キーパーソンインタビュー

社会からの要請に適応したガバナンスを築き
グループ全体で効果的に機能させる

株式会社バンダイナムコホールディングス 取締役 浅古 有寿

株式会社バンダイナムコホールディングス
取締役 浅古 有寿

1966年1月18日生
1986年4月
㈱バンダイ入社
2005年8月
同社経理部ゼネラルマネージャー
2006年4月
㈱バンダイナムコゲームス(現㈱バンダイナムコエンターテインメント)取締役
2008年4月
㈱バンダイナムコホールディングス執行役員経営企画本部長
2010年6月
同社取締役経営企画担当経営企画本部長
2011年6月
同社取締役経営企画本部長(現在
2014年4月
㈱ナムコ(現㈱バンダイナムコアミューズメント)取締役
2017年4月
Bandai Namco Holdings Asia Co., Ltd.取締役(現在)
2018年2月
㈱BANDAI SPIRITS取締役(現在)

バンダイナムコグループは、「夢・遊び・感動」を提供するエンターテインメント企業として、変化の速い環境やグローバル市場においても揺るがない強固な経営基盤の構築に努めるとともに、地球環境や社会とのかかわりについてステークホルダーのよろこびにつながる活動を推進しています。今回は㈱バンダイナムコホールディングスの浅古有寿取締役に、グループのコーポレートガバナンスやCSR(企業の社会的責任)の取り組みについて聞きました。

グループ内での役割は?

浅古:経営企画本部長として、投資家や株主の皆さまをはじめとする社内外のステークホルダーに向けたコミュニケーション活動を推進するとともに、中期計画の策定やガバナンス体制の構築、CSR活動の推進などを担っています。

コーポレートガバナンスに対する考えを教えてください

浅古:長期的、継続的な企業価値の最大化を実現する上で、コーポレートガバナンスの強化は重要な経営課題です。また、変化の速いエンターテインメント業界でグローバル規模の競争に勝ち抜くためには、強固な経営基盤の構築が不可欠です。この考えのもと、ガバナンス体制の強化に努めています。

そのガバナンス体制について

浅古:当社は設立当初より、社外取締役を2名以上とすることを定款で定めるなど、外部の客観的な視点を経営に取り入れることを重視してきました。この考えに基づき、現在取締役11名のうち3名を独立社外取締役としています。また、監査役制度を採用し、独立社外監査役の要件を備えた3名を含む4名の監査役が取締役の業務執行状況を監査しています。
トップミーティングとしては、各ユニットの計数・事業報告を行う「グループ事業報告会」、グループ経営上の課題や戦略などを討議する「グループ経営会議」、定例の週次報告会などを開催し、経営情報の迅速な把握と対応をはかっています。さらに、人事報酬委員会をはじめとする各種委員会を設け、仕組みとしてガバナンスを担保しています。

人事報酬委員会とは何ですか?

浅古:当社取締役の人事・報酬などについて、客観的、中立的に検討することを目的とした取締役会の諮問機関です。委員の過半数が独立社外取締役で、透明性を強く意識した組織となっています。人事についてはこのほかにも、新任役員の選任において独立社外取締役が候補者面談を行い、その意見を踏まえて機関決定を行うなど、透明性・公平性の担保に努めています。

社外役員による取締役会の評価も行っていますね

浅古:取締役会は自己評価しづらいものですので、社外の取締役と監査役で構成された独立役員会が客観的な評価を行っています。具体的には、毎年定例で全役員アンケートを実施し、社内役員と社外役員とのギャップや記載コメントなどから見えてくる課題を抽出の上、独立役員会が取締役会に対して評価・提言を行っています。これにより、取締役会が客観性を欠いていないか、機能としての不足がないかなどを確認しています。

独立役員会からの評価の結果は?

浅古:ボードカルチャーそのものや、各取締役が自身の役割を認識した上でリーダーシップを発揮している点が強みとして評価されています。また、独立役員会からの提言に対して速やかにアクションプランを実施している点も評価を受けています。今年度は、世界的視野でのリスクの把握と対応、主要事業会社に対するモニタリングの強化、次世代経営者・幹部の育成について提言が得られました。提言を受け速やかに対応していきます

ガバナンスの強化については?

