キーパーソンインタビュー

ゲームとネットワークを融合し新たな市場を開拓する

(株)バンダイナムコゲームス 上席執行役員 浅沼 誠

(株)バンダイナムコゲームス
上席執行役員 浅沼 誠

1986年4月
(株)ネットワーク入社
1988年
(株)ネットワークと(株)バンダイとの合併に伴い、バンダイ入社
2000年10月
ネットワーク事業部門の分社化に伴い、バンダイネットワークス(株)入社
2006年6月
バンダイネットワークス取締役
2009年4月
バンダイネットワークスと(株)バンダイナムコゲームスの合併に伴い、バンダイナムコゲームス入社 執行役員NE事業本部 副本部長
2011年4月
バンダイナムコゲームス 上席執行役員 第二事業本部長

バンダイナムコグループのソーシャルゲーム事業や、オンラインゲーム事業などのネットワークコンテンツビジネスが、グループにおけるIP(キャラクターなどの知的財産)の新たな出口として好調に推移しています。今回は、グループのネットワーク事業の現状と今後の戦略について、(株)バンダイナムコゲームスの浅沼誠上席執行役員に聞きました。

ネットワークコンテンツビジネスの状況を教えてください。

浅沼:ネットワークコンテンツビジネスというと、以前は携帯電話コンテンツが中心でしたが、PC向けオンラインゲームに加え、近年SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)向けのソーシャルゲームが急速に普及するなど、ビジネスの幅が大きく広がっています。それに加え、ゲーム専用機もネットワークでつながることで、従来は完全に別のものだったゲームとネットワークが切り離せない関係となっています。

バンダイナムゲームスではIP軸組織を採用していますね。

浅沼:端末の性能が向上しゲームとネットワークの融合が進んできたことで、従来のように家庭用ゲーム、業務用ゲーム機、ネットワークコンテンツといった出口別の縦割り組織が意味をなさなくなってきました。2010年度にIPを軸とした体制に移行したことで、IPの価値を最大化するために最適な出口とタイミングは何か、ユーザーは何を求めているのか、という視点で商品・サービスの戦略を立て、スピーディに動くことができるようになりました。ソーシャルゲーム市場にいち早く参入することができたのも、このIP軸組織の効果だと思います。

ソーシャルゲームが好調です。

浅沼:2010年末に「ガンダムロワイヤル」で本格的にソーシャルゲーム市場に参入しました。ガンダムシリーズやワンピース、アイドルマスターなどタイトルラインナップを増やし、2012年10月末時点の登録会員数は約2,850万人を超えました。ここ数年で市場が急成長した要因は、携帯電話などの端末で、いつでも手軽にゲームを楽しむことができるという敷居の低さにあると思います。よく家庭用ゲームのユーザーがソーシャルゲームに移行したと言われますが、私はそうは思いません。バンダイナムコゲームスの家庭用ゲームタイトルもヒットしています。ゲームを手軽に楽しみたいという新たなユーザー層がプラスオンされ、ゲームユーザーの層が広がっているのだと思います。ソーシャルゲーム市場は、今後も端末の進化やユーザー嗜好の変化に伴い、さまざまに形を変えながら、1つの遊びとして支持され続けるのではないでしょうか。

ガンダムロワイヤル

ソーシャルゲーム 「ガンダムロワイヤル」
©創通・サンライズ ©創通・サンライズ・MBS

バンダイナムコグループならではの強みは何ですか?

