キーパーソンインタビュー

トイホビー事業は過去最高の業績を記録
事業間の相乗効果でさらなる成長を目指す

株式会社バンダイ 代表取締役社長 竹中 一博

株式会社バンダイ
代表取締役社長 竹中 一博

1964年2月11日生
1987年4月
㈱バンダイ入社
2006年4月
同社メディア部ゼネラルマネージャー
2011年4月
同社業務執行役員 ベンダー事業部ゼネラルマネージャー
2013年4月
同社業務執行役員 コレクターズ事業部ゼネラルマネージャー
2015年6月
同社取締役
2018年4月
㈱BANDAI SPIRITS取締役
2019年4月
同社常務取締役
2021年4月
㈱バンダイ代表取締役社長 兼 ㈱バンダイナムコホールディングス執行役員(現職)

※2021年8月末現在の略歴を記載

2021年4月、バンダイナムコグループは次期中期計画に向けたユニット再編を行いました。今回は、ユニット再編により誕生したエンターテインメントユニットのトイホビー事業を統括する㈱バンダイの竹中一博代表取締役社長に、トイホビー事業の現状や今後の展望などについて聞きました。

新型コロナウイルス感染拡大によるトイホビー事業への影響と足元の業績について教えてください。

竹中:2021年3月期のトイホビー事業は、特に第1四半期において、新型コロナウイルス感染拡大に伴うアミューズメント施設の休業により、施設向けの景品やデジタルカードなどのビジネスが影響を受けました。
 その一方で、デジタルを活用した販売やマーケティングをいち早く強化したことにより、巣ごもり需要の追い風を獲得し、ガンプラやコレクターズアイテムなどのハイターゲット層(大人層)向け商品が国内外で好調に推移しました。また、国内では、新規I Pを活用した商品や菓子などの関連商品も人気となりました。この結果、トイホビー事業全体で過去最高の売上高・営業利益となりました。
 2022年3月期第1四半期についても、引き続き好調な事業がけん引するとともに、前年同期に新型コロナウイルス感染の影響を受けた事業が復調したことで、第1四半期として過去最高の売上高、営業利益となっています。

新規I Pへの取り組み状況は?

竹中「鬼滅の刃」や「ディズニー ツイステッドワンダーランド」「呪術廻戦」などの新規他社I Pの商品化にスピード感をもって取り組んでおり、玩具はもちろん、関連商品でもたくさんのヒットが生まれています。
 かねてより、事業サイクルのスピードが早い景品やロト(くじ)を担当する事業部門では、新規I Pへのアンテナを高く広く張り巡らせ、いち早い商品化に取り組んできました。そうしたアンテナの張り方が、今では他の事業会社や部門にも波及しています。玩具、フィギュア、プラモデル、玩具菓子・食品、カプセルトイ、カード、アパレル、日用雑貨など、多彩な出口をもつトイホビー事業が一丸となってスピーディに展開することで、低年齢層からハイターゲット層まで幅広いお客さまに、最適なタイミングで商品を提供することができます。この総合力とスピード感こそ、トイホビー事業の大きな強みだと考えています。
 また、自社の新規I Pという点では、『キャラパキ』や『釣りグミ』などの「エンターテインメント菓子」がヒットしています。こうしたトイホビー事業ならではのI P創出にもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

「鬼滅の刃 DX日輪刀」
『鬼滅の刃 DX日輪刀』
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

デジタルを活用した販売・マーケティングにも力を入れていますね。

竹中:コロナ禍の影響もあり、社会全体のデジタル化が急速に加速していることを受け、トイホビー事業でもオンラインを活用したプロモーションやEコマースに積極的に取り組んでいます。
 オンライン施策は、特にハイターゲット層との相性が良く、オンラインイベントの中には、3日間で70万人ものファンにご参加いただけたものもありました。オンラインイベントのメリットは、誰でも気軽に参加できる点にあります。これにより、新規層や休眠層の掘り起こしにつなげることができています。
 一方で、参加者の盛り上がりという点では、リアルイベントがもたらす熱量は別格です。アフターコロナを見据えて、オンラインとリアルの双方のメリットを生かし、ハイブリッドで効果的なプロモーションを行っていく必要があると考えています。


2020年開催イベント「GUNPLA EXPO 2020」(左)
「TAMASHII NATION 2020」(右)
©創通・サンライズ ©ダイナミック企画
©永井豪・石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
Voltron TM & © WEP, LLC. All rights reserved.

