キーパーソンインタビュー
映像・音楽というエンターテインメントを
多様な出口で提供していく

バンダイビジュアル株式会社
代表取締役社長 川城 和実
- 1959年11月
- 4日生
- 1982年4月
- (株)キャニオンレコード(現・(株)ポニーキャニオン)入社
- 1989年7月
- (株)バンダイ入社
- 1994年4月
- バンダイビジュアル(株)入社
- 1999年5月
- 同社取締役
- 2003年5月
- 同社代表取締役社長
- 2007年6月
- (株)バンダイナムコホールディングス取締役
- 2010年4月
- バンダイビジュアル(株)取締役副社長
- 2012年4月
- 同社代表取締役社長(現在)
- 2015年4月
- (株)バンダイナムコホールディングス執行役員
- 2015年6月
- 同社取締役映像音楽プロデュース戦略ビジネスユニット担当(現在)
エンターテインメントの多様化が進む中、映像音楽プロデュースSBUでは、パッケージ中心のビジネスモデルから事業領域を拡大し、ライブ事業をはじめとする新たなビジネスへの挑戦に取り組んできました。今回はバンダイビジュアル㈱の川城和実社長に、各事業の状況やIP創出への取り組み、そして次期中期計画の方向性などについて聞きました。
パッケージソフト市場の現状と今後の見通しについて聞かせてください。
川城:市場全体の売上は10年以上前から減少傾向にありますが、その一方で、お客さまから支持される作品については多数のヒットが生まれています。例えば、長編アニメーション映画「この世界の片隅に」は、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に輝くなど、各方面から非常に高い評価をいただき、当社が発売した映像パッケージも10万枚以上を販売するヒット商品となっています。良質な作品には必ずニーズがあります。パッケージに同梱する特典などの付加価値をさらに充実させるなど、パッケージならではの楽しみ方も追求しています。
「この世界の片隅に」
©こうの史代・双葉社・「この世界の片隅に」製作委員会
新たな出口として注力しているライブ事業や音楽事業の状況は?
川城:いずれも順調です。映像音楽プロデュースSBUでは、現・中期計画のビジョンとして「アニメ映像音楽分野におけるNo.1企業グループ」を掲げています。映像音楽を核として、全体のビジネスを成長させるために、事業領域の拡大に積極的に取り組んできた結果、成果が生まれています。特に海外でのライブ事業は、従来収益化に向けた仕組みづくりが難しかったのですが、北米2都市と上海で開催したアニメソング(アニソン)のライブイベント「Anisong World Matsuri“祭”」で、収益面でも手応えを感じることができました。このように海外のライブ事業が収益に貢献できたことは、将来に向けて明るい可能性が見えた、大きな一歩だったと感じています。
映像や音楽というエンターテインメントをお客さまに提供するという点では、視聴型のパッケージも、体感型のライブイベントも同じです。マーケットやメディアの変化に必要以上に右往左往せず、軸足を持って進むことが大切だと思います。
海外のIPファンに向けた取り組みは?
川城:北米の「Anime Expo」をはじめ、各国の見本市などで開催される大きなイベントに積極的に参加し、ライブを展開しています。さらに、イベント会場に行けない方でもリアルタイムで一緒に楽しめるライブビューイングの展開も強化しています。この仕組みは「ラブライブ!」などですでに導入し、アジア地域ではチケットがすぐに完売するなど、大変な人気になっています。欧州では、2016年4月に、㈱ランティスが㈱アミューズと共同で合弁会社を設立し、アニメ・アニソンを中心としたコンテンツの発信を行っています。日本のアニメへの注目度が非常に高い欧州で、ビジネス拡大に向けて動いていきたいと考えています。
9月に子会社化した㈱アクタスとは?
