キーパーソンインタビュー

アミューズメント市場における
グループの優位性は高い技術力と
250店舗以上の「場」、そしてIP

株式会社バンダイナムコエンターテインメント 常務取締役 浅沼 誠

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
常務取締役 浅沼 誠

1963年4月
23日生 東京都出身
1986年4月
㈱ネットワーク(88年バンダイと合併)入社
2000年10月
バンダイネットワークス㈱転籍入社
2005年6月
同社取締役事業本部副本部長 兼 コンテンツ事業部長
2009年4月
㈱バンダイナムコゲームスと合併  同社執行役員 NE事業本部副本部長
2010年10月
㈱バンダイナムコオンライン代表取締役社長兼務
2014年4月
㈱バンダイナムコエンターテインメント 取締役  第1事業本部長 兼  ㈱バンダイナムコスタジオ取締役(非常勤、現職) 兼 Bandai Namco Games America Inc.(現・Bandai Namco Entertainment America Inc.)取締役(非常勤) 兼 ㈱アルグラ社外取締役(現職)
2015年4月
同社 常務取締役  グローバル事業推進室・メディア室担当
2016年4月
同社 常務取締役   AM事業部、SP事業担当 兼 チーフパックマンオフィサー
2017年6月
同社 常務取締役  リアルエンターテインメント推進 兼 AM事業部・SPプロジェクト担当(現職)

 

このほど東京・新宿に国内最大級のVR(仮想現実)エンターテインメント施設「VR ZONE SHINJUKU」がオープンし、圧倒的な没入感と新たな驚きを体験したいというお客さまで連日賑わっています。今回は、この施設をプロデュースするなど、バンダイナムコグループのアミューズメント事業を担当する㈱バンダイナムコエンターテインメントの浅沼誠常務取締役に、市場の動向、VRの可能性、そして今後の展開などについて聞きました。

 

現在の担務を教えてください。

浅沼:リアルエンターテインメント推進と、アミューズメント施設に設置する業務用ゲームなどを扱うAM事業部、パチンコ・パチスロ事業のSPプロジェクトを担当しています。リアルエンターテインメントとは、スマートフォン向けゲームアプリケーションや家庭用ゲームといったデジタルを中心としたエンターテインメントに対し、人が実際にその場に行って楽しむロケーションを軸としたエンターテインメントのことで、この分野を広げていくことが、私の役割だと認識しています。

 

このほどオープンした「VR ZONE SHINJUKU」もその1つですか?

浅沼:そうです。この施設は、昨年、東京・台場に期間限定でオープンした施設「VR ZONE Project i Can」で得たVRの知見やノウハウを活かし、新たなVR施設として新宿にオープンしたものです。1,100坪に及ぶスペースで16種類のVRを中心としたアクティビティが体験できる、国内最大級のVR施設となっています。
 アミューズメント市場はここ数年厳しい環境が続いていますが、この状況を打破するには、既存ビジネスの延長線とは異なる思い切った発想の転換が必要です。今回、「VR ZONE SHINJUKU」をプロデュースするに当たっても、今まで見たことがないようなまったく新しいエンターテインメント施設を作りたいと考えました。オープンに向けては試行錯誤の積み重ねでしたが、おかげさまで来場されたお客さまの満足度も高く、想定以上の評価をいただくことができています。今後はさらに知名度を上げ、より多くのお客さまに体験していただければと思っています。

◆VR ZONE SHINJUKU

住  所:東京都新宿区歌舞伎町1-29-1(JR新宿駅東口 徒歩7分/西武新宿駅 徒歩2分)

営業時間:10:00 ~ 22:00(最終入場時間21:00)

営 業 日:年中無休

利用方法:事前予約優先制

料金:入場料800円、こども(6 ~ 12歳)500円、5歳以下無料1Day4チケットセット4,400円(入場チケット+アクティビティチケット4枚のセット)

※VRアクティビティの対象年齢は13歳以上です。

※予約方法等の詳細は公式ホームページ(http://vrzone-pic.com)参照

 

グループ各社の連携は?

浅沼:「VR ZONE SHINJUKU」は、VR機器の企画開発を当社と㈱バンダイナムコスタジオが、施設運営を㈱ナムコが受け持ち、ネットワークエンターテインメントSBUの総力を結集してサービスの提供にあたっています。ほかにも、例えばトイホビーSBUの会社から「物販コーナーでこういった商品が展開できないか」など、グループ内から多くの提案が寄せられています。このように、多彩なノウハウ・アイデア提案力を有している点が当社グループの強みだと思います。厳しい意見も言い合いますが、同じ目標に向かって異なる角度から議論を戦わせられる仲間がいることは心強いですし、自然とよいアイデアも生まれてきます。今後もグループ内の知見を活かし、「VR ZONE SHINJUKU」をますます盛り上げていきたいと思います。

 

VR市場におけるバンダイナムコグループの優位性は何ですか?