浅古:昨年、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コードが改訂されました。これに合わせ、当社のコーポレートガバナンスについて検証を行った結果、我々が進めてきた取り組みが、社会の求めから大きくかけ離れていないことが確認できました。とはいえ、常により良い形を考え続けなければなりません。バンダイナムコグループは、100社以上ある企業の集合体です。事業も多彩で我々を取り巻く環境は刻々と変化しています。リスクを把握し、機会を最大限に生かすためにも、ガバナンス体制の一層の向上をはかるとともに、その意義を組織内にしっかりと浸透させ、持続的かつ効果的に機能させたいと思います。

自発的・継続的に取り組める環境をつくることで持続可能な社会の実現に貢献する

CSRの考え方について聞かせてください。

浅古:グループのCSRコンセプトは「Fun For the Future! 楽しみながら、楽しい未来へ。」です。「夢・遊び・感動」を提供する企業として、バンダイナムコらしく楽しい未来づくりに貢献していきたいという思いを込めています。体制面では、田口社長を委員長として各ユニットの主幹会社社長をメンバーとする「グループCSR委員会」を定期開催し、重要なCSR戦略に関する議論や情報共有を行っています。これに加え、委員会の下部組織で各ユニットの現場担当者が参画する「グループCSR部会」を通じて、具体的な活動の推進をはかっています。

4つの重要項目も掲げていますね。

浅古:グループにとって取り組むべき重要課題として「商品・サービスの安全と衛生」「環境配慮」「コンテンツや商品の表現における社会への影響とポリシー」「サプライチェーン管理」の4つに取り組んでいます。これらの項目は、グループを取り巻く社会要請や、事業が社会に与える影響などを踏まえ、定期的に重要性の検証を行っています。

CSRを推進する上で重視していることはありますか?

浅古:現場の自発性・継続性を促すために、事業の延長線上での活動になっているかを常に意識しています。例えば、アミューズメント施設で照明をLEDに切り替えることは、環境への配慮といった社会貢献の視点に加え、節電に伴うコストカットにより事業面での効果も見込めます。こうした事業の目線を踏まえることで、商品・サービスの開発に最前線で携わる社員たちが自発的・継続的に取り組むことができ、ひいては持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。

バンダイナムコグループのCO2排出量の推移

グループ横断で被災地支援にも取り組んでいます。

浅古:東日本大震災の被災地では、現在も年3回、グループ社員が現地を訪問し、IPや商品を活用したバンダイナムコならではのワークショップを開催するなど、支援活動を継続しています。併せて株主優待の選択項目に「寄付」を設け、ご選択いただいた株主さまからの金額と当社からの拠出を合わせ、1,000万円を公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに寄付しています。寄付金は、被災地の子どもたちの支援活動に活用されています。


東日本大震災の被災地の子どもたちへの支援活動は現在も継続して実施している。
写真は宮城県石巻市で開催した活動の様子

CSRの課題や強化ポイントは?

浅古:「IP軸戦略」を世界に拡大していく中、我々の商品・サービスが社会にどのような影響を与えるか、今まで以上に規律をもって考える必要性を感じています。また、事業成長を目指す一方で、環境対策にも向き合い続けなければなりません。これまでもCO2排出量の削減目標を設定し削減努力をしてきましたが、今中期計画からはこれに加え、ユニットごとに原単位(※)管理もスタートしました。世界中のお客さまに「夢・遊び・感動」を提供する企業として、今後もグループ全体でしっかりと取り組んでいきます。
※活動量あたりのCO2排出量

経営や部下育成のモットーは?

浅古:さまざまなステークホルダーと関わる上で、意見や発言に一貫性を持ち、ポリシーや軸をぶらさないことを心がけています。一方で、自分の常識は世間の非常識かもしませんし、社会環境も変化します。それらを素直に受け止める謙虚さを持つことを忘れてはいけないと思っています。また、社員が明るく元気で楽しく仕事に取り組める環境づくりを心がけています。良好な社内環境をつくることは私の大きな役割だと思いますし、今後も社員の活躍を積極的に後押ししていきたいですね。

※このインタビューは、2019年3月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。