キーパーソンインタビュー

アニソンを軸とした音楽やライブ・イベント事業を展開
15周年を機にさらなる飛躍を目指す

(株)ランティス 代表取締役社長 井上 俊次

(株)ランティス
代表取締役社長 井上 俊次

1977年
ロックバンド「LAZY」のメンバーとしてデビュー
1999年11月
(株)ランティス設立 代表取締役社長就任
2010年4月
(株)バンダイナムコライブクリエイティブ代表取締役社長兼務

バンダイナムコグループで、アニメ・ゲーム・声優アーティストを中心とする音楽事業を展開している(株)ランティスが、アニソン(アニメソング)人気や、「ランティス祭り」に代表されるライブの人気などもあり、順調に事業を拡大しています。今回は、元ミュージシャンでもある(株)ランティスの井上俊次社長に、音楽事業の状況と今後の取り組みなどについて聞きました。

ランティス設立のきっかけは?

井上:以前所属していた音楽会社が活動を停止することになり、そこにいたメンバー4人で1999年に新しく立ち上げたのがランティスです。当時はまだ、アニソンというと懐メロっぽいものというイメージがあったのですが、今の時代に合ったアニソンを作っていきたいと会社を興したのです。

元々はミュージシャンでしたね。

井上:私は、影山ヒロノブ君(『JAM Project』のリーダーで『ドラゴンボールZ』『聖闘士星矢』などの主題歌を担当)と高校の同級生で、彼らと「LAZY(レイジー)」というアマチュアのロックバントを結成し、キーボードを担当していました。あるときテレビ局のオーディションに合格し、テレビ出演することになったのです。その時の司会のかまやつひろしさんから「プロデビューしないか」とお誘いをいただき、上京しました。こうして1977年にプロデビューしたのですが、4年後に解散し、その後は「ネバーランド」というバンドで10年くらい活動していました。 そんなときに出会ったのがアニソンだったのです。それからアニソンの作曲や編曲の仕事をするようになり、音楽プロデュースに専念するようになりました。ですからアニソンは私の恩人であり、ランティスを設立したときも、アニメやゲームに特化した音楽事業を行う会社にしようと決めていました。

JAM Project

ランティスにとっての転機は?

井上:2006年にバンダイビジュアルと資本関係を結び、バンダイナムコグループに入ったことですね。社員は15人ほどで、レコード会社としては非常に小規模だったと思います。それでもアニメ音楽業界の先を見据え、どのように会社を伸ばしていくべきかと考えているときでした。今では、社員が50人を超え、所属するアーティストも約70組に達し、映像やゲームなどを手がけているグループの会社とタッグを組んでさまざまな音楽ビジネスを展開できるようになりました。アニソンや声優アーティストの作品は、ここ10年ぐらいでヒットチャートにも頻繁に登場するようになり、その存在感は急速に高まっています。これからもグループの事業と良い形で連携しながら、ランティスの存在感を高めていきたいと思っています。

海外でもライブを開催しています。

井上:2003年からブラジルで「Anime Friends(アニメフレンズ)」というアニソンを中心としたライブイベントを開催しており、何万人も集まるイベントに成長しています。私も影山君などをメンバーとするランティスのボーカルユニット「JAM Project」と一緒にブラジルに行きましたが、ファンの熱気に驚かされました。このほか、アジアでもアニソンファンが多いことから、日本で普通にライブを開くような感覚で定期的に開催しています。日本のバンドやスタッフを連れ、サイン会や握手会も日本と同じように行うことで、もっと日本のアニソンファンを海外でも増やしていきたいと思います。

(株)バンダイナムコライブクリエイティブの社長も兼務していますね。

井上:ランティスでは年間200本くらいのライブ・イベントを開催していますが、サンライズでもガンダムなどのIPのライブを行うなど、グループ各社でもさまざまなライブ・イベントを開催しています。そこで、我々のライブ・イベントのクオリティを上げるために、演出はもちろんのこと、舞台や照明、音響なども納得いくように、自分たちでコントロールできる会社を作ろうと、2010年4月にバンダイナムコライブクリエイティブを設立しました。2013年度は、『ラブライブ!』『アイドルマスター』のコンサートなど、年間400近いライブ・イベントを実施しました。

ラブライブ画像

© 2013プロジェクトラブライブ!

「ランティス祭り2014」が始まっていますね。

井上:設立15周年を記念して、7月から11月に東海・関西・関東・東北の4都市で9公演を行っています。今回のテーマは「 ‐ つなぐぜ!アニソンの“わ”! ‐ 」で、「JAM Project」や、『黒子のバスケ』のオープニング主題歌などを担当したロックユニット「GRANRODEO」、実力派声優アーティスト「茅原実里」、『ガンダムビルドファイターズ』のエンディング主題歌を担当した「ヒャダイン」など、当社の全アーティストが参加します。また、2015年には、シンガポール、台北、ソウル、香港、ラスベガス、さらに1都市を追加した海外6都市での公演の開催が決定しています。運営にあたっては、ステージの裏方から物販まで社員総出で行っており、これが社員が団結するきっかけにもなっています。

ランティス祭り

バンダイナムコグループのIP軸戦略におけるランティスとライブクリエイティブの役割は?

井上:音楽そしてライブも、IP軸戦略の重要な出口の1つです。9月にはグループの人気アニメ作品が集結するイベント「BANDAI NAMCO ANIME CAMP2014」をバンダイビジュアル、サンライズ、ランティス、バンダイナムコライブクリエイティブのグループ4社で協力し開催します。ライブは、リアルな場で観客が一緒にIPを楽しむという新しい出口と言えます。当社は、『アイカツ!』『ラブライブ!』『アイドルマスター』などの音楽も手がけていますし、声優ユニット「スフィア」のプロデュースなどもさせていただいています。このうち、例えば『ラブライブ!』という作品は、今、大変ブレイクしていますけど、実は5年ほど前からサンライズなどと一緒に音楽イベントなどを実施し、IPとして育ててきました。つまり1つのIPを育てるには、やはり時間がかかるんですね。IPの開発、アーティストの発掘育成も我々の役割ではないかと思っています。

違法なコピーが増えています。

井上:今や音楽を無料で聴こうと思えば、いろんな手段を使って聴くことができます。それでも定価できちんと買っていただけるお客さまがいるということは、「ちゃんとお金を出して買うから、これからも良い音楽を作ってくださいね」というファンからのメッセージだと思うのです。それをまず我々が感じて真摯に音楽を作っていく、アーティストを育てていくということが大切なことだと思います。

今後の取り組みについては?

井上:これからは、ゲームの挿入歌を聴いて音楽が好きになったり、アニメのBGMを聴いてオーケストラが好きになったなど、いろんなところから音楽に興味を持つお客さまが増えてくると思います。そのためにも、素晴らしい音楽やライブを提供し続けていくというのがランティスとライブクリエイティブの使命だと考えています。ですから、そこで演じるアーティストを育て、皆さんが感動していだたけるようなより良い楽曲を作っていくことに尽きると思いますね。 アニソンの知名度も少しずつ広がってきましたが、それと同時に、アニソンには別な役割もあると思います。例えば「弱い者いじめはしない」とか、「勇気を持って立ち向かおう」とか、そういうことは学校で教えてもらうよりも、音楽、特にアニソンを通じて感じる方が心に残るのですね。楽曲を通じてそういうメッセージを世の中に浸透させていくということも、我々の一つのテーマだと思っています。

※このインタビューは、2014年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。