キーパーソンインタビュー

アジア地域での商品展開が好調に推移
世界に通用する新規IPの獲得を目指す

株式会社バンダイ 代表取締役社長 川口 勝

株式会社バンダイ
代表取締役社長 川口 勝

1960年11月2日生まれ
1983年4月
㈱バンダイ入社
1994年4月
福岡営業所 所長
2002年4月
執行役員
ベンダー事業部ゼネラルマネージャー
2006年4月
取締役  流通政策担当
2010年4月
常務取締役
ホビー事業政策  品質保証政策担当
2015年4月
専務取締役  トイ事業政策  品質保証政策担当
2015年8月
代表取締役社長

㈱バンダイは、8月5日に社長交代を行い、新しい代表取締役社長に川口勝(前・専務取締役)が就任しました。今回は川口社長に、トイホビー事業の国内および海外における取り組みと、中期計画の進捗状況、さらに年末年始商戦に向けた期待や今後の抱負などを語ってもらいました。

社長に指名されたときはどのような気持ちでしたか?

川口:今年4月に専務取締役に就任したばかりでしたので、社長任命の話を聞いたときはまさに青天の霹靂でした。就任し、改めて責任の重さを痛感していますが、社員と一緒に、これからさらにアグレッシブな会社にしていきたいと思っています。

バンダイではどのような仕事に携わってきたのですか?

川口:営業やマーケティングを中心に、バンダイのほとんどの事業に携わってきました。その中でもゼネラルマネージャーとしてコレクターズ事業部を立ち上げ、海外市場を意識した取り組みを行ってきたことが、今も印象に残っています。このときの経験は、「日本発アジア一気通貫」という戦略に繋がり、現在トイホビー事業全体でアジア展開の強化に取り組んでいます。

中期計画を進める上で課題は?

川口:国内では、「妖怪ウォッチ」の人気の影響を定番IPが受けたことから、男児・女児向けともに定番IPのさらなる強化が今の一番の課題です。また、海外では、アジア展開のエリアを徐々に拡大し、「日本のバンダイ」から「アジアのバンダイ」へとステップアップしていきたいと思います。中期計画のビジョン「真のグローバル化」を達成するためにも、人材面の強化と海外事業の充実に取り組んでいかなければならないと考えています。

秋から新番組が始まり、新たな強力IPが登場しています。

川口:10月からスタートした新番組「仮面ライダーゴースト」は、主力の変身ベルトなどが好調な売れ行きを見せています。女児向けの新規IP「かみさまみならい ヒミツのここたま」も、「ここたまドール」を中心に売上を伸ばしており、年末年始商戦に向けて期待が持てます。ガンダムシリーズの最新作「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」も好調で、35周年を迎えた「ガンプラ」をはじめ、関連商品が売れています。


年末年始に期待される商品は?

川口:「仮面ライダーゴースト」の変身ベルトや、好調なガンプラが引き続き売上に貢献してくれると思います。また、「かみさまみならい ヒミツのここたま」のカスタマイズできるハウスドール玩具や、家庭用カラオケマイク商材「カラオケランキンパーティ」など、女児玩具も例年以上に期待が持てそうです。そのほか、「スーパー戦隊」シリーズや、「プリキュア」シリーズなどの定番IPもここに来て好調に推移しています。「妖怪ウォッチ」も安定した人気ですので、年末年始も圧倒的NO.1を目指します。


アジア地域の状況は?

川口:「機動戦士ガンダム」シリーズは、映像の無料配信やイベント開催が商品の人気にもつながり、アジアでも高い人気となっています。日本で大ブームを巻き起こした「妖怪ウォッチ」は、先行する韓国・香港・台湾に続けて、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピンなどの東南アジア地域でも順次展開しています。また、「スーパー戦隊」シリーズも好調です。特に韓国を中心に、日本で好評だった「獣電戦隊キョウリュウジャー」の人気が拡大しており、これから放送予定の他のエリアでも期待が持てます。「スーパー戦隊」シリーズは、バンダイにとって大きな柱となる主要IPであり、アジアでも弾みをつけていきたいと思います。


欧米はどうですか?

川口:中期計画のスタートにあわせ、この4月から国内に新たな部署を設け、欧米拠点のIP投資や商品の企画開発を強力にサポートする体制に変えました。これにより欧米は販売マーケティングに専念できる体制となりました。その効果もあって、赤字幅はかなり縮小しています。今は、早期の黒字化と次の成長を目指して、ディズニー映画「Big Hero 6(ビッグ ヒーロー シックス)」(邦題:ベイマックス)のように、ワールドワイドに通用する新規IPの導入を準備しているところです。また、欧米の主力定番IPである「パワーレンジャー」は、今年スタートした「Power Rangers Dino Charge(ダイノ チャージ)」が堅調に推移しています。そのほか、ハイターゲット向け商品も売上を伸ばしており、今後の注目分野として期待しています。

海外戦略に向けた人材育成は?

川口:アジア各国と日本の社員が合同で研修を行う交換育成プログラムを実施しています。日本とアジアの中核である香港で開催し、基本的に英語で行っており、グローバル人材の育成に役立てるとともに、現地の社員との一体感を強めています。海外を含めた社員全員が一丸となって、「オールバンダイ」としての意識を持つきっかけになればと考えています。

バンダイの強みは何でしょうか?

川口:バンダイは未就学児に向けた商品開発を得意としていますが、ハイターゲット層を対象にした大人向け商品についても拡大できる素地を持っている点が強みだと思います。過去のIPをハイターゲット層向けに商品展開するなど、商品化していないIPを展開し、未就学児向けとハイターゲット層を二本の軸としながら、国内から海外へと展開していきたいと考えています。
昨年は「妖怪ウォッチ」が大ブームになったこともあり、昨年と比べると玩具市場は少し落ち込んでいます。その一方で、プラモデル、ハイターゲット向け商品、カプセルトイは、今期も好調に推移しています。多彩なIPラインナップと事業ポートフォリオで補完し合うことができるバンダイの事業分野の幅広さを実感しています。

新社長としての心構えと社員に期待することを教えてください。

川口:上野和典前社長と一緒に作り上げてきた現在の中期計画を推進しながら、徐々に私の個性を出すことができればと思っています。今の執行役員とは年齢が近いこともあり、上司と部下というよりは、よきムードメーカーのような立場でリーダーシップを発揮していきたいです。バンダイには「敗者復活」という社風があります。私自身も過去にはいろいろと失敗しましたが、その経験が今に活かされていることを強く感じています。社員には失敗を怖れず、やりたいことに前向きに取り組んでほしいし、情熱を持ってチャレンジできるような会社にしていきたいと考えています。

ステイクホルダーに メッセージをお願いします。

川口:バンダイの強みは、IP軸、事業軸、ターゲット軸、エリア軸という4つの軸を持つポートフォリオ経営だと考えています。この軸の中で、強い部分はどんどん伸ばし、事業展開の余地があるところは積極的に攻めていくという姿勢を大事にしています。
今後も事業拡大・新規IPの獲得に向けて尽力して参りますので、何卒よろしくお願いいたします。

※このインタビューは、2015年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。