キーパーソンインタビュー

世界中のファンとともにIPを盛り上げ高品質の商品・サービスを提供し続ける

株式会社BANDAI SPIRITS 代表取締役社長 宇田川 南欧

株式会社BANDAI SPIRITS
代表取締役社長 宇田川 南欧

1974年1月22日生
1994年4月
㈱バンダイ入社
2000年9月
バンダイネットワークス㈱転籍
2006年4月
同社コンテンツ事業部マネージャー
2009年4月
㈱バンダイナムコゲームス転籍
2010年4月
同社第2スタジオ2-4プロダクション ゼネラルマネージャー
2013年4月
同社第2ディビジョン ディビジョンマネージャー
2014年4月
同社執行役員 第2事業本部 副本部長
2015年4月
㈱バンダイナムコエンターテインメント取締役 NE事業部担当 兼 NE事業部長
2018年4月
同社常務取締役
㈱バンダイ取締役(非常勤)
2021年4月
㈱BANDAI SPIRITS代表取締役社長(現職)

※2022年11月末現在の略歴を記載

2021年4月、それまでバンダイナムコグループでデジタル分野の事業開拓に取り組んできた宇田川南欧が、トイホビー事業を展開する㈱BANDAI SPIRITSの社長に就任しました。今回は、I P軸戦略のもと、ハイターゲット層向けビジネスの強化と、エンターテインメントユニット内の連携強化を図る宇田川社長に、現在の国内外の状況や今後の展望などを聞きました。

社長に就任して1年半たちました。

宇田川:着任当初は、トイホビーとデジタルの事業サイクルの違いに少し驚きましたが、バンダイナムコの根幹となる、IPを軸に事業を展開してクオリティの高い商品・サービスをお客さまに提供するということは、共通だと感じています。

フィジカルとデジタルの融合についての手応えは?

宇田川:同じユニットに統合したことで、経営陣が事業や計数についてお互いの状況をより詳細に把握できるようになったことは大きいです。また、IPを軸にした連携がさらに深まっています。例えば、トイホビーとデジタルからI Pに関わる担当者が集まり、同じ戦略の下で議論し施策を実行することがサイクルとしてできるようになりました。
現場間でも、それまでは各社が商品の発売時期に点でフォーカスしていましたが、現在はI Pの動きや流れについて、中長期で考えられるようになっています。IP価値最大化に向けた連携による相乗効果が、さまざまな場面で生まれています。

IP軸戦略が機能していますね。

宇田川:10月の「New York Comic Con」では、バンダイナムコグループのブースの中に「DRAGON BALL」「ONE PIECE」などIP軸のコーナーを設置し、各事業で展開するブランドの商品やサービスを一堂に展示しました。来場者に楽しんでいただけるようフォトスポットの設置や、サンプル配布なども行い、IPファンに幅広いジャンルの商品・サービスに触れていただけたと思います。バンダイナムコがやりたかったことが、実現できていると感じました。

New York Comic Con
New York Comic Con

BANDAI SPIRITSの好調の要因はどこにありますか?

宇田川:背景には、特に海外のお客さまが日本のアニメに触れる機会が増えていることがあると思います。ここ数年、今まで以上に日本と海外のタイムラグがなく映像を配信できるようになっており、SNSなどを通じて多くの情報が拡散されるようになりました。また、海外のファンが、口コミで日本アニメの面白さを伝えてくれています。こうして日本のアニメへの注目度が高まっているところに、タイミング良く商品を提供できていることが、現在のハイターゲット市場の好調につながっていると感じています。

世界市場をターゲットにする中で注力していることは?

宇田川:スピード感に加えて、高品質な商品をしっかりとファンに提供し続けることが重要だと思います。例えばプラモデルは、従来の販路である専門店に加えて、現在は量販店にも並べられるようになり、商品に触れていただく機会が増えました。引き続き販路拡大に取り組みつつ、そこでご購入いただいたお客さまの期待を裏切らない、期待を超える商品を作り続けることが大切だと考え、取り組んでいます。

特に力を入れる地域は?

宇田川:グローバル展開の強化という中には、当然日本も含まれています。足元の日本市場をしっかりと固めつつ、海外では引き続き北米と中国本土を中心に、グローバル市場拡大に取り組んでいきます。

ガンプラの品薄対策は?

