キーパーソンインタビュー

スピード感を持ってグローバル展開を推進し世界中のファンに商品・サービスを届けたい

株式会社BANDAI SPIRITS 代表取締役社長 榊原 博

株式会社BANDAI SPIRITS
代表取締役社長 榊原 博

1964年1月15日生
1988年4月
㈱バンダイ入社
2008年4月
同社執行役員アパレル事業部ゼネラルマネージャー
2016年4月
Bandai Namco Taiwan Co.,Ltd.代表取締役社長
2017年4月
㈱メガハウス代表取締役副社長
2019年4月
同社代表取締役社長
2021年4月
㈱BANDAI SPIRITS取締役
2023年4月
同社代表取締役社長(現職)

※2023年9月末現在の略歴を記載

2023年4月、㈱BANDAI SPIRITSでプラモデルやコレクターズフィギュア部門の指揮を執ってきた榊󠄀原博が社長に就任しました。今回は、IP軸戦略のもと、トイホビー事業の海外展開をけん引するBANDAI SPIRITSの現在の状況や今後の展望、今期の注目商品・サービスなどについて聞きました。

社長就任から約半年が過ぎました。今の感想を聞かせてください。

榊󠄀原:あっという間の半年でしたが、中長期での成長を見据えた取り組みが増え、さらにスピード感が増しているように感じます。今まで以上に会社が一体となり、またグループの力を活用してALL BANDAI NAMCOで世界中に商品を届けたいと考えています。10月には本社を移転し、東京・三田エリアのオフィスを統合します。分散していた拠点を一つにすることでこれまで以上の一体感が生まれることを期待しています。当社の全部門がワンフロアに集まるわけではありませんが、同じビルで仕事をすることによって、より相互理解が深まり、仕事をスムーズに進められると思っています。

社内の各部門が相互理解するために必要なことは?

榊󠄀原:会社が大きくなり、組織が縦割りになりつつありますが、各部門のビジョンや目指すべき方向性をできる限り合わせるように注力しています。バンダイナムコグループ全体では、「Fun for All into the Future」という「パーパス」(企業の社会的意義)のもと、私たちのエンターテインメントで世界中のファンとつながる未来をともに創造していくことを目指しており、「Connect with Fans」という中期ビジョンを掲げています。社内の各部門に対しても、それを具現化していこうということを伝えてきました。幸いにも当社の社員はモノづくりに対してものすごく真摯で、決して妥協しないプロ集団です。それがBANDAI SPIRITSの原点であり、強みだと自負しています。その意識を全員で共有し、理解し合って仕事を進めていけば、良い結果に結びつくはずです。

機動戦士ガンダム水星の魔女
「機動戦士ガンダム水星の魔女」プラモデル
「HG 1/144 ガンダムキャリバーン」

業績が好調ですが、その要因を聞かせてください。

榊󠄀原:映像配信などの視聴環境をはじめ、SNSなど、アニメやIPへのタッチポイントが進化し、ワールドワイドで広がっています。全世界で同時に映像配信を開始することも可能になり、コンテンツを取り巻く状況はここ数年で大きく変わりました。この変化が、ハイターゲット(大人)層向け事業好調の一つの要因です。またそれに伴い、映像配信から大きなタイムラグなくワールドワイドに商品を届けるためには、企画段階から生産、販売までの連携が非常に重要になっており、それができるようになってきたことも大きいです。

コロナ禍が収束に向かいつつありますが、変化はありますか?

榊󠄀原:コロナ禍によって屋内で過ごす時間が多くなり、コンテンツに触れる人が増えたことで、事業カテゴリーによる違いはあるものの、全体としてはトイホビー事業にとってプラスになりました。現在は、リアルイベントの開催や、実際の商品を見たいというお客さまの声が大きくなっており、リアルイベントの集客もかなり戻ってきています。今後は海外を含めて、リアルとデジタルを融合させたプロモーションやイベントが期待されています

バンダイナムコの優位性はどこにあると考えていますか?