浅沼:1つは、バンダイナムコグループが活用できるIPが持つ魅力です。さらに、それに家庭用ゲームや業務用ゲーム機の開発で蓄積したノウハウが融合し、ソーシャルゲームというプラットフォームでIPのファンに支持されるコンテンツの提供と運営ができてきているということだと思います。バンダイナムコグループのIP軸戦略が、ソーシャルゲームでも力を発揮しています。
また、事業分野を超えて横断展開ができるのも、幅広い分野でビジネスを手がけるバンダイナムコグループならではの強みです。例えば、家庭用ゲームやプラモデルの特典に、ソーシャルゲームで使えるシリアルナンバーを同梱したり、バンダイの玩具菓子から生まれたIP「神羅万象」をPC向けオンラインゲームで連動させるなど、SBUをまたいだ展開も積極的に拡大しています。

ワンピースグランドコレクション

ソーシャルゲーム 「ワンピースグランドコレクション」
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション ©NBGI

仮面ライダーウォーズ

ソーシャルゲーム 「仮面ライダーウォーズ」
©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映ビデオ・東映 ©2011 NBGI

今後の新作を教えてください。

浅沼:2011年10月に(株)ディー・エヌ・エーとの共同出資で設立した(株)BNDeNAが開発した第2弾タイトル「ガンダムキングダム」の配信が今冬から始まります。我々が持っていなかったソーシャルゲームのノウハウを吸収しながら、スマートフォンの高機能性に合った本格的なゲームを開発しており、ビジュアル面の進化にも注目していただきたいですね。そのほか、さまざまな有力IPタイトルを導入予定です。

各プラットフォームでファンの期待に応える最適なゲームコンテンツを提供していく

オンラインゲーム事業の進展は?

浅沼:2009年に(株)バンダイナムコオンラインを設立し、それまでばらばらだったオンラインゲームのリソースを1社に集約しました。PC向けオンラインゲームは比較的市場が安定しており、家庭用ゲームや業務用ゲーム機と並ぶ事業に育てようと注力しています。今冬には、バンダイナムコオンラインが開発している最大104人が同時対戦可能なアクションゲーム「機動戦士ガンダムオンライン」が、サービス開始予定で、大変期待しています。

家庭用ゲームでも運営型のビジネスモデルに挑戦していますね。

浅沼:今年の6月にサービスを開始したPS3向け無料オンラインゲーム「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」が、予想を超えるヒットとなっています。家庭用据え置き機専用で、基本無料のオンラインゲームは業界初の試みで、まだまだゲームの可能性にはいろいろなものがあると気づかされました。課金の方法も、これまで主流だったアイテム課金の割合を減らし、1日のプレイ回数に上限を設けて、それを超えてプレイする場合に課金するなど、新しい方法を取り入れており、これが人気の要因の1つとなっています。このほかにも、パッケージソフト販売後にネットワークを活用し継続的にアイテム販売などを行うことで、ソフト売り切り型から、運営型のタイトルが増えるなど、ネットワークとゲームの融合による取組みが広がっています。

機動戦士ガンダム バトルオペレーション

PS3オンライン専用ゲーム 「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」
©創通・サンライズ

プラットフォーム戦略について教えてください。

浅沼:NTTドコモさんが新設した「dゲーム」に、「英雄スピリッツ」など3タイトルの配信を開始します。有力なプラットフォームの1つとして、今後も積極的にオリジナルゲームの開発を進めていく予定です。我々はコンテンツホルダーですから、コンテンツのファンが活用している安心・安全なプラットフォームには、プラットフォーマーさんと連携しながら、きちんとコンテンツを提供していくことが基本的な姿勢です。そしてファンの方々に、プラットフォームに合った面白いゲームを提供し、少しでも期待を上回る喜びを感じてもらうことが重要だと考えています。

ネットワークコンテンツビジネスの今後の戦略は?

浅沼:ゲームとネットワークの組み合わせは、これからもっと発展・成熟していくと思います。その時に、ただゲームとネットワークを組み合わせるのではなく、どのIPで、どんな遊びを提供したら、ユーザーが面白いと感じてくれるかを考え、実際に開発していくのが我々の最大のミッションです。ゲームとネットワークの融合によって、ユーザーの期待の半歩先、一歩先を行くような、新しいコンテンツやビジネスモデルをバンダイナムコ発で開発・創出したいと思います。また、バンダイナムコグループが活用できるIPには、海外でも人気のタイトルがたくさんあります。プラットフォーマーさんと一緒に検討しながら、海外展開についても積極的に進めていきたいですね。

※このインタビューは、2012年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。