本おもちゃ大賞」で、イノベイティブ・トイ部門の大賞を受賞し大変大きな注目を集めました。これはiPhoneを顔に見立てた玩具で、国内だけでなく欧米からの評価もたいへん高く、年末には欧米、アジア各国での展開を計画しています。バンダイは、「スマートフォン・エンターテインメント」という新しいカテゴリーの開拓を進めており、「スマートペット」以外にも、スマートフォンとボードゲームを融合した「絶叫!おばけ屋敷ゲーム」を発売しました。スマートフォンアプリを玩具などのモノと絡めることで、より面白いエンターテインメントをつくっていきたいと思っています。

スマートペット

スマートペット
©BANDAI

幼児向けシリーズも好調です。

飛田:「BabyLabo」「BlockLabo」の2つのカテゴリーを展開する「ラボ」シリーズが安定した人気です。日立製作所さんと共同で脳科学に基づいた商品開発を行っていることが、昨今の知育・教育玩具に対するお客様のニーズにマッチし、高い評価をいただいているのだと思います。今後はロングセラーシリーズを目指し、引き続き安心して使っていただける高い品質を維持し、売り場づくりにも力を入れていきます。トイホビー事業は、中期計画の戦略として、国内各カテゴリーにおける圧倒的No.1を目指していますので、この2シリーズを核に幼児向けカテゴリーのシェア拡大を図っていきます。

BlockLabo(ブロッグラボ)

BlockLabo(ブロッグラボ)
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV

BabyLabo(ベビラボ)

BabyLabo(ベビラボ)
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV

新規事業の政策について聞かせてください。

飛田:バンダイがこれまで充分に展開できていなかったファンシー雑貨にも力を入れていきます。今年の4月より、グループ会社のバンプレスト発の癒し系キャラクター「カピバラさん」のビジネスをバンダイに移管しました。バンダイの強みを活かすことで、ぬいぐるみやファンシー雑貨などを中心に、より大きな展開を行っていく予定です。また、「たまごっち」についても、すでに幅広い層に高い認知度を獲得していますので、新たな切り口としてファンシー雑貨の展開を行いたいと思っています。
このほか、私は以前、デジタルやネットワーク関連事業に関わっていましたが、今の子ども達にとってデジタルやネットワークは馴染みの深いものです。培った経験を活かして、新たな玩具の切り口はないか、グループで連携した新たなビジネスができないかと考えています。

カピバラさん のすのすむいぐるみ

カピバラさん のすのすむいぐるみ
©TRYWORKS

取締役としてどんな役割を期待されているのでしょうか?

飛田:ボードメンバーにはいろいろな考え方を持った人がいたほうが良いですし、社長の上野も「さまざまな視点や考え方を持った取締役がいるべきだ」と話しています。その意味で、女性ならではの感覚や発想で意見を出し、新しい展開を期待していると言われています。また、女性社員の活躍を後押ししていくとともに、玩具を購入する際に決定権を持つお母さんの視点に立ってモノづくりをする、それが私に与えられた役割だと思います。
これまでのバンダイは、どうしても男児向け玩具のイメージが強かったと思います。しかし、これからは、女児玩具にも、幼児玩具にも強いバンダイを作る。それも私の大きなミッションだと思っています。

※このインタビューは、2012年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。