川城:人気IP「ガールズ&パンツァー」などのアニメ制作を手がける会社です。IPの創出・育成には、グッズなどの各種展開と連動したスケジュール進行はもちろん、ファンの動向を踏まえたコンテンツの精査・見直しなど、アニメ制作との密な連携が必須です。今回、アクタスがグループ入りしたことで、アニメ制作と周辺ビジネスがより一体となったIP展開が可能になります。この意義はとても大きいと思います。アクタスは小規模な会社ですが、良質な作品づくりをとことん追求しているスタジオです。アニメ制作では、効率性を求めてクオリティーが置き去りにされるケースが見受けられることがありますが、その中で「良いものを作るんだ」という高い志を持って制作に当たれるスタジオは大変貴重です。今後も、制作現場のクオリティーを担保しつつ、バンダイナムコグループが持つIPの出口といった資産を存分に活用して、制作に当たってほしいと思います。
下半期の注目タイトルは?
川城:アクタス制作のアニメ作品では、12月から全6話で構成された「ガールズ&パンツァー 最終章」の第1話が劇場上映されます。それと並行して、12月下旬から池袋サンシャインシティで「ガールズ&パンツァー」の大規模な原画展を開催する予定です。これらの施策を通して、5周年になる「ガルパン」を盛り上げていきます。また、アクタスが制作に携わり今夏TV放送された「プリンセス・プリンシパル」も好評ですので、新規IPとしてさらなる拡大を目指し、施策を打ち出していきたいと考えています。
そのほか、グループが携わる作品として、10月から放送が始まった「ラブライブ!サンシャイン!!」のTVアニメ2期が、すでに高い支持をいただいています。劇場版では、11月18日に「機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER」と「機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤い残影」を同時上映したほか、「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第四章が2018年1月に上映されます。さらに、2018年1月からは㈱バンダイナムコオンラインのスマートフォン向けゲームアプリケーション「アイドリッシュセブン」がいよいよTVアニメとしてスタートします。注目作が目白押しですので、ぜひご期待ください。
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最大の課題はIPの創出
出口の豊富さを生かしIPの種を育てていきたい
IP創出におけるグループ全体としての強みを聞かせてください。
川城:IPには、例えばゲーム向きのIP、アニメ向きのIPなどさまざまあり、創出においても活用においても、出口との親和性は非常に大事だと考えています。バンダイナムコグループには、エンターテインメントの幅広い事業があり、出口の豊富さが強みです。すなわち、IP活用の出口の数だけ、それぞれの出口にふさわしいIPを生み出す畑を持っているともいえます。各事業が持つユニークな畑で、種を植え育んでいく。映像音楽プロデュースSBUの中で育つものもあれば、他のSBUに横断的に展開できるIPも生まれます。そういうものをそれぞれのSBUが育て、グループ全体で強くなっていければと思います。
次期中期計画の方向性は?
川城:最大の課題はIPの創出です。IPの創出と活用はビジネスの両輪ですが、まずはやはりIPがないと全体のビジネスが拡大していきません。社会的にも話題となるような、強力な新しいIPの創出にどれだけパワーを注げるかが、次期中期の大きなテーマだと思います。
“人”の部分で大事にしているモットーは何ですか?
川城:人材活用では「好きが一番の適性」だと考えています。作品を作ったり、活用したり、営業したり、サポートなどの部分も含めて、やはり好きだということは大事で、全てに勝るものだと思います。社員には好きなことに挑戦してほしいと思いますし、仕事を好きになってもらえるような会社を作っていきたいと常に思っています。会社の重要事項を上意下達で決めるのは、ガバナンスの手法の一つとしては良いですが、IP創出や企画の決定も、ともするとその流れに乗っかってしまうことがあり、面白い芽を摘んでいたり、チャレンジの場を奪っていたりするのではないかという思いを強くしています。私としては、好きでやりたいという人たちが、自由にものを作れる環境を整え、それにふさわしい組織にすることを次期中期計画のポイントとしたいです。そのために大幅な権限委譲などを含め、大胆に変えていきたいと思っています。自分で決めたことに責任を持ち、やりたい、面白いと思ったものをどんどん実現できる環境にしたいと思います。
※このインタビューは、2017年11月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。