キーパーソンインタビュー

映像・音楽・ライブイベント事業の知見を集約し迅速な展開を可能に
IP軸戦略の要としてグループの強みを生かす

株式会社バンダイナムコフィルムワークス 代表取締役社長 浅沼 誠

株式会社バンダイナムコフィルムワークス
代表取締役社長 浅沼 誠

1963年4月23日生
1986年4月
㈱ネットワーク入社
2000年10月
バンダイネットワークス㈱入社
2009年4月
㈱バンダイナムコゲームス執行役員 NE事業本部副本部長
2010年10月
㈱バンダイナムコオンライン代表取締役社長
2015年4月
㈱バンダイナムコエンターテインメント常務取締役
2018年4月
㈱サンライズ専務取締役
2019年3月
SUNRISE(SHANGHAI)CO., LTD.董事長(現職)
2019年4月
㈱サンライズ代表取締役社長
2019年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役(非常勤)IPクリエイション ユニット担当
2022年4月
同社取締役IPプロデュースユニット担当(現職)
㈱バンダイナムコフィルムワークス代表取締役社長(現職)

※2022年9月末現在の略歴を記載

2022年4月、バンダイナムコグループはIPプロデュースユニットを再編し、ユニット内の会社統合を行いました。今回は、同ユニットの事業統括会社である㈱バンダイナムコフィルムワークスの浅沼誠社長に、ユニット再編の狙いや中期計画における戦略、今後の注目IPなどについて聞きました。

IPプロデュースユニット再編の目的を教えてください。

浅沼:バンダイナムコグループが展開するIP軸戦略において、IPプロデュースユニットは、映像事業、音楽事業、ライブイベント事業を通じて、IP軸戦略の核となるIPを創出・プロデュースする重要なミッションを担っています。
 このたびユニット内再編を行い、自社で映像制作スタジオを保有する㈱サンライズと、他社制作スタジオと連携した映像製作やパッケージの展開などを行う㈱バンダイナムコアーツの映像事業、そして映像配信ビジネスを行う㈱バンダイナムコライツマーケティングを統合し、㈱バンダイナムコフィルムワークスを設立しました。同時に、㈱バンダイナ ムコアーツの音楽事業と㈱サンライズミュージック、ライブイベント事業を展開する㈱バンダイナムコライブクリエイティブを統合し、㈱バンダイナムコミュージックライブを設立しました。
 近年、IPを取り巻く環境は大きく変化しています。変化に対応し、ユニットとして最大限に力を発揮するためには、今まで以上にユニット内の強い連携が必要になると考えました。再編により、各社が保有しているさまざまなノウハウや強み、外部パートナーとのネットワークなどを共有することが可能になりました。映像・音楽・ライブイベント事業が一体となってIPの創出・プロデュース力をさらに強化し、スピード感のある事業展開を目指していきます。

IPP再編の図

映像事業における市場環境をどう見ていますか?

浅沼:市場では技術革新が急速に進んでいます。インターネットでの動画配信サービスが普及し、4Kハイビジョンやドルビーアトモス※1など、高品質な映像・音響を家庭のテレビでも楽しめるようになりました。一方で、どれだけ技術が進化しても変わらないことがあります。映像を評価するのは受け手であるお客さまであり、お客さまに価値を見出していただける映像を製作することが何よりも重要であるということです。IPプロデュースユニットは、映像製作にあたりお客さまと真剣に向き合い、お客さまの期待の一歩先にある映像を創り上げることにとことんこだわります。これにより、私たちならではの価値を創出します。

※1 立体音響技術の一種

アニメ業界は、国内外から新規参入が増えています。

浅沼:アニメの持つ力が世界的に認知された結果だと思います。高品質で映像化されたアニメ作品が、幅広い商品・サービスに領域を拡大し、IPとしてヒットにつながるケースが増えてきています。IPの起点となるアニメを制作し、IPホルダーとしてビジネスを展開することは、企業にとって大きなアドバンテージになると言えます。
 中でも日本のアニメはグローバルで高い評価を得ています。世界各地で開催されるアニメイベントには大勢の人が来場し、会場内は熱気に満ちあふれています。そうした状況が国内外を問わず認知されるようになり、新規参入が増加していると考えられます。
 当ユニットには、アニメや音楽の製作、配信、パッケージやライブの展開、自社版権の活用など、作品を創出しお客さまに価値を提供するための多くの知見があります。さらに、グループの他ユニットと連携することで、多種多様な商品・サービスの展開も可能です。こうした強みを生かし、IP軸戦略におけるグループの要となれるよう、役割をしっかりと果たしていく所存です。

競争が激化する中での課題は?