榊󠄀原:IPを中心にグローバル展開を図るIP軸戦略です。グループ会社を含めた販社や代理店などのパートナーが世界各国にいて、コンテンツ展開と連動して商品を展開できることは、大きなアドバンテージになっていると感じます。また、トイホビー事業とデジタル事業のユニット統合で、ゲームIPとも連動できるようになりました。その中でも戦略IPに位置付けている「ガンダム」や「DRAGON BALL」「ONE PIECE」などは、昨年からその成果が出始めています。今後はそれらに「NARUTO」が加わることになるので、さらに勢いをつけていきたいと思います。

新規IPの取り込みや商品化も早いですね。

榊󠄀原:当社は新しいものへの感度が高い社員が多いので、役職や年齢にかかわらず社内で「これは売れる」「これは面白い」という声が上がったときは、できるだけ止めずに、まずはチャレンジしてみるということを大事にしています。それが、あらゆる場面でスピード感につながり、チャンスをつかみやすくします。その上でより良い商品やサービスをファンに届けようとする姿勢が、IPを大切に扱う会社として、版権元さまの信頼を得ることができているのではないかと思っています。

国内を伸ばしつつ引き続き海外成長を目指しトイホビー事業の海外展開のけん引役を担う

エンターテインメントユニットとトイホビー事業の中でBANDAI SPIRITSの役割は?

榊󠄀原:当社の商品は、トイホビー事業の中では海外での展開が比較的早く、アジアや北米をはじめとして先頭に立ってきました。今後のグローバル展開においても、各拠点と連動しながらトイホビー事業のけん引役を果たしたいと考えています。

海外でのイベントなどでもけん引役を務めることになりますか?

榊󠄀原:当社だけが前面に出るのではなく、商品の展示などに関しては㈱バンダイと協力しながら進めます。そこに㈱バンダイナムコエンターテインメントのゲームやIPプロデュースユニットの映像なども加わり、グループで連携を図りながらお客さまとのタッチポイントを増やします。一方で、ゲームがメインのイベントにも、トイホビー事業として参加する機会が増えていくかもしれません。関連商品の販売などでは、すでに一緒にプロモーションを展開するようになっているので、バンダイナムコエンターテインメントと協力しながら、戦略的に進めていきたいと考えています。

国内に関しては?

榊󠄀原:グローバル展開にはもちろん日本も含まれており、国内も成長させながら、さらに海外を伸ばしていくということです。引き続き国内にも注力しながら海外各社と連携し、全体でより大きいビジネスにつなげる。これは、当社だけでなくグループ全体で共有している方向性です。また、2024年度末までに、プラモデルの国内生産拠点である「バンダイホビーセンター」の新工場を稼働させる予定です。生産力の向上はもちろん、AIによる自動化など、新しい技術やシステムを導入し、地域との共生も意識した工場になる予定です。生産体制の強化に関する取り組みも進め、お客さまにしっかりと商品をお届けできるよう、引き続き注力していきます。

今期の注目IPや商品、サービスについて聞かせてください。

榊󠄀原:まず、「ガンダム」に関しては、10月にIPメタバースの「ガンプラコロニー」がテストオープンします。来年1月には劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が公開され、多方面での展開を継続します。また、コレクターズ事業のブランド「TAMASHII NATIONS」は、今年で15周年を迎え、現在「TAMASHII NATIONS WORLD TOUR」を開催中です。4月に開催したニューヨークを皮切りに、東京、メキシコシティ、上海、パリと、9月までに世界5都市を巡回します。そして、9月にはニューヨークのタイムズスクエアに「TAMASHII NATIONS STORE NEW YORK」をオープンし、ワールドワイドでTAMASHII NATIONSブランドの認知向上を図っていきます。

「TAMASHII NATIONS WORLD TOUR − TAMASHII NATIONS 15th ANNIVERSARY −」メキシコ会場
「TAMASHII NATIONS WORLD TOUR − TAMASHII NATIONS 15th ANNIVERSARY −」メキシコ会場

さらに、8月に映画が公開された「SAND LAND」は、超合金や「一番くじ」など当社の全事業部から商品が発売されます。今後の動向にもご注目いただきたいIPです。

GUNDAM NEXTFUTURE
「超合金 サンドランド国王軍戦車隊104号車」(左)
「一番くじ SAND LAND」 A賞 MASTERLISE ベルゼブブ(右)

仕事に対するポリシーは?

榊󠄀原:私たちは、お客さまに喜んでいただける商品をお届けすることが使命ですが、その前提として、まず社員自身が楽しんで仕事をすることが大切だと思っています。職種に関係なくどんな仕事であっても、どれだけ楽しみながら取り組めるかということが大事です。それが結果的に、より良いモノづくりやサービスにつながると考えています。私の夢は、世界中のマーケットにBANDAI SPIRITSの商品・サービスを提供することです。まだ展開できていないエリアを含め、世界中のファンに商品・サービスを届けられるよう、さらなる成長を目指していきます。

※このインタビューは、2023年9月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2023年8月末現在の情報を記載しています。)