国内トップシェアのカプセルトイ事業「ガシャポン」
滝口:長く子どもたちに親しまれてきた、オリジナルのカプセルトイブランド「ガシャポン®」は、近年、ハイターゲット(大人)層向けの商品開発も進み、子どもから大人まで幅広い年齢層の支持を集めています。
前田:訪日外国人の間での認知度も高く、帰国前の手土産購入場所として、成田空港の旅客ターミナル内に設置されたカプセルトイは国内最大の売上を記録していると言われています。国内の市場規模も2023年3月期650億円(前年比44%増)、2024年3月期800億円(前年比23%増)*と急拡大し、1,000億円突破が間近に迫っています。
* 一般社団法人日本玩具協会「玩具市場規模データ」より
滝口:カプセルトイ市場に(株)バンダイが参入したのは1977年、今から半世紀近く前のことです。ハンドルを「ガシャ」と回すとプラスチック製カプセルが「ポン」と飛び出す様子から、自社のカプセルトイを「ガシャポン」と命名しました。多彩なIPと時代のトレンドをつかんだラインナップで数々のヒットを生み出し、自販機(筐体)の性能も年々進化させています。転機となったのは、高額な価格帯設定にもチャレンジし、価格に見合った「価値」の提供で勝負したことです。こうした取り組みにより、ガシャポン事業は国内市場で約6割のトップシェアを獲得するに至りました。
新たな市場を創造した「カプセルトイ専門店」
前田:カプセルトイ業界は活況を呈していますが、かつての市場規模は300億円近辺で推移し、2010年代後半になっても350億円前後の水準でした。状況を大きく変えたのは、相次ぎ「カプセルトイ専門店」が誕生したことです。
滝口:従来のカプセルトイ販売と言えば、空きスペースを活用するビジネスが中心でした。店舗の一角や施設内の共用通路に自販機を置くこの手法は、設置できる台数に自ずと限りがあります。熱心なファンが新商品発売のニュースを知っても、「どこに・いつ・どれだけ」入荷されるのか分かりませんでした。自販機を多数取り揃え、商品と関連情報を集約した常設のステーション=「専門店」の創設は、「そこに行けば、欲しい商品がきっとある」というファンの期待にお応えできます。単なる機会損失の防止ではなく、隠れた潜在需要の掘り起こしに貢献するとの考えから、(株)バンダイと(株)バンダイナムコアミューズメントの協業による専門店の拡大に踏み切りました。
前田:最初は、2020年8月の博多と横浜でのオープンを皮切りに、全国各地に「ガシャポンのデパート」を展開しました。店内のガシャポンコーナーには最新の人気商品が入荷し、来店前に店舗の品揃えを確認できるWEB在庫検索の仕組みも導入しました。撮影自由な「ガシャ撮りスポット」の設置、アプリを用いた来店時のポイント付与など、ファンの「ガシャ活(ガシャポン活動)」支援に向けた様々な取り組みも推進しています。
滝口:2021年9月には、新たに東京都内に「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ(GBO)」の1号店をオープンし、展開を開始しました。GBOはバンダイ商品のみを取り扱う本格的な専門店です。「ガシャポンのデパート」の特徴に加え、バンダイの新商品の網羅的な品揃え、同時期に立ち上げた「ガシャポンオンライン」との連携(店舗受け取りなど)、ファン参加型のイベント開催といった新機軸を打ち出しています。
前田:転機となった2020年は、ちょうどCOVID-19が日本経済を直撃した時期に当たります。都心や繫華街など好立地の施設でテナント撤退が相次いだことで、有利な条件での出店が可能になりました。2024年3月末現在、「ガシャポンのデパート」の店舗数は101店、GBOは211店*です。4年弱で計312店舗を展開するハイペースの出店が、新たな市場を切り開き、業界全体を盛り上げました。
* 2024年3月末現在。GBOとガシャポンのデパートの併設店はGBOとしてカウントしています。
日本・アジア・北米、世界3極の成長戦略
前田:現状として、日本国内での有望な立地への出店は一巡しつつあり、今後はより戦略的なアプローチが求められます。国内出店の伸びはいずれ緩やかになり、競争激化の時代を迎えるはずです。こうした環境変化を見据え、当社グループは国内・アジア・北米3極+欧州の成長戦略を推進しています。
国内:グループ間連携で差別化を追求
滝口:国内では圧倒的シェアを強みに、GBOを軸とした差別化を追求していきます。その際、鍵を握るのがグループ間連携です。現在すでに、ライフスタイル事業の入浴剤や化粧品など、もともとガシャポンのアイテムとして開発された商品以外のものをラインナップに追加するなど、ブランド横断の拡販施策を積極的に実施しています。
前田:グループ各社の商品・イベントを集結した体験型リテール施設「バンダイナムコ Cross Store」に「ガシャポン」の店舗を設置したことも、こうした取り組みの一環です。
アジア:国内市場のノウハウを水平展開
滝口:日本アニメの人気がかねてから根強いアジアでは、アニメファンを中心に、お目当てのIP商品を気軽に入手できる喜びが支持を集めています。地理的・文化的な近さもあり、国内市場のノウハウを水平展開するアプローチがここでは有効です。中国内地やマレーシア、フィリピンなどに現在GBOを23店舗展開しています。さらにグローバル供給体制の確立に向け、中国内地やフィリピン、タイでの自販機製造を強化していく方針です。
北米:着実なプロモーションで巨大市場にアプローチ
滝口:重点地域の北米には、現在GBOを16店舗展開しています。店舗当たり売上が国内を上回るなど、市場のポテンシャルは非常に大きいものがあります。国土の広いエリアだけに、集客力のある立地を厳選し、まずは50店舗を目標に店舗網を拡大していきます。一方、一般消費者の認知度はまだ低いことから、自販機ハンドルの操作法など遊び方の紹介動画の制作や、SNSやインフルエンサーを活用したマーケティングといった、きめ細かいプロモーションを展開していきます。さらに、ここで獲得した知見を欧州地域にも展開していきます。
前田:欧州についてもイギリス・ロンドンを中心に8店舗展開しており、今後も拡大予定です。
「ガシャポン」を世界の共通語に
滝口:海外にも類似の業態は存在するものの、まだ自販機の性能も低く、カプセルトイという文化は根付いていないため、遊び方の認知度もまだまだ低い状況です。だからこそ、他社に先駆けたグローバル展開を行い、ブランディングをスタートできるチャンスでもあります。各国でカプセル入り玩具がすべて「ガシャポン」と総称されるような、「世界の共通語」化を目指していきます。
時代とともにガシャポンの形も進化を続けていますが、ハンドルを「ガシャ」と回す遊び心、クオリティの高い商品が自販機から「ポン」と出てくる面白さは普遍です。日本発の「回す」エンターテインメント「ガシャポン」の普及に向け、グループ一丸で取り組みを加速していきます。