キーパーソンインタビュー

挑戦と創造を促進する体制を強化し、IP価値の最大化を目指す

株式会社バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長 宮河 恭夫

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
代表取締役社長 宮河 恭夫

1956年6月8日生
1981年4月
㈱バンダイ入社
1996年1月
㈱バンダイ・デジタル・エンタテインメント取締役
2004年4月
㈱サンライズ取締役
2014年4月
同社代表取締役社長
2018年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役IPクリエイションユニット担当
2019年4月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役ネットワークエンターテインメントユニット担当
㈱バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長(現職)
2021年4月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役エンターテインメントユニットデジタル事業担当(現職)

※2021年11月末現在の略歴を記載

エンターテインメントユニットでデジタル事業の事業統括会社を担う㈱バンダイナムコエンターテインメントは、ネットワークコンテンツと家庭用ゲームを事業の柱に、トイホビー事業とユニット内の融合・連携を深めながら、I P軸戦略の強化を推進しています。今回は、同社の宮河恭夫社長に、デジタル事業の動向やグループの強み、目指す姿などについて聞きました。

足元の状況を教えてください。

宮河:2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもりの影響もあり、家庭用ゲームのリピート販売が海外を中心に大きく伸長しました。2021年度上半期も好調に推移し、業績に貢献しています。ゲームタイトルのロングライフ化に向け、当社では、品質にこだわった良質なタイトル開発と、継続的なファンコミュニケーションに力を注いできました。これまでのそうしたこだわりがリピート販売の好調につながったことは、大きな収穫だと感じています。

昨今のゲーム市場で注目している変化は?

宮河:ゲーム市場は年々競争が激化しており、その中でユーザーに選ばれるためには、クオリティの高いタイトル開発がますます重要になっています。こうした点を踏まえ、引き続きしっかりと制作に取り組んでいきます。また、世界では「メタバース」と呼ばれるインターネット上の仮想3次元空間を活用したサービスに注目が集まっています。メタバースでは、自分の分身となるアバターを通じて、仮想空間内を行き来し、ユーザー同士が自らコミュニケーションを取り合い楽しむことができます。非常に自由度が高い空間で、これまでのゲームの延長線ではない新たなエンターテインメントの可能性を秘めていると感じています。こうした新しい分野においてもバンダイナムコらしさを発揮できるよう、準備を進めています。

市場におけるバンダイナムコの強みは?また、その強みをどのように生かしていきますか?

宮河:2021年4月のユニット再編でデジタル事業とトイホビー事業が1つのユニットになりましたが、ゲームというデジタルと、トイホビーというフィジカルの両面からI Pを展開できるのは、他の会社には見られないバンダイナムコならではの強みです。バンダイナムコのデジタル事業は、「パックマン」や「鉄拳」「アイドルマスター」など自社I Pの宝庫です。デジタル事業とトイホビー事業の2つの事業の連携や融合を進めることで、今まで以上にこうしたI Pの価値を向上させることができると考えています。
 また、我々の強みをさらに活かしていくためにはアイデアや技術を持った外部パートナーやクリエイターと積極的に連携することも必要です。オープンなバンダイナムコとして、社内外から知見を集め、I P価値の最大化に取り組みます。

環境変化に対応するために重視していることは?

宮河:何よりも「挑戦しよう」という姿勢です。バンダイナムコグループでは、挑戦して失敗したとしても、何度でもチャレンジすることができます。成功するためには、とにかく挑戦し続けることが不可欠なので、社員のチャレンジを支援するための仕組みづくりが重要です。成功する人は、必ず失敗もしています。失敗を恐れずに挑戦を続けるからこそ成功することができる。そうした観点から、人事評価は失敗したら減点するのではなく、あくまでも加点主義であるべきだと考えています。
  また、ゲーム開発は以前に比べて人的資本や開発コストを含めて格段に規模が大きくなりました。そのため、コンテンツを厳しく精査し、厳選したタイトルにリソースを集中させています。必然的に年間の発売タイトル数が絞られるため、個人として挑戦できるチャンスはどうしても少なくなります。個人の評価だけでなく、集団としてのチャレンジをいかに促し評価するか、そのための制度づくりが急務だと考えています。

