キーパーソンインタビュー

各事業のポジションに合った成長戦略を推進し
国内、海外ともにさらなる飛躍を目指す

株式会社バンダイ 代表取締役社長 川口 勝

株式会社バンダイ
代表取締役社長 川口 勝

1960年11月2日生
1983年4月
㈱バンダイ入社
2002年4月
同社執行役員 ベンダー事業部ゼネラルマネージャー
2006年4月
同社取締役 流通政策担当
2010年4月
同社常務取締役 ホビー事業政策 品質保証政策担当
2015年4月
同社専務取締役 トイ事業政策 品質保証政策担当
2015年8月
同社代表取締役社長(現職)、㈱バンダイナムコホールディングス執行役員
2016年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役 トイホビー戦略ビジネスユニット担当
2018年2月
㈱BANDAI SPIRITS代表取締役社長(現職)
2018年4月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役 トイホビーユニット担当(現職)

トイホビーユニットは、今中期計画の新たな中期ビジョン「突き破り創り出せ!そして世界を“あっ”と言わせよう!」のもと5つの重点戦略を打ち出し、2018年度第1四半期は前年同期を上回る好調な業績となりました。今回は、トイホビーユニットの主幹会社である㈱バンダイの川口勝社長に、中期計画で掲げた戦略の具体的な取り組みや注目IPへの期待、そして社員への想いを聞きました。

今中期計画は好調な出足となりました。

川口:トイホビーユニットの第1四半期は、売上高が505億円(前年同期比118%)、営業利益が52億円(同393%)と、好調なスタートを切ることができました。ガンプラ、コレクターズフィギュアといったハイターゲット層向け商品や、「ドラゴンボール」「仮面ライダー」「プリキュア」などの主力IP商品を中心に順調に推移しました

中期計画のビジョンは?

川口:「突き破り創り出せ!そして世界を“あっ”と言わせよう!」です。ヒットの有無が業績に大きな変動を与える業界において安定した収益を上げるため、これまでトイホビーユニットではIPラインナップの充実や組織体制の整備に努めてきました。しかし、世界を視野にさらに次のステージに上がるためには、従来のやり方にとどまらず、既存の概念を突破し、新しい遊びを創出することが急務となっています。今中期計画ではその考えを強力に推進するべく、新たなビジョンを打ち出しました。

4月には組織改編を行いました。

川口:これまでのバンダイは、ターゲットも事業領域も幅広く展開してきましたが、未就学児や小学生向けの商品とハイターゲット層向けの商品とでは、ものの作り方、マーケティングの仕方、海外への攻め方などが大きく異なるため、同じ組織内で運営することが難しくなってきていました。そこで、ハイターゲット層向け商品を扱う部門を分社化し、新会社㈱BANDAI SPIRITSに集約することで、より戦略的でスピード感のある事業展開を目指します。新体制はまだスタートしたばかりですが、各事業体のミッションがより明確になり、チャレンジしやすい環境が整ってきていると思います

5つの重点戦略を挙げました。

川口:一つは、「IPの創出・育成・獲得の強化」です。トイホビーユニットでは、主力IP商品の育成・拡大や新規IPの商品化権取得に力を注いでいますが、同時にトイホビーユニットが中心となった新たなIPの創出にも力を入れていきます。8月には、ユニットを横断したプロジェクトである「コンテンツプロジェクト」を立ち上げました。各事業に精通している社員がプロジェクトのコアメンバーとなり、新規IP創出の実現に向けて動き出しています。
 二つ目の「各事業ポジションの成長実現」は、国内各事業における圧倒的ナンバーワン、ワールドワイド視点による成長といった施策を含んでいます。各社、各部門の市場における独自性や目指すべきポジションを明確にし、それぞれの特性や成長段階に合わせて着実に取り組んでいきたいと思います。

三つ目の重点戦略「中国市場への本格展開」は進んでいますか?

