株式会社バンダイナムコスタジオ
代表取締役社長 中谷 始
㈱バンダイナムコスタジオは、2012年に㈱バンダイナムコゲームス(現㈱バンダイナムコエンターテインメント)の開発機能を分社化し設立されました。コンテンツの企画・制作・開発・運営に取り組むプロフェッショナルなクリエイター・エンジニア集団として、既存タイトルにとどまらず、新規技術の研究・創出にも日々チャレンジしています。今回はバンダイナムコスタジオの中谷始社長に、同社の強みや今後の展望について聞きました。
中谷:バンダイナムコスタジオは、ネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム、業務用ゲームなどの企画・開発を行っており、主にバンダイナムコエンターテインメントが発売するタイトルに携わっています。今年10月には、アミューズメント施設向けコンテンツとアミューズメント機器関連の研究・企画開発の分野を、㈱バンダイナムコアミューズメントラボとして当社から分社化しました。これまで当社で総合的に開発してきた「太鼓の達人」や「機動戦士ガンダムEXVS.」シリーズのように、一つのタイトルを家庭用ゲーム、業務用ゲーム、ネットワークコンテンツなどマルチに展開しているものに関しては、両社で引き続き密に連携しながら、コンテンツ開発を推進しています。
中谷:世の中には、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの新しい技術を使った商品・サービスがどんどん出ています。その流れに対応すべく、従来から行っているゲーム開発に加え、これまでにない全く新しい最先端技術を、さらに深掘りして伸ばすための研究開発に取り組んでいる点は、当社の強みに挙げられます。さらに、自社内に音響やモーションキャプチャの専用スタジオを所有するなど、優れたコンテンツ制作に向けて徹底した開発に取り組める環境を整えています。
また、規模感においても優位性があると考えています。総勢1,000人以上の幅広いノウハウを持つ人材を活用し、企画プロデュースからソフト・ハードの試作開発、サウンドやビジュアル、アートの制作まで、多様なニーズに対して総合的かつ柔軟な提案と実行が可能となっています。
中谷:今年度の家庭用ゲームとしては、バンダイナムコエンターテインメントから「SOULCALIBUR VI」が10月に発売され、12月以降も「GOD EATER 3」「ACE COMBAT7:SKIES UNKNOWN」といった大型のナンバリングタイトルが続々と発売される予定です。表現力やゲーム性などが以前にも増して向上していることを体感していただきたいと思います。いずれもワールドワイドで広く展開するタイトルですので、世界の需要に応えられる最先端のコンテンツとすることを目標に、さまざまな技術者や企業を巻き込みながらゲーム開発を進めました。
グループ外企業のタイトルでは、12月に任天堂㈱から発売予定のニンテンドースイッチ向けの大型タイトル「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」の開発を担当しました。当社の技術力や制作力を最大限生かした、渾身のタイトルです。
中谷:㈱バンダイナムコアミューズメントが4月に大阪・EXPOCITYにオープンしたアミューズメント施設「VS PARK」の「ニゲキル」や、10月に東京の立川髙島屋S.C.にオープンした「屋内・冒険の島 ドコドコ」の企画開発を行いました。どちらもプロジェクションマッピングの技術を活用しています。プロジェクションマッピングという“見せる技術”を使うことでアトラクションの楽しさを最大化しようと、担当者がアイデアを出し合い、社内にアトラクションを仮設して自ら体験と改善を重ね、幅広いターゲット層が楽しめる遊びを目指しました。
さらに、バンダイナムコエンターテインメントの展開する「アイドルマスター」がDMM VR THEATERで開催したMR(複合現実)のライブイベントや、クリエイター集団であるsupercellのryo氏がプロデュースを手掛ける架空アーティスト「EGOIST」のライブイベントでは、当社で開発した「BanaCAST」の技術を用い、キャラクターがあたかも現実の舞台上にいるかのような再現が行われています。これは、モーションキャプチャを用いてリアルタイムでキャラクターに動きや声を付けることによって、会場のお客さまとインタラクティブでリアルなやり取りを可能にしたものです。
モーションキャプチャの様子
バンダイナムコスタジオの技術を活用した「アイドルマスター」のライブイベント
©窪岡俊之 ©Bandai Namco Entertainment Inc.
中谷:強い探求心だと思います。当社がグループ内で推進役を務めている「バンダイナムコアクセラレーター」(スタートアップから事業アイデアを募集し支援するプロジェクト)などもそうですが、日本にとどまらず世界中の新規技術を探っていくことは当社のミッションでもあります。新しいテクノロジーはどんどん生まれていますので、面白いものを見つけ、研究し、グループにあるエンターテインメントの多彩な出口にどのように応用できるかを考えるなど、新しい企画の提案を常日頃から行っています。その取り組みが結果として形となっているのだと思います。
中谷:グループの海外展開が本格化している中、ワールドワイドでお客さまを獲得できる商品の開発基盤をつくることが急務です。そのためには、高い技術や発想、企画力を持った国内外の人たちと一緒に企画開発をしていかなければならないと思っています。また、モノづくりの面でもさらに改善を進めていきます。100の小さなヒットを目指すのではなく、10のメガヒットを生み出したい。メガヒット創出の精度が高まれば、モノづくりにかかるコストの抑制にもつながり、そのコストで新規開発やマーケティングに取り組むことができます。そうした良い循環を社内につくるため、PDCAサイクルをしっかりと回し、お客さまにとって存在価値がある、つまり“商品力のある”モノづくりに取り組んでいきたいと思います。
中谷:アイデアやテクノロジーの種を形にするためには、先を見据えた高い志と、実現に向けた粘り強い挑戦が必要だと考えています。最初から簡単に実現できてしまうようなアイデアは、得てしてつまらないものです。試行錯誤を繰り返すことでアイデアが昇華され、またその都度生まれる新たなアイデアや改善策を取り入れることで、初めてお客さまに喜ばれるモノづくりができると考えています。
バンダイナムコスタジオ設立時に、「Innovation through Creativity」という標語をつくりました。これは、みんなの想像力を生かしてイノベーションを起こしたいという想いからです。イノベーションと聞くと、大きな変革のようなイメージがありますが、実際は小さなアイデアの積み重ねがイノベーションにつながっているということが、歴史的にもよくあります。その糧となるアイデアについて、常にみんなが活発に話しているという風土を目指していきたいと思います。
※このインタビューは、2018年11月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。