販売好調なタイトルについて教えてください。

宮河:「テイルズ オブ」シリーズの最新作として2021年9月に発売した家庭用ゲーム『テイルズ オブ アライズ』の販売が好調です。以前は日本とアジアでの販売が中心でしたが、本作は欧米でも好調です。国や地域によってユーザーの嗜好が異なることを前提に、展開地域ごとにきめ細やかなマーケティングを行ったところ、各地で支持を得ることができました。欧米でのマーケティングの成功例を作れたことは非常に大きいと考えています。

家庭用ゲーム『テイルズ オブ アライズ』
家庭用ゲーム『テイルズ オブ アライズ』
Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

国や地域に合わせた施策で全世界のシェア拡大
社員が誇りを持って働くことができる会社に

世界での事業拡大に向けた取り組みは?

宮河:今やデジタル事業は、全世界がターゲットです。日本だけでなく、北米や欧州、中国をはじめとするアジアの各地域に現地法人を持つことも、バンダイナムコグループの大きな強みです。現地のことを最も良く理解している現地社員が中心となりマーケティング施策を立案することで、『テイルズ オブ アライズ』のようなファンに寄り添ったタイトル展開が可能になります。また、日本発のタイトル開発にとどまらず、それぞれの地域から世界に向けてゲームを開発し展開できるよう、体制のさらなる強化にも取り組みます。前年度に、家庭用ゲームタイトルの開発などを行うカナダの制作スタジオのReflector Entertainment Ltd.を子会社化したのも、その一環です。

2022年2月に発売される『ELDEN RING』も期待されています。

宮河:発売が迫り、制作は追い込み段階です。欧州最大規模のゲームイベント「gamescom 2021」で発表になった「gamescom award 2021」で、大賞となる「Best of gamescom」や「Best RPG」など、5冠を達成しました。世界中からの期待に応えられる良質なゲームに仕上がるよう、最後まで妥協せず制作に当たっていきます。

家庭用ゲーム『ELDEN RING』
家庭用ゲーム『ELDEN RING』
©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©2021 FromSoftware, Inc.

ネットワークコンテンツは?

宮河:データを活用したマーケティングに力を入れています。収集・分析したデータに基づき各タイトルを高いクオリティで開発し運営することで、「DRAGON BALL(ドラゴンボール)」や「ワンピース」「アイドルマスター」をはじめとするI Pタイトルのロングライフ化に成功しています。データに基づき的確に判断していくとともに、展開地域の拡大にも取り組み、ワールドワイドでさらなる成長を目指します。

新しい働き方の導入にも取り組んでいるそうですね。

宮河:テレワークを進める一方で、ABW※の導入も行い、半個室の1人用ブース席や4人掛けのボックス席、カフェのようなソファ席などを設置して、自由に雑談できるフロアをつくりました。社員が、仕事をしやすい席に各自移動し、より良い環境で働くことができます。  作業は自宅でもできますが、クリエイティブな発想は人同士が会って話をする中で生まれてきます。何かアイデアが欲しいと思った時はボックス席でお茶を飲みながら雑談してもいいし、1人で作業に集中したい時は1人用のブース席や自宅でやってもいい。ABWは、当社における今後の働き方を示すものです。こうした環境の中から、当社の次の時代を支える企画や発想が生まれてくることを期待しています。
※ABW:Activity Based Working。オフィスの内外を問わず、働く場所や時間を自由に選べる働き方

ABWの導入に伴い改装したフロアの様子
ABWの導入に伴い改装したフロアの様子

仕事におけるポリシーは?

宮河:仕事では、ゴールのイメージを持つことが重要です。人にただ「走ってきて」と言うだけでは、言われた方は短距離か長距離なのかもわからなければ、ペース配分もできません。だから「ゴールはここです」と 示す必要があります。そうすると、ゴールから段階的に逆算して、今いる場所からいつまでにここに到達しなければいけないと把握できます。あとはそれを一つずつ達成していけば、ゴールにたどり着くことができます。社員に対して、できるだけ具体的にゴールを示すことが私の役割です。全社員が成功に向かって誇りを持って働ける会社にできるよう、全力で取り組んでいきます。

※このインタビューは、2021年11月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2021年11月末現在の情報を記載しています。)