キーパーソンインタビュー

国内は定番と新規IPでターゲット層を拡大
欧米はブランドマネジメントを強化し
利益回復

(株)バンダイ 代表取締役副社長 田口 三昭

(株)バンダイ
代表取締役副社長 田口 三昭

1982年4月
(株)バンダイ入社
1999年4月
バンダイ(株) ベンダー事業部長
2004年6月
(株)バンダイ取締役 ライフスタイルグループリーダー 兼 ライフスタイルカンパニープレジデント 兼 インキュベーションセンター長
2006年4月
(株)バンダイ常務取締役 新規事業政策担当
2009年4月
(株)バンダイ専務取締役 メディア政策 新規事業政策担当
2010年4月
(株)バンダイ取締役副社長 メディア政策 新規事業政策担当
2012年4月
(株)バンダイ代表取締役副社長 グローバルメディア政策、人事政策担当
2013年4月
(株)バンダイ代表取締役副社長 人事政策、Real B voice プロジェクト、人事部担当(現職)

中期ビジョンである「真のグローバル化」の達成に向けて、トイホビー事業がさまざまなIP※を生かした商品や施策を打ち出しています。今回は、トイホビー事業の動向と海外展開の現状、今後の展望などについて、(株)バンダイの田口三昭代表取締役副社長に話を聞きました。

※IP:知的財産

国内玩具市場の現状について教えてください。

田口:2013年に入ってからの半年間は、玩具業界全体は、前年同期と比べて90%前後で推移しました。バンダイも、スーパー戦隊シリーズや「アイカツ!」といった好調なIPはありましたが、玩具全体では90%前後となりました。 しかし、直近では、夏休みを迎え、各IPで好調な動きが出てきています。例えば、「ドキドキ!プリキュア」は、新キャラクターが登場したことでアニメの展開に大きな変化が生まれ、それが商品の売上にも結びついており、夏休み商戦ではバンダイは前年同期を上回る業績となりました。

キョウリュウジャー

今年夏の新規IPに対する反応はどうですか?

田口:7月より新番組「ウルトラマンギンガ」がスタートした「ウルトラマン」シリーズは、男児低年齢層に支持されています。ヒーローや怪獣のソフビ人形と連動する中心商材「DX ギンガスパーク」の出足も好調ですし、今秋から稼働予定のデータカードダス「大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア」は最大4人までの複数対戦ができる新筐体ですから、今後の人気拡大を期待しています。
また、ウォルト・ディズニー・ジャパンから初めてトイカテゴリーのマスターライセンスを取得した「モンスターズ・ユニバーシティ」も好調です。

10月から強力な新番組が放映されますね。

田口:10月より「機動戦士ガンダム」シリーズの最新作「ガンダムビルドファイターズ」の放映が始まります。オールガンダムをコンセプトに、ガンプラバトルが物語の中心となる、これまでのシリーズとは一線を画する内容となっています。30年以上の歴史を持つ「ガンダム」シリーズは、それぞれの世代に各作品のファン層がいますから、そうした幅広いファンが共通して楽しめる作品として、確かな可能性を感じていますし、新たなプラモデルユーザーの開拓も期待しています。ガンダムはアジアを中心に海外でも人気がありますので、日本とほぼ同時に商品展開を行う予定です。海外でのファン層拡大、プラモデル市場の拡大を目指して力を入れていきます。
また、同じく10月に放映開始となる「仮面ライダー鎧武/ガイム」は、鎧とフルーツをモチーフにするとともに、「錠前」をキーアイテムとした作品です。仮面ライダーのモチーフが鎧とフルーツというのは斬新ですが、皆さんの予測の一歩先をいくチャレンジ精神が、40年以上シリーズが続いている理由だと思います。また、積極的に新しいことに挑戦する姿勢を、東映さんというパートナーと共有できていることが、我々の大きな武器であり、財産だと思っています。

女児向けのトイホビー事業についてはどうですか?

田口:女児向けでは、2012年度より新たに投入した「アイカツ!」がスタート直後から予想を上回る人気となり、ファッショナブルなIPとして「プリキュア」や「たまごっち」とは別の位置づけを獲得しました。「たまごっち」から派生した「くちぱっち」のファンシー雑貨も加えて、女児向けのターゲット別のポートフォリオがバランスよく構成できています。
「アイカツ!」は、データカードダス発のIPですから、データカードダスの最大手としての経験が成功の要因の1つといえますが、同時に筐体をはじめ、TV、雑誌、ナムコの施設など、立体的なメディアミックスを取り入れたことも大きかったと思います。TVの第2シーズンの放映も決定し、「アイカツ!」発の服飾ブランド設立も検討しています。

アイカツ!

そのほかの国内事業の動きについて教えてください。

田口:国内では、カプコンさんとパートナーシップを結んで、これまで開拓しきれていなかった小学生男児向けに「ガイストクラッシャー」を展開します。他社と提携して新しい価値創造を目指す、我々としても新しいチャレンジです。
また、「クレアボーテ」のブランド名で展開する若い女性向け化粧品が好評です。「ベルサイユのばら」のアイライナーは、口コミサイトで3年連続して大賞を受賞していますし、今年の夏にeコマースで受注を開始した「美少女戦士セーラームーン」のパウダーも、予想以上の受注状況でした。これまでバンダイは大人の女性層との接点が少なかったのですが、今後が楽しみです。

欧米の収益回復の進捗状況は?

田口:収益回復が急務となっている欧米では、2013年度より日本のボーイズトイの担当取締役と開発責任者を共に現地に派遣し、欧米一体のブランドマネジメントを強化しています。直近では、「Power(パワー) Rangers(レンジャー)」の北米での売上が高水準を維持しており、今後は欧州でも復活させるため、好調な「Power Rangers」にリソースを集中し、放送網の確保、商品のローカライズ、ロープライス商品のラインナップ拡充などを進めています。
また、IP強化という意味では、6月に放映が始まった「パックマン」や2014年放映予定の「デジモン」のほか、まだお話しはできませんが、有力IP獲得を進めています。中期計画期間中に黒字化を達成し、次の成長へ向けた準備を整えたいと思います。

イベント

今後の抱負を聞かせてください。

田口:当社は中期ビジョンで「真のグローバル化」を掲げており、人材育成でもその点を強化しています。今後もグローバルで活躍できる人材の育成を目的に、グローバル採用の継続、国内と海外拠点間の人事交流の活性化、英語学習プログラム強化、海外勤務をスムーズにするための「トレーニー制度」などを導入し、連続性のあるプログラムの運用を始めました。国内でしっかりと実績を上げながら、世界に「夢・遊び・感動」を提供していきたいと思います。

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※このインタビューは、2013年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。