川口:中国市場への本格展開は、グループ全体で中期計画の柱として打ち出していますので、トイホビーユニットでも4月に準備室を設置し、現地での会社設立を含めた準備を進めています。足元では、中国でのガンプラ人気を受け、8月に中国本土では初となる「ガンプラ」を主体としたフラッグシップショップ「THE GUNDAM BASE SHANGHAI」を上海にオープンしました。ほかにも、現地向けにローカライズした「ウルトラマン」の玩具が順調に売上を伸ばしています。今後は中国発のIPや商品を現地で販売する「地産地消」の考え方も取り入れ、さらなる拡大を目指したいと考えています。
 欧米では、「ドラゴンボール」のトレーディングカードやコレクターズフィギュアが好調です。こうしたハイターゲット向け商品をさらに拡大していくとともに、ディズニーIP「Big Hero 6(和名:ベイマックス)」のTV放送に合わせた商品展開や、「たまごっち」や「ハイパーヨーヨー」といった自社IPの展開も行い、欧米事業の収益性を高めていきます。

THE GUNDAM BASE SHANGHAI
「THE GUNDAM BASE SHANGHAI」
©創通・サンライズ

失敗を恐れず自ら考えて挑戦できる社風を
今後も継続していきたい

残る2つの戦略はどうですか?

川口:「新規事業領域の拡大」では、トイホビーユニットの事業領域を広義に捉えることで、新商品・新事業を創出していきたいと考えています。これまでは玩具、ホビー商品の領域にこだわった事業展開を行っていましたが、今後はデジタル技術の活用やコト需要への対応などにも積極的にチャレンジしていきます。また、他ユニットや外部パートナーとの連携も今まで以上に強化し、次の事業の柱を創出・育成していきたいと思います。
 「事業最大化に向けた機能の再/最強化」では、組織改編や人材育成に加えて、今後さらに拡大するであろうeコマース(EC)への対策を講じます。特に、海外はECなくして事業の拡大はあり得ません。今中期計画では、グローバルECをさらに拡大するための基盤整備を集中的に行っていきます。

今期注目のIPや商品は?

川口:9月に放送を開始した「仮面ライダージオウ」は、平成仮面ライダー20作目という節目の作品です。歴代の仮面ライダーたちの力を身にまとって戦う設定に、市場からは期待が集まっています。バンダイより続々と商品を発売していきますので、ぜひご期待ください。
 また、同じく9月から「ヒミツのここたま」の新シリーズ「キラキラハッピー☆ ひらけ!ここたま」がスタートしているほか、秋からはすでに商品展開している「爆釣バーハンター」のTVアニメがいよいよ始まります。将来のバンダイナムコのファンを創出・育成するという意味では、未就学児や小学生向け商品をメインに事業展開しているトイホビーユニットがグループにおいて果たす役割は大きいと考えています。子どもたちの心に刻まれる商品・サービスを展開し、他のユニットに将来のバトンをつないでいきたいと思います。

キラキラハッピー☆ ひらけ!ここたま
「キラキラハッピー☆ ひらけ!ここたま」
©BANDAI/TV TOKYO・ここたま製作委員会

爆釣バーハンター
「爆釣バーハンター」
©鈴木サバ缶/小学館・爆釣団・テレビ東京

その他注目商品はありますか?

川口:コミュニケーションロボット「ガンシェルジュ ハロ」の受注が始まりました。「機動戦士ガンダム」シリーズに登場するマスコットロボット「ハロ」が“もし現代に存在していたら”をテーマにしたもので、IP商品にAI(人工知能)技術を導入するという新しい挑戦となっています。
 また、カプセルトイ「だんごむし」が8月に発売されました。インパクトのある商品で、かつカプセルレスで環境にも配慮しており、東京おもちゃショーで大きな話題を集めた商品です。こうしたこれまでにない視点を取り入れた商品・サービスの創出にどんどんチャレンジしていきたいですね。

社員への想いを聞かせてください。

川口:せっかくエンターテインメント会社に入社したわけですから、社員には失敗を恐れず、自分がやりたいこと、おもしろいと思うことにどんどん挑戦してもらいたいです。バンダイナムコグループには、自主独立、敗者復活の社風があります。自ら考え挑戦した結果、たとえ失敗したとしても、その経験を次に生かすことができれば会社生活において致命傷になることはありません。私自身たくさんの失敗を経験して今に至ります。自由闊達な社風を今後も継続し、社員一人ひとりの成長を通して、事業のさらなる成長と拡大を目指していきたいと思います。

※このインタビューは、2018年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。