CFO/CISO’S MESSAGE

CFO/CISOメッセージ

浅古 有寿
株式会社バンダイナムコホールディングス
取締役 / チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)/ チーフインフォメーションセキュリティオフィサー(CISO)
健全な財務基盤を維持・確立し、
グループのさらなる成長を支えていきます。

中期計画初年度は順調なスタート

 2023年3月期は、売上高・利益が年初計画を上回るとともに売上高が過去最高を更新し、中期計画初年度として順調なスタートを切りました。デジタル事業では、「ELDENRING」などの既存タイトルのリピート販売、またトイホビー事業では、ハイターゲット(大人)層向け商品に加え、カード・菓子・カプセルトイなどの商材が好調に推移しました。セグメント別では、トイホビー事業、アミューズメント事業が過去最高業績を更新しました。
 なお、デジタル事業では、コロナ禍の影響で開発が遅れていた新作タイトルが、競合他社も含め今後数多くリリースされる見通しです。これに伴い、さらに競争が激化するであろう市場環境を踏まえ、デジタル事業においてよりクオリティの高いタイトル提供を目的に、開発状況やビジネスプランを改めて精査した結果、仕掛品の評価損などの計上を行いました。また、トイホビー事業においては在庫の評価損などを計上しました。

中期計画のもと戦略投資を推進

 “旬”の製品を数多く扱うエンターテインメント業界においては、適正な在庫水準の維持が不可欠です。今後も需要予測の精度向上に努めていきます。また、デジタル事業においては、開発期間の長期化に伴い投資額も増加傾向にあります。こうした状況を受けて、タイトルの開発段階における審査体制を強化しています。具体的には、企画の面白さやクオリティに加え、技術的な側面やビジネスモデルなど複合的な視点で審査を行い、より早い段階から企画の判断ができるような体制をとっています。
 また今中期計画では、各事業会社の通常投資とは別に、グループ横断の戦略投資枠を400億円に拡充しています。内訳は①IP価値最大化(新規IP創出、IPプロジェクト、オープンイノベーションなど)に250億円、②IPメタバース関連に150億円で、いずれも計画通りに実行しています。
①の新規IPに関しては、2023年夏より「SAND LAND」「SYNDUALITY」を展開しています。一方、既存IPでは「機動戦士ガンダム」や「DRAGON BALL」「ONE PIECE」のIPマーケティングを中心に引き続き注力しています。また、スタートアップ投資ファンドを組成し、2023年6月時点で9社に資本参加しています。
 ②のIPメタバースに関しては、メタバースのインフラ基盤となる「データユニバース」の開発を進めています。第1弾のガンダムメタバースにおいては2023年10月にテストオープンする予定です。

成長を志向する資本政策

 財務戦略の大原則は、人材の雇用維持に向けて1年分の人件費(約800~900億円)、また取引先も含めた安定的な事業運営のため1~1.5カ月分の運転資金(約1,000億円)や大型化するゲームコンテンツに関する開発費用を常時確保することです。そのほか、中期計画における戦略投資や、変化の早い業界において適切な投資をフレキシブルに実行するため、一定の手元資金を確保する必要があります。
 資本コストとの関連では、ROEや営業利益率といった指標を重視し、中期計画最終年度(2025年3月期)にROEを12%以上とする目標を掲げています。2023年3月期実績は14.6%で、この水準をすでにクリアしていますが、さらなる向上を目指すうえでは、分母の圧縮に頼らず、事業の成長による利益拡大によって高めていくことを目指しています。

 政策保有株式については、従来から定期的な見直しに取り組んできました。TSR(株主総利回り)などの指標をもとに、上場株式・非上場株式の保有意義を取締役会で毎期精査し、着実に削減を進める一方、IP軸戦略の推進に不可欠な株式については、保有を継続しています。
 株主還元においては、長期的な安定配当と資本コストを意識し、DOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標とする基本方針を採用しています。2023年3月期の年間配当金は、これに基づき1株当たり206円(ベース配当54円、業績連動配当152円)とさせていただき、DOEは7.3%、総還元性向は50.2%となりました。引き続き株価や手元資金の状況などを総合的に勘案し、配当のほか自社株買いも選択肢の1つとして検討していきます。

3本柱による情報セキュリティ対策

 2022年7月、アジア地域(日本を除く)のグループ会社が不正アクセスを受けた事態を、CISOとして重く受け止め、グループ全体で①標準化、②初動、③教育を柱とする情報セキュリティ対策に取り組んでいます。
 ①は、グループ各社のセキュリティレベルを一定水準以上に統一する取り組みです。②については、インシデント発生時に取るべき対応を分かりやすく整理し、様々な形で発信しています。また③に関しては、e-learningなどを活用し、従業員個々人のITリテラシーの底上げをはかっています。
 情報セキュリティを取り巻く環境は変化が激しく、その時々で注意すべきポイントも変わります。常に最新の情報を取り入れながら、セキュリティレベルの強化・向上に努めていきます。

より高い利益水準の安定的確保

 当社グループは2005年の経営統合時、「売上高1兆円、営業利益1,000億円」という長期目標を掲げました。2022年3月期の営業利益1,000億円達成に続き、2024年3月期は、売上高1兆円の目標達成も視界に入ってきました。引き続き、環境変化やヒットの有無に左右されず安定的に収益を確保できる基盤の強化を進めていきます。
 当社グループは中長期での持続的な成長を目指しています。IP軸戦略を通してより多くの人々とつながり、グローバルにより広いビジネスを展開していきます。財務・セキュリティなど様々な面から自由闊達にチャレンジできる環境を整え、企業価値の向上を通じて、株主の皆様のご負託に応えてまいります。

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