キーパーソンインタビュー
ガンダム35周年プロジェクトがスタート
40周年に向けた新たな取り組みを実施

(株)サンライズ
代表取締役社長 宮河 恭夫
- 1981年4月
- (株)バンダイ入社
- 1996年1月
- (株)バンダイ・デジタル・エンタテインメント 取締役
- 2000年4月
- (株)サンライズ 入社
- ネットワーク開発部長
- 2004年4月
- 取締役
- 2008年4月
- 常務取締役
- 2011年4月
- 専務取締役
- 2013年4月
- 取締役副社長
- 2014年4月
- 代表取締役社長に就任
2014年4月、アニメーション映像作品の企画・制作を手がけるサンライズの新社長に宮河恭夫が就任しました。
今回は、サンライズの特徴と強み、ガンダム35周年プロジェクトの内容、オリジナル・スターIP事務所の進捗状況、そして新社長としての抱負を宮河社長に聞きました。
サンライズの強みは何ですか?
宮河:当社はアニメーションの制作会社ですが、他社との大きな違いは作品の約7割が自分たちで企画制作したオリジナルだということです。これを可能にしている理由の1つは、『機動戦士ガンダム』という大きな成功体験があったからだと思います。自分たちの作品が35年も続き、人気を維持しているという自信が我々の原動力になっています。それがDNAとして受け継がれ、サンライズの一番の強みとなり、原作がある作品の映像制作にも生きています。
ガンダムの成功が大きいと?
宮河:ガンダムは何がすごいかと言うと、35年前のガンダムと今やってるガンダムが違うということなのです。そんなタイトルは他にありません。タイトルも、主人公も、世界観もさまざまです。ガンダムというシリーズは続いていますが、一作一作が全部違うんですね。もちろん、基本的な法則はあって、ガンダムというモビルスーツが登場すること、舞台が戦争状態にあること、そして青春群像劇であるということを守りながら、ガンダムを自由に作ってきたのです。それが、ガンダムが長く続いてきた大きな要因だと思います。
バンダイナムコグループならではの特徴については?
宮河:サンライズは映像の会社ですが、バンダイナムコグループ各社のおかげで玩具やゲームなどの周辺商品にマーチャンダイジングできます。これはものすごく大きな特徴でしょうね。ガンダムもそうですし、「TIGER & BUNNY」も「アイカツ!」も、「ラブライブ!」もそうです。商品・サービスがあることが作品の世界観を広げています。
「アイカツ!」が元気です。
宮河:当社は男性や男児向け作品というイメージが強かったのですが、最近は女児向けのIPも育ち、作品の幅が広がっています。「アイカツ!」が成功したのは、時代のニーズとマッチしたからではないかと思いますね。AKB48の影響もあり、アイドルになりたいという女児が増えています。お母さんも自分の子どもがアイドルに憧れることを理解しています。それが「アイカツ!」と合致したのでしょう。現在、「ラブライブ!」は男性向け、「アイカツ!」は女児向けという棲み分けをしており、絵柄も世界観も違えています。

©SUNRISE/BANDAI,DENTSU,TV TOKYO
アジアでガンダムの無料配信を行っていますが、この目的は?
宮河:私はバンダイ時代にプラモデルの営業や女児玩具の開発などを担当し、その後、インターネット端末「ピピンアットマーク」に携わりました。この事業は結果的には失敗に終わりましたが、このときの経験がネットワークへの理解を深め、今でもネットに対しては積極的です。作品を無料配信しているのは、とにかく映像を観て、触れてもらおうということです。それで面白いと思ってもらえれば、商品を買ってもらうなどグループのビジネスにつながります。これは映像以外にもさまざまな出口を持つバンダイナムコグループの会社だからこそ、それができるんです。グループがどんどん海外に出ていくためには、こうした手法も必要だと思いますね。
「ガンダム35周年プロジェクト」がスタートしました。
宮河:35周年は、次の40周年に向けた始まりだと思っており、懐古趣味みたいなことをやる気はありません。そういう想いもあって、コンセプトを「RISE! —世界は動いている」としました。
映像作品については、UC(ユニコーン)のシリーズ最終章『機動戦士ガンダムUC episode 7 「虹の彼方に」』を5月にイベント上映したほか、富野由悠季監督の新作『ガンダム Gのレコンギスタ』、そしてシャアとセイラの少年少女時代を描いた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』と、第1作『機動戦士ガンダム』にリスペクトした作品を3本立て続けに展開します。

©創通・サンライズ
そのほかにはどんな企画を展開する予定ですか?
宮河:記念展覧会「機動戦士ガンダム展」を2014年7月 ‐ 8月に大阪で、来年は東京で開催します。このガンダム展では、当社が制作した新作映像を体験型シアターで上映するほか、原画や資料など約1,000点を展示する予定です。
また、30周年のときに実物大ガンダム立像を作り、大きな話題になりましたが、これに続くプロジェクトを40周年に向けてスタートします。詳細はまだお話しできないのですが、グローバルなプロジェクトになる予定ですので、ご期待ください。

©創通・サンライズ
このほどスタートしたオリジナル・スターIP事務所の手応えは?
宮河:この企画は私が事務局長をしていますが、バンダイナムコグループには、将来ダイヤモンドになるかもしれない原石を持っている人がたくさんいます。そこでグループ内で新たなIP企画を公募し、ビジネス展開の可能性がある企画についてはパイロット映像を作るなど、オリジナル作品の発掘・育成を目指した取り組みとなっています。 先日、第1回の公募を締め切ったところ、国内外から150件以上の応募がありました。すでに第2次審査が行われており、この中から新たなIPが生まれることを願っています。
5年後、10年後のサンライズについてどのようなイメージを?
宮河:サンライズは今より大きくなっているかもしれませんが、私は売上が2倍になるのなら、会社が2つあった方がいいと思っています。制作会社は規模がものを言う世界ではないんですね。売上高を競う業種じゃないし、作品を何本作ったなどとシェアを争うビジネスでもありません。ですから、組織がいくつかの塊にわかれているというのが私の理想です。そこで若い人たちが責任を持って、自主独立で思う存分力を発揮するのが一番いいと思います。
これは社員にも言っているのですが、「今度の映画はどこそこの会社が作ったものだから観に行こう」という人は1人もいません。やはり監督やタイトルが重要で、どこの映像制作会社が作っているかなどということは誰も興味がないわけです。ですから、サンライズというブランドや看板が必要かというと、実はそれほど重要ではなくて、それよりもタイトル、中身が一番重要なんですね。
新社長としての抱負を聞かせてください。
宮河:私は、サンライズの社員は変化に対応するのではなく、変える側に回ってほしいと思っています。自分たちが新しいことを1年に1つでもやれば、サンライズの社員の数だけ新しいチャレンジができます。世の中が変わっていくことにどう対応するかではなく、世の中を変えるために何をやるのか。要するに変えることの楽しさ、変えていこうとする気概を全社員に持ってもらいたいのです。
私も、やはり世の中を変えていきたいと思っていますし、それを社員のみんなが思ってくれれば、世の中を変えていく新しいことが生まれるような気がします。これからもサンライズにご期待ください。
※このインタビューは、2014年6月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。