浅沼:当社グループには、長年にわたり体感マシンを研究してきたノウハウ、そしてナムコが国内外250店舗以上の「場」で培ってきた運営ノウハウがあります。これらのノウハウとVR技術をかけ合わせることで、バンダイナムコならではのエンターテインメントの提供が可能になっていると思います。そして何よりの強みはIPです。「VR ZONE SHINJUKU」では、「エヴァンゲリオン」や「ドラゴンボール」、「マリオカート」など、さまざまなIPの世界に入り込むことができます。IPを活用したアクティビティを導入することで、VRの内容があらかじめイメージしやすく、体験してみたいというモチベーションのきっかけにつながります。そしてVRを通してお客さまの持つイメージを具現化し期待に応えていくことで、もっとVRを体験してみたいという想いへとつながっていきます。お客さまと我々の想いを強い絆でつないでくれるIPの持つ力の素晴らしさを改めて感じました。

 

VR事業の今後については?

浅沼:「VR ZONE SHINJUKU」をフラッグシップ施設と位置づけてさまざまなチャレンジを行い、そしてそれらのコンテンツで中小規模店の「VR ZONE Portal」を国内外で20店舗以上展開していきたいと考えています。VRは体験してはじめてそのおもしろさが実感できます。お客さまが気軽に体験できるタッチポイントを世界各地に立ち上げることで、VRビジネスの可能性を追求していきたいと思います。

 

新たにゲーミング機器の開発も進めていますね?

浅沼:昨年9月にオーストラリアの大手ゲーミング製品開発会社のアインズワース社と業務提携し、カジノ向けゲーミング機器の共同開発をスタートしています。その第1弾として、このたび「パックマン」を題材にしたスロット機器を開発し、ラスベガスをはじめとした北米地域で稼働を開始しました。「パックマン」の北米における人気は非常に高く、ゲーミング機器についても高い評価をいただいています。ここでもVR同様、IPのもつ強い力を感じます。今後はエリアの拡大とともにIPラインナップの拡充に取り組んでいく予定です。

北米で展開中のゲーミング機器「PAC-MAN VIDEO SLOT WILD EDITION」
PAC-MAN VIDEO SLOT WILD EDITION & ©2017 Bandai Namco Entertainment Inc.

 

「今まで見たことがない」「体験したことがない」
をキーワードに新しい驚きを仕掛けていきたい

既存店における業務用ゲームの状況は?

浅沼:現中期計画スタートの年は非常に厳しい状況でしたが、製品ラインナップや組織体制の見直し、効率化などを行い、再スタートを切ることができました。既存のアミューズメント施設で展開する業務用ゲームは「完全フリーのプラットフォーム」である点が特徴です。例えば、どのようなスペックのマシンをどのようなサイズ、どのようなプレイ内容で展開するかは、メーカー側の裁量によるところが非常に大きいです。作り込もうと思えばいくらでも作り込めますし、「ここまででいい」という判断が非常に難しいです。しかし厳しい環境を踏まえ、機器開発も方向転換を行いました。もう一度足元を見つめ直し、自分たちの強み、やるべきことをしっかりと把握して、スピード感をもって開発に取り組むことが、今の我々に必要なことだと考えています。今後も精査を重ね、時代をとらえた良質な機器の開発・提供に努めてまいります。

 

人材育成について心がけていることは何かありますか?

浅沼:人材育成なくして事業は成り立ちません。エンターテインメントは市場の変化が非常に速い業界ですが、人材が育成され力を発揮すれば、どんなに市場環境が変わろうとも乗り越えられないことはないと思います。そのためにも、上司は自分の部下をもっと知らなければいけません。部下は何が得意で、どんなことに興味があり、どういうことで力を発揮するのかを把握し、現場がモチベーションを上げ、いい仕事ができる環境を整えることが、マネジメントの使命だと考えています。

 

次期中期計画ではどのような戦略を考えていますか?

浅沼:現中期計画の経験を活かし、「今まで見たことがない」「今まで体験したことがない」という言葉をキーワードに、引き続き新しいもの、インパクトのあるエンターテインメントの創出に挑戦したいと思います。技術進化のスピードはめざましく、この3年間でも驚くべき変化がありました。次の中期計画の間にも今では考えられないような新たな技術が続々と生まれていると思います。変化をチャンスととらえ、ユーザーの期待の一歩先をいく仕掛けをどんどん生み出していきたいですね。

 

※このインタビューは、2017年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。