キーパーソンインタビュー

メーカー兼オペレーターの強みを生かすため事業再編や制度変更などの改革に取り組む

株式会社バンダイナムコアミューズメント 代表取締役社長 川﨑 寛

株式会社バンダイナムコアミューズメント
代表取締役社長 川﨑 寛

1963年4月24日生
1987年4月
㈱バンダイ入社
2001年4月
同社イノベイティブトイ事業部執行役員ゼネラルマネージャー
2005年10月
㈱バンダイナムコホールディングス社長室 兼 経営企画部ゼネラルマネージャー
2007年4月
㈱ナムコ取締役
2015年4月
同社常務取締役
2018年4月
㈱バンダイナムコエンターテインメント取締役
2021年4月
㈱バンダイナムコホールディングス執行役員アミューズメントユニット担当
㈱バンダイナムコアミューズメント代表取締役社長(現職)
2021年6月
㈱バンダイナムコホールディングス取締役アミューズメントユニット担当(現職)
2023年4月
㈱バンダイナムコアミューズメントラボ代表取締役社長(現職)

※2023年11月末現在の略歴を記載

アミューズメント機器・施設の企画・開発・運営を行う㈱バンダイナムコアミューズメントは、グループ内での連携を軸として、ファンとつながるリアルな“場”の提供に取り組んでいます。今回は、同社社長である川﨑寛に、アミューズメントユニットの動向や、今後の展望などについて聞きました。

社長就任から2年半たちました。

川﨑:コロナ禍という厳しい状況の中での就任でしたが、我々だからできることに取り組み続け、コロナ禍が収束する頃には、遠方に遊びに行かなくても楽しく過ごせる近場のレジャーとしての役割を果たし、業績回復に向かうことができました。この2年半で、事業の再編やさまざまな制度の変更を行いました。当社は、2018年に㈱バンダイナムコエンターテインメントの機器開発販売部門と㈱ナムコ(施設運営事業会社)が統合して現在のバンダイナムコアミューズメントとなりました。統合当時私は別のグループ会社にいましたが、2021年に社長に就任した際、メーカー兼オペレーターという当社の強みを発揮し切れていないと感じました。また、グループのIP軸戦略の中で、当社がどの立ち位置にあるのかが定まっていないとも感じました。そこで、各事業の収益性や付加価値をもう一度整理し、10年後を想定した現中期計画を策定し、重点戦略に取り組んでいます。

業績への手応えと今後の課題を聞かせてください。

川﨑:社内の組織を変更し、6つの事業部それぞれが店舗の運営や機器の配置など、収益を考える事業部制にしました。その結果、顧客やファンが求めるもの、提供すべき価値が、企画を開発する側にダイレクトに伝わるようになりました。 機器開発については、「機動戦士ガンダムエクストリームバーサス2オーバーブースト」の販売が好調で業績に貢献していますが、一方でまだ課題があります。企画力や技術力をより磨く必要ももちろんありますが、今最も大事なことは新しいことに挑戦する心構えだと思っています。クリエイターの開発魂をさらに刺激することでもっと素晴らしい企画が生まれると思います。

バンダイナムコの優位性はどこにあると考えていますか?

川﨑:グループ各社が連携し、IPを軸にさまざまな出口でスピード感をもって展開することができる点です。IPの創出・育成・展開をグループで行う中で、唯一の顧客接点であるアミューズメントユニットがどのような使命を担っていくべきかを常に意識しています。 バンダイナムコアミューズメントでは、プライズや「一番くじ」、カプセルトイやカードなど、グループ会社の質の高い商品を扱うオフィシャルショップを展開しています。同時に「バンダイナムコCross Store」では、ファンとつながることができるリアルな“場”を提供することで、グループの価値向上にも貢献できると考えています。

グループ内でのアミューズメントユニットの役割は?