トイホビー事業とデジタル事業が1つのユニットになりました。

竹中:トイホビー事業とデジタル事業は、エンターテインメントという大きな括りでは同じ市場に属しますが、展開する商品の特徴は大きく異なります。例えば、トイホビー事業は数カ月から1年の短いサイクルでたくさんの商品を回転させるのに対して、デジタル事業は数年単位の長い時間をかけて1つのタイトルを開発・運営します。私たちが目指す融合とは、こうした異なる性質を完全に同じにするのではなく、お互いの強みを学び、活用し合うことだと考えています。デジタル事業にとって、トイホビー事業のI Pに対するアンテナやスピード感は刺激になると思いますし、トイホビー事業にとっても、1つのコンテンツを長く、そしてワールドワイドに展開するデジタル事業に対する理解を深めることで、さらなる成長につながると考えています。
 融合に向けては、4月からグループ施策として㈱BANDAI SPIRITSと㈱バンダイナムコエンターテインメントの経営陣の間で交換人事を行うなど、事業間の人材交流が活発に進んでいます。また、6月からバンダイ、BANDAI SPIRITS、バンダイナムコエンターテインメントの3社合同でアイデアコンテストを実施しました。3社がそれぞれ自社の商品に関するテーマを設定し、企画を全社員から公募するもので、応募された企画は3社内に公開し、役員を含めた全社員が、良いと思う企画に投票できるようにしました。3社の社員が自由に意見を示し合える場を作ることで、相互理解を深めるきっかけにもなったと考えています。

海外事業の拡大に向け組織再編を実施

海外展開の状況は?

竹中:中国と北米を注力地域と位置付けています。中国では、5月に上海で「実物大フリーダムガンダム立像」を公開したことに合わせ、ガンプラのフラッグシップショップの上海2号店をオープンし、好調に推移しています。また、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」の商品も人気で、今後さらなる売上高の拡大を目指します。
 北米では、ハイターゲット層向けのビジネスが順調に拡大しています。前期には、「Target」をはじめとする大手流通約3,000店舗にガンプラを、約4,000店舗にガンダムやドラゴンボールのフィギュアを導入することに成功しました。また、足元では、新たに展開を開始した「デジモン」のトレーディングカードゲームが好調に推移するなど、新しい動きが出てきています。
 バンダイナムコグループが引き続き成長するためには、海外事業の強化は必要不可欠です。そのための組織再編もグループとして進めています。2022年1月には中国において、デジタル事業を展開する会社とトイホビー事業を展開する会社を統合する予定です。また、同年4月には、北米で専門店流通向けにトイホビー事業を展開する会社と大手流通向けにトイホビー事業を展開する会社を統合します。こうした再編により、各地域における中長期的な事業の拡大を目指していきます。

DIGIMON CARD GAME BOOSTER BATTLE OF OMN[I BT05]
『DIGIMON CARD GAME BOOSTER BATTLE OF OMN[I BT05]』
©Akiyoshi Hongo, Toei Animation

下期以降の展望は?

竹中:下期からは「仮面ライダー」や「鬼滅の刃」の新番組がスタートします。さらに、2022年には劇場版「ドラゴンボール超」の最新作公開も予定されています。こうした他社I Pについて、版権元様との強力なパートナーシップのもと、良質な商品の企画・開発にますます注力していきます。また、「境界戦機」や「ガシャポンのデパート」「一番くじ公式ショップ」など、グループの他ユニットとの連携によるI Pの創出・育成や事業展開にも積極的に取り組み、グループ全体の業績に貢献していきたいと考えています。

仕事におけるポリシーは?

竹中:モノづくりの仕事に携わる者として、何よりもお客さまに喜んでいただく商品を生み出すことを大切にしています。お客さまに喜んでいただける商品は、社員のやる気につながり、結果として業績にもつながります。そのやる気が、さらにお客さまに楽しんでいただける商品の創出につながる。そうした良いサイクルを生み出せるよう、トイホビー事業一丸となって尽力してまいりますので、どうぞご期待ください。

※このインタビューは、2021年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2021年8月末現在の情報を記載しています。)