宇田川:多くのお客さまにしっかりと商品をお届けしたいという想いは、社員全員が持っています。現在、「バンダイホビーセンター」新工場建設に向けた準備を鋭意進めています。さらに、グループ内の関連拠点と連携して生産効率を高める取り組みを行っているほか、流通関係者の皆さまにもご協力いただき、適切な販売ができる体制づくりを進めています。今後も、さまざまな取り組みを継続していきます。

今後の商品ブランド戦略について聞かせてください。

宇田川:ブランドごとに大切にしていることはありますが、共通するのは独自性とそれぞれの価値を高め続けるということです。原材料高騰をはじめとして課題はたくさんありますが、お客さまにとって価値があるものを提供し続けていくことが、それぞれのブランドの成長にとって不可欠だと感じています。

社員一人ひとりの成長で会社を強くし世の中になくてはならない会社にしたい

注目のトピックス、商品は?

宇田川:まずはガンダムの新テレビシリーズ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ですね。放映開始に向けて、ガンダムシリーズとファンがつながる大型イベント『GUNDAM NEXT FUTURE』など各種イベントを、全国各地で開催しました。事前にファンの熱量や期待値を上げることができたと思います。

GUNDAM NEXTFUTURE
GUNDAM NEXT FUTURE

また、サステナビリティ関連では、ファンの皆さまのご協力により回収したガンプラのランナー(プラモデルの枠の部分)をリサイクルする「ガンプラリサイクルプロジェクト」を通じて、今年度は15トンの回収を目標にしています。ランナーの回収は、㈱バンダイナムコアミューズメントの施設や㈱バンダイロジパルの物流を活用し、グループ全体で取り組んでいます。プロジェクトの一環として「エコプラ」配布などを行うイベント『ガンダムRリサイクル作戦2022』は、今年、全国45カ所以上で開催し、多くの方にご参加いただいています。ファンとともに行うサステナブル活動というのは、バンダイナムコらしいですし、こうした活動を通してファンの皆さまとつながっていけることは、大変ありがたいです。

その他の注目は?

宇田川:大人向けコレクターズ商品を集めた大型イベント『TAMASHII NATION 2022』を、3年ぶりに一般来場者に向けて秋葉原で開催しました。初公開を含む全てのカテゴリーの商品をリアルイベントとしては過去最大規模で展示したほか、直営店「TAMASHII NATIONS STORE TOKYO」との連動や、オンライン配信も行い、多くのファンにアピールすることができました。 また、2023年に「TAMASHII NATIONS」ブランドが15周年を迎えることを記念して、ニューヨーク、東京、メキシコ、上海、パリを巡るワールドツアーの開催も決定しています。「TAMASHII NATIONS」の商品は、日本はもちろん世界中に多くのファンがいます。現地でアピールする絶好の機会になるものと大変期待しています。

GUNDAM NEXTFUTURE
TAMASHII NATIONS STORE TOKYO

世界中のファンとのつながりが強くなりますね。

宇田川:バンダイナムコグループは、中期ビジョンとして「Connect with Fans」を掲げています。これは、私自身にとっても最大のモチベーションです。私にはお客さまが喜ぶ姿が何よりの報酬ですし、社員もお客さまに喜んでいただけるからこそ頑張れるのだと思います。

ファンとのつながりに関して、他に具体的な取り組みは?

宇田川:最近は、IPや商品の情報発信面で、ファンとともに盛り上げているという感覚があり、今後メタバースがそれを後押しするプラットフォームの一つになるかもしれません。グループの「IPメタバース構想」を通して、世界中のファンと広く、深く、複雑につながることができるようにしていきたいですね。バンダイナムコとファンだけでなく、ファン同士でもつながり、ともにメタバースを作り上げていくというイメージを持っています。

仕事におけるポリシーは?

宇田川:私も含めた社員の一人ひとりの成長が、会社の成長につながると考えています。そのために、変化を恐れずチャレンジし、成長する過程でさまざまなノウハウや背景を持った人たちが切磋琢磨して、協働することによって個人も会社も強くなることを目指します。そして、BANDAI SPIRITSが多くの人にとって、なくてはならない会社にしていきたいですね。

※このインタビューは、2022年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2022年11月末現在の情報を記載しています。)