川﨑:リアルな顧客との接点や、そうした“場”の提供、ファンとのつながり、人的オペレーションだと考えています。商品展開や物流がデジタル化するほど、リアルの必要性は増します。感動を共有する場や五感で満足いただけるコンテンツ、地に足が着いた接客という我々ならではのリソ-スやノウハウを活用し、事業を推進していきます。 また、グループ内でリソースを提供するだけにとどまらず、版権元などのパートナー企業にとっても、バンダイナムコアミューズメントがあって良かったと言われるような価値を提供していきたいと思います。

8月にオープンした「Bandai Namco Cross Store Camden, London」

ガシャポンバンダイオフィシャルショップ

ファンマーケティングについて聞かせてください。

川﨑:IPファンに向けたサービス提供のためのデータ分析を行っており、リアルな顧客接点ならではの定性データは、アミューズメント施設から吸い上げることができています。数値化できないようなファンの熱量や、マス展開までに時間がかかるようなニッチなIPデータなども、今まで以上にグループ全体のマーケティングに生かしていきたいです。 また、店舗のファンを作ることも、施設運営を行っている会社として重要です。店舗に対するお客さまからの評価を、スタッフの評価基準とするなど、接客サービスの質向上に向けて常に研さんしています。

サービス業における人手不足や人件費高騰については?

川﨑:働き方や雇用の在り方が大きく変わっており、それに対する施策は必要です。現場で働く従業員が生き生きと働けるよう、今後さらに環境を整えていかなければならないでしょう。当社では、社員がキャリアプランだけではなくライフプランも描けるような会社にするため、給与体系の見直しをはじめ、正社員のうち店舗従事者を対象に、自身で選択したエリアの店舗で働くことで、自身や家族のライフプランに合わせた働き方ができる「ホームグラウンド制度」や、元正社員の再雇用をしやすくする「アルムナイ制度」を導入するなど、さまざまな制度の仕組みを大きく変えました。今後も改革を続けていきます。

リアルの“場”を通じてファンや顧客のために価値を提供していくことが私たちの使命

海外展開の状況と今後の展望について聞かせてください

川﨑:8月に、ロンドンに「Bandai Namco Cross Store Camden, London」をオープンし、大変好評です。現地法人のBandai Namco Amusement Europe Ltd.と、国内の海外事業部門の連携による大きな成果だと感じています。今後、「バンダイナムコ Cross Store」は、国内海外ともに出店していきます。イギリスでは、他にもカプセルトイのオフィシャルショップが好調で、現地の経営陣とスタッフ一同が、とても高いモチベーションで取り組んでいます。 中国内地では、9月に「太鼓の達人」のオンライン筐体が稼働を開始し、好調に推移しています。今後も現地のパートナー企業と協力し、地域のニーズに合った機器の販売を積極的に行っていきます。また、インドもポテンシャルの高い国であるという感触を得ており、今後も力を入れていきたいと思っています。

今後の注目の施設、タイトルについて聞かせてください

川﨑:11月に、アミュプラザ長崎と立川髙島屋S.C.に新店舗をオープンしたほか、「バンダイナムコ Cross Store 京都」をオープンしました。また12月には、「VS PARK イオンモールKYOTO店」をオープンする予定です。 機器の注目タイトルでは、アーケードゲームの「湾岸ミッドナイトマキシマムチューン6R R PLUS」を、2024年2月に稼働する予定で進めています。

「パーパス」(企業の社会的意義)についてどのように感じますか?

川﨑:「Fun for All into the Future」は、バンダイナムコグループに大変ふさわしい言葉だと感じています。アミューズメントユニットでは、収益だけでなく、グループへの貢献を常に意識しています。リアルの“場”を通じてファンや顧客のために価値を提供していくことが私たちの使命あり、この「パーパス」から決してぶれてはいけないと思います。

仕事に対するポリシーは?

川﨑:若い頃から、愚痴や弱音を吐かないという意味で、自分のノートの1ページ目に「Never Say Never」と書いてきました。また、経営者としては「公正」というスタンスを大事にしています。加えて、バンダイナムコエンターテインメント元社長の宮河恭夫さんから教えてもらた、サンテグジュペリの「船を造りたいのなら、男どもを森に集めたり、仕事を割り振って命令したりする必要はない。代わりに、彼らに広大で無限な海の存在を説けばいい」という格言は、経営者のあるべき指標として大事にしています。あまり細かいことを現場に言うより、みんなにはその先どういう世界が待っているかを伝えたいと思っています。

株主や投資家の皆さまへ

川﨑:アミューズメントユニットは、ファンや地域社会、従業員、グループがつながるリアルな“場”となり、「体験を通じて感動を共有する」リアルエンターテインメントの価値を世の中へ届け続けます。今後も、アミューズメントユニットの展開にご期待ください。

※このインタビューは、2023年12月発行のニュースレター「バンダイナムコニュース」の一部を再編集したものです。(2023年11月末現在の情報を記載しています。)