キーパーソンインタビュー

新しい遊びを提供することで個性を打ち出し、
お客さまのニーズの変化に対応

株式会社バンダイナムコアミューズメント 代表取締役社長 萩原 仁

株式会社バンダイナムコアミューズメント
代表取締役社長 萩原 仁

1959年4月8日生
1978年4月
㈱ナムコ(現㈱バンダイナムコエンターテインメント)入社
2011年4月
㈱バンダイナムコゲームス(現㈱バンダイナムコエンターテインメント)取締役アミューズメント営業本部担当兼本部長
2013年4月
同社常務取締役事業統括担当兼アミューズメント事業統括本部長
2014年4月
㈱ナムコ(現㈱バンダイナムコアミューズメント)代表取締役社長(現職)
2014年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役アミューズメント施設戦略ビジネスユニット担当
2015年4月
㈱バンダイナムコエンターテインメント取締役副社長
2018年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役リアルエンターテインメントユニット担当(現職)
2018年10月
㈱バンダイナムコアミューズメントラボ代表取締役社長(現職)

※2019年9月現在の略歴を記載

リアルエンターテインメントユニットでは、「いま、ここにしかないエンターテインメント体験を世界中に生み出す~リアルエンターテインメントのコンテンツプロバイダー~」を中期ビジョンに掲げ、バンダイナムコグループならではのアミューズメント施設の運営や業務用ゲームの開発に取り組んでいます。
今回は、同ユニットの主幹会社である㈱バンダイナムコアミューズメントの萩原仁社長に、国内外の市場環境や好調な施設・機器、そして今後の戦略・ビジョンを聞きました。

国内のアミューズメント市場の環境は?

萩原:アミューズメント市場を取り巻く環境として最も大きく変化したことは、お客さまのニーズです。スマートフォンが普及し、お客さまは自ら圧倒的な量の情報を入手できるようになりました。加えて、「人と違うことをしたい」という需要も高まっています。自ら入手した情報に基づき目的意識を持って行動する、いわゆる「コト消費」のニーズに対応しなくてはお客さまの満足を得られない時代になっています。当ユニットでは、モノを作り販売する「モノビジネス」にとどまらない、バンダイナムコグループならではの感動を提供する「コトビジネス」の展開を積極的に推進することで、こうしたニーズの変化に対応しています。

バンダイナムコグループの優位性・差別化のポイントは?

萩原:バンダイナムコグループの最大の強みは、グループを挙げて推進している「IP軸戦略」にあります。多彩なIPを活用できる強みに加え、多様な事業形態と豊富なノウハウをグループで保有しているため、アプローチの仕方によってさまざまな遊びの開発が可能となります。昨年、ゲームコンテンツの開発スタジオである㈱バンダイナムコスタジオから業務用ゲーム分野の企画・開発機能を分社化し、㈱バンダイナムコアミューズメントラボを設立しました。これはアミューズメント施設向けの新しい遊びを生み出すことを目的にしたもので、新技術を用いたアトラクションやアクティビティを開発する大きな力になると考えています。
 新しい遊びを追求していくうえで、一つの契機となったのは、インドアプレイグラウンドの「あそびパークPLUS」に2016年より設置している『屋内砂浜 海の子』です。『屋内砂浜 海の子』では、最新のCG・立体音響技術で南国の海辺にいるような環境を再現し、砂浜に打ち寄せる波間を素足で走る気持ち良さを体感できます。従来のゲームセンター型のビジネスにはなかった新しい遊びを提供することで個性を打ち出し、目的を持ったお客さまを引き込んでいくことに成功しています。『屋内砂浜 海の子』は、バンダイナムコグループのノウハウを生かして開発したコンテンツです。機器やコンテンツの開発、そしてそれらを提供する場の運営と、一つのバリューチェーンでお客さまにサービスを届けることができる当ユニットの強みを生かし、新しい遊びの提供に取り組んでいます。

具体的にはどのような場が生まれていますか?

