キーパーソンインタビュー

時代の変化にスピーディに対応するためには出口軸ではなくIP軸で考える必要がある

(株)バンダイナムコゲームス 常務取締役 萩原 仁

(株)バンダイナムコゲームス
常務取締役 萩原 仁

1978年4月
(株)ナムコ入社
2002年5月
AMカンパニー AM生産グループ グループリーダー
2005年4月
執行役員 AMカンパニー AM編成局長
2006年4月
(株)バンダイナムコゲームスへ転籍
執行役員 AMカンパニー バイスプレジデント 兼 AM編成局長
2007年1月
ナムコ・アメリカ INC.、ナムコ・ヨーロッパ LTD.取締役(非常勤)兼務
2009年4月
上席執行役員AM事業本部長 兼 AMプロモーション部ゼネラルマネージャー
2010年4月
上席執行役員AM営業本部 本部長
2011年4月
取締役 アミューズメント営業本部 担当 兼 本部長
2012年4月
取締役 第1事業本部・アミューズメント事業統括本部担当 兼 アミューズメント事業統括本部長
2013年4月
常務取締役 事業統括担当 アミューズメント事業統括本部長(現職)

コンテンツ業界が激しい環境変化にさらされる中、(株)バンダイナムコゲームスの商品・サービスが各カテゴリーで好調を維持しています。今回は各事業の動向と今後の期待商品などについて、バンダイナムコゲームスの萩原仁常務取締役に話を聞きました。

家庭用ゲームソフト市場が縮小しています。

萩原:過去に家庭用ゲーム機が登場した時には、業務用ゲーム機がなくなるなどと言われましたが、決してそのようなことはありませんでした。ソーシャルゲームやスマートフォン向けアプリの普及などで従来のパッケージ市場が縮小していると言われますが、バンダイナムコゲームスのゲームソフト事業は、新作のヒットに加え、過去に発売したタイトルのリピート販売好調が続くなど、順調に推移しています。
短時間で楽しむことができるネットワークゲームが人気となる一方で、ゲームはパッケージを買ってプレイしたいというユーザーが大勢いることも事実です。その方々に、毎年毎年、新鮮さを感じていただける商品・サービスを提供し続けていく。それが、当社のゲームソフトが今でも支持を受けている理由ではないかと思います。

ネットワークとゲームソフトの融合をどのように考えていますか?

萩原:今年6月に、PS3オンライン専用タイトル「鉄拳レボリューション」をF2P(Free-to-Play)の基本プレイ料金無料、一部アイテム課金制で全世界に配信し、200万人以上の鉄拳ファンがダウンロードしプレイしています。ただ、課題もいくつか発見されています。2013年度中には「エースコンバット インフィニティ」と「ソウルキャリバー ロストソーズ」のF2P配信を予定してします。まだ試行錯誤の部分もありますが、鉄拳を出したからこそ確認できたノウハウを活かすとともに、事前テストをしっかりやることでユーザーのニーズを吸い上げていきたいと思います。これらのタイトルを通して、今後のF2P展開戦略についても検討していきます。

エースコンバット
エースコンバット

「IP軸戦略」が各出口で効果を発揮していますね。

萩原:社内で確実に「IP軸戦略」の考え方が浸透し、各カテゴリーで成果を発揮しています。私は、これからの時代はあまりIPの出口だけにこだわらない方がよいと思います。出口軸の考え方は我々メーカー側の都合であって、ユーザーは楽しむことができればよく、すべてユーザーにお届けするツールなんです。スピードという面でも、出口軸だけで戦略を考えてしまうと時代の変化に臨機応変に対応できません。大事なのは出口という軸で考えるのではなく、IP軸で考えるということです。当たり前のことですが、ユーザーが常にどの出口とコンタクトしているか、IPの魅力を最も効果的に活かすことができるのはどの出口なのかなど、ユーザーの視点で見定めてIPを提供していきます。

家庭用ゲームソフトの期待商品は?

萩原:今後も有力タイトルを続々と投入しますが、中でも国内向けの注目タイトルは、オリジナルIPでもある「GOD EATER2」ですね。このほかにも、ディズニーのキャラクターフィギュアと一緒に遊ぶことができる「ディズニー インフィニティ」や、人気シリーズの「真・ガンダム無双」などを発売します。また、前作がワールドワイドで150万本以上販売するヒットとなった「ダークソウル」の新作にも期待しています。

真・ガンダム無双

業務用ゲーム機はどうですか?