浅沼:多くのアニメが続々と放送・公開される中で、当社のアニメを選んでいただくためには、いかに高い品質のアニメを製作できるかが重要です。そのためには、優秀なクリエイターの存在が欠かせません。しかしながら、業界としてクリエイター不足が深刻です。これは当社を含めて業界全体で、解決すべき課題だと考えています。
 当社では、クリエイター育成の一環として「サンライズ作画塾」「サンライズ美術塾」を開講しています。応募者の中から塾生を選抜し、奨励金を支給しながらアニメの作画または美術に関する実習を提供する制度です。現役のアニメーターや美術監督・スタッフが講師を務め、技能や知識の習得を目指しています。卒業試験に合格した塾生には、IPプロデュースユニット所属会社のスタッフとして働くことができる機会を提供しており、卒業生の中にはガンダムシリーズやラブライブ!シリーズなどの作品で活躍している人材もいます。質の高いアニメ作品を将来にわたり提供し続けるための業界の基盤づくりと、グループの将来のIP創出を支える人材の育成につながるよう、今後もこうした取り組みを積極的に行っていきます。

人材育成や業界の構造的な課題解決に取り組み
社員が高いモチベーションを持てる環境を整

音楽・ライブイベント事業については?

浅沼:新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、デジタルを活用した音楽・ライブの展開が拡大しています。当ユニットにおいても、XR※2技術を活用し、現実世界と仮想世界を融合した新しいライブの開催などに取り組んでいます。XRライブの展開はまだ始まったばかりですが、よりお客さまにお楽しみいただけるイベントにできるよう、工夫を重ねていきたいと思います。
 一方で、リアルなイベントには、デジタルでは表現しきれない熱量があることも事実です。今後の状況を見ながら、両者の良さを生かし、両軸でイベント展開の強化に取り組んでいきます。

※2 VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の技術総称

XRライブ
XRライブ
©xR ARTISTS SUPER FES 2022

今期の注目IP作品は?

浅沼:7年ぶりのテレビシリーズとなる『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が、いよいよ10月から放送となります。放送に先駆けてアニメ本編の前日譚「PROLOGUE」の上映を行い、高い評価をいただきました。グループ内の各事業と連携し、ガンプラをはじめとする多彩な商品・サービスを展開していきます。
 また、「週刊少年マガジン」に連載中の人気サッカー漫画『ブルーロック』や、「PUI PUI モルカー」の新シリーズ『PUI PUI モルカー DRIVINGSCHOOL』が10月から放送を開始するほか、11月には『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』が公開されます。これらの作品にも、ぜひご注目ください。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
©創通・サンライズ・MBS

仕事におけるポリシーは?

浅沼:IPプロデュースユニットは、約1,000人の社員が所属しています。環境が急速に変化する中で、現場の社員一人ひとりが何がベストなのかを考えて動くようにならなければ、会社の成長は望めません。社員が同じ方向を目指して邁進できるよう、経営戦略を構築するのが私の仕事です。社員たちが戦略をしっかりと理解し、高いパフォーマンスを発揮できるよう、経営者としての責任を果たしていきたいと考えています。
 また、私たちのビジネスはいくら時間をかけて企画を練り込んだとしても、作品として形にして世に出さなければ、お客さまに評価していただけません。社員には、失敗を恐れず、自分が本当に面白いと思ったことをスピード感を持って具現化してほしいと思います。そうすることで得た体験の蓄積が、自信につながるはずです。そして、仮に失敗したとしても非難するだけではなく、次はどうすれば成功できるのかを考え、全員で共有し合う社風があれば、社員は高いモチベーションを持って次の新しい挑戦に取り組むことができます。私自身、そのための環境づくりに全力を注いでいきます。

※このインタビューは、2022年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2022年9月末現在の情報を記載しています。)