萩原:エンタメ系バラエティスポーツ施設の「VS PARK」が好調です。健康志向の高まりとともに、各地にフィットネスジムなどが増えていますが、気軽に遊べるスポーツをテーマにした施設はほとんどありませんでした。「VS PARK」には、超短距離走を本気で楽しめる世界初の猛獣逃げきりアクティビティ『ニゲキル』などのデジタルアクティビティもあり、気心の知れた仲間とワイワイ楽しみながら、体を動かすことができます。
 また、今年7月、アニメの聖地として知られる東京・池袋に“アニメとゲームに入る場所”がコンセプトの「MAZARIA」をオープンしました。VRアクティビティなどを多数取り揃え、アニメやゲームの中に自身が入り込むような没入感を、アクティビティ中はもちろん、内装やBGMなども含めた空間全体で体感いただける施設となっています。さらに、同じビル内に当ユニットが従来展開している「ナンジャタウン」もありますので、「MAZARIA」で最先端のアクティビティを楽しんだあと、「ナンジャタウン」で全く異なるレトロな雰囲気を味わい尽くすなど、一日中バンダイナムコの施設でお楽しみいただくことができます。

キーパーソンインタビュー201909
▲MAZARIA
©ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
©カラー ©サンライズ ©創通・サンライズ
TM & © TOHO CO., LTD. ©Bandai Namco Entertainment Inc.
©Bandai Namco Amusement Inc.

 こうした新業態施設の展開に加え、ゲームセンターなど既存のアミューズメント店舗においても新たな施策の打ち出しに挑戦しています。その一つとして、「ワンピース」の新作映画『ONE PIECE STAMPEDE』の公開に合わせて、8月より「#バンナム万博」を展開しています。これは、版権元さまの協力のもとバンダイナムコアミューズメントを中心としてグループ横断で展開している施策で、ナムコ店舗限定の映画関連フィギュア(全8種)を景品として投入するなど、さまざまな仕掛けを行っています。我々の店舗は、映画館を併設する大型ショッピングモールに多数出店していますので、映画興行は各店舗の売上に大きく影響します。幅広い層に高い人気を誇る「ワンピース」の映画のさらなる盛り上がりにグループ一丸となって貢献していくことで、店舗売上に相乗効果が発揮されることを期待しています。

キーパーソンインタビュー201909
▲劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』ワールドコレクタブルフィギュア
-SPECIAL-vol.1 vol.2(ナムコ店舗限定景品)
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
©尾田栄一郎/ 2019「ワンピース」製作委員会

個性を大切にしながら新たな取り組みにも挑戦し
ユニット全体としての成長・進化を目指す

業務用ゲームの状況は?

萩原:2018年度は業務用ゲームの新製品『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2』が好調に推移しました。3月から稼働中の『ソードアート・オンライン アーケード ディープ・エクスプローラー』に続き、今年度は今冬稼働予定の『ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー』など、グループの強みであるIPを積極的に活用したタイトルを展開していきます。

キーパーソンインタビュー201909
▲ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー
©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SC製作委員会
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会
©Bandai Namco Amusement Inc.

海外展開はどう進めていますか?

萩原:2019年5月に中国でアミューズメント施設の企画・運営を行うBandai Namco Amusement(SHANGHAI) CO., LTD.を設立しました。本格的な展開はこれからとなりますが、中国市場における事業展開を現地主導でスピード感を持って進めていきます。
 北米市場については厳しい環境が続いていますが、アメリカが有望市場であることは間違いありませんので、しっかりと戦略をもって取り組んでいく必要があります。また、すでに施設展開を開始しているインド市場にも引き続きチャレンジしていきます。インドでは中間層の所得が伸びており、10年後には経済規模が中国、アメリカに次いで世界第3位になる見通しです。成長余力が大きな市場として将来を見据えながら取り組んでいきたいと思います。

その他のユニット内の取り組みは?

萩原:当ユニットの事業会社はそれぞれ個性的なカラーがあります。例えば、㈱花やしきが展開する「浅草花やしき」は、日本最古の遊園地としてのブランディングを確立しています。その「浅草花やしき」に、このたび多目的ホール『浅草花劇場』を新設しました。ここでは、以前から手がけてきた「ハナヤシキプロレス」に加え、「花振袖の舞」などのイベントや興業を行っていきます。このように、各社が育ててきたブランドイメージを大切にしながら、新たな取り組みにも挑戦し、ユニット全体としての成長・進化を目指していきたいと思います。

仕事におけるポリシーは?

萩原:従業員に対して、部署やポジションで話すのではなく、一人の人間として向き合って会話することを心がけています。当ユニットの従業員の総数はパートナー社員やアルバイトなどを含めると6,000人を超えますが、お客さまにとって従業員の部署やポジションは関係ありません。スタッフ全員が「お客さまに喜んでいただく」という共通の目標のもと、心を一つにして仕事に取り組んでほしいと伝えています。どれほどデジタル化が進んでも、人と人とが接することによって生まれる価値は不変的で大切なものです。業務用ゲームを含め施設に関わる仕事において、提供するコンテンツはもちろん重要ですが、人が介するからこそ生まれる付加価値を大切にしながら、お客さまに向き合い続けていきたいと思います。

※このインタビューは、2019年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。