萩原:業務用ゲーム機は2つの戦略で考えています。1つは今まで支持してくれたお客さまを飽きさせないための商品開発。もう1つは新しいお客さまを誘導する魅力的な商品の開発です。
国内のアミューズメント施設は新規ユーザーの取り込みが課題です。2012年に投入したエアホッケーゲーム機「ビッグバンスマッシュ(パックマンスマッシュ)」や、この年末投入のドームスクリーンを使った臨場感のあるシューティングゲーム「マッハストーム」なども、そのために開発しました。こうしたゲーム機を絶えず提供していくことで、新規ユーザーにも楽しんでいただき、業務用の広がりを見せていきたいと思います。
一方、既存のお客さまに向けては、「機動戦士ガンダム EXTREME VS. MAXI BOOST(エクストリーム バーサス マキシ ブースト)」や「湾岸ミッドナイト マキシマムチューン5」などの新作を投入します。常に鮮度あるものをしっかりと供給することで、コアファンの要望にもきちんと応えていきたいと思っています。

湾岸ミッドナイト マキシマムチューン5

業務用ゲーム機の海外展開について教えてください。

萩原:海外へボーダレスで展開するというのが我々の戦略です。アジアは日本と親和性があり、よい形で進んでいますが、課題は欧米です。文化もユーザーの嗜好も違いますので、日本のものをそのまま持って行っても通用しません。例えばドライブゲームは、日本向けのものは日本とアジアでは人気ですが、欧米はそこまでではありません。そこで我々は徹底的に市場を研究し、欧米でのドライブゲームは、簡単そうで爽快感があるものが求められているということに気がつきました。市場をよく理解し、市場に合ったものを投入していく必要があるのです。また、特に中東など多くの新興国では、大型ショッピングモールが続々と作られています。そこは日常の生活スペースともなっています。その中で楽しみたいという想いは万国共通ですので、こういった場所で現地のお客さまとの接点を活かした展開に力を入れています。

ネットワークコンテンツの状況は?

萩原:我々を取り巻く環境の中でも最も変化が早いのがこの市場です。足元では、IPを軸とした展開と、これまでに蓄積した運営ノウハウを活かすことで、ソーシャルゲームやオンラインゲームなどのネットワークコンテンツは現状安定的に推移しています。今後もネットワークはますますいろいろなデバイスでつながれていくでしょうし、ネットワークを介したゲームは伸びていくと思います。ただ、ネットワーク環境は変化が激しく、何よりもスピードが求められます。幸いなことに我々には活用できる有力IPが豊富にあり、IPの世界観を活かしたコンテンツ開発ノウハウという強みがあります。それが安定している要因と言えますが、今後、我々はこのネットワーク環境の中でユーザーが今どこにいて、どこと接点があるかということを常にウオッチし、その接点にコンテンツを置いていくことを考えていかなければなりません。
ネットワークコンテンツの海外展開についてはまだ検証段階ですが、我々が国内で獲得した経験を踏まえて、今後はアジアでもネットワークコンテンツを展開していくつもりです。

今後の意気込みを。

萩原:やはり各事業で海外を伸ばしていきたいですね。しかし、海外は市場も違うし、文化も制度も違う。それは現地に行って、自分の目で、耳で確かめないとわかりません。そのためにも、社員にはできるだけ海外での経験を積ませるようにしています。彼らには、「海外も国内も1つのフィールドにすぎないし、構えて行くところではない。たまたまパスポートが要るだけだよ」と言っています(笑)。

©創通・サンライズ
All trademarks and copyrights associated with the manufacturers, aircraft, models, trade names, brands and visual images depicted in this game are the property of their respective owners, and used with such permissions. ©JAPAN SPACE IMAGING CORPORATION ©DigitalGlobe, Inc., All Rights Reserved. ACE COMBAT® INFINITY & ©2013 Bandai Namco Games Inc.

©Michiharu Kusunoki/Kodansha Ltd.All rights reserved.
©2013 Bandai Namco Games Inc.
All trademarks and copyrights associated with the manufacturers,vehicle,models,trade names,brands and visual images depicted in this games are the property of their respective owners,and used with such permission.

※このインタビューは、2013年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。