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ALL BANDAI NAMCOでのグローバル事業拡大 桃井 信彦 株式会社バンダイナムコホールディングス 取締役 グループ事業戦略本部長

グループ事業戦略本部のミッションは横断的課題解決

 バンダイナムコグループは各ユニット、各事業、各社が自主独立の精神のもと、それぞれの個性を発揮した事業を展開していますが、ユニット間や事業間、地域間などの連動・連携を深めるための課題や、その間に存在する課題などに横断的な視点で関与し、改善や解決へと導くことが私たち本部のミッションです。グループ事業戦略本部の新設からの2年間で、グループ間に存在する多くの課題に向き合ってきました。今後のグローバル展開の加速には、事業会社が生き生きと活動できるような環境づくりが不可欠であり、グループ全体の成長の伸びしろにつながるはずです。長期目標である海外売上高比率50%の実現のために、ALL BANDAI NAMCOでの総合力発揮に向け、グループ内に散らばる課題を取りこぼしなく拾い上げ、グローバル展開の後押しに貢献していきたいと思います。

2024年3月期(実績)海外売上高比率 27.8% 長期目標海外売上高比率 50%

人材育成への取り組み

桃井 信彦 基盤として最も重要なテーマと捉えている活動の1つに、「0から1」を生み出すプロデューサー人材の育成があります。育成にあたって活用しているのが、「バンダイナムココンテンツファンド(BNCF)」です。BNCFは、IPを生み出す映像作品などのコンテンツに対し、グループとして積極的な投資およびプロデュースを、長期的かつ全体最適の視点で行うことを目的に2018年に設立しました。BNCFは、これまで映像作品が中心となっていましたが、私は例えばトイやゲームなどをIPととらえ、映像以外にも幅を広げる形へと方針を変更しました。さらにこれまで応募型で作品を募集していましたが、独創性や尖鋭性を持つ人材をグループ全体から探し出し、作品への投資をしながら支援することで育成につなげています。こうして支援した人材が、所属先に戻ってから周囲に良い影響を与え、新たな育成候補人材が生まれるという循環ができると、全体的な人材の底上げにつながると考えています。
 また、育成という観点では、グローバル事業の拡大に直結するグローバル経営人材の育成も重要なテーマです。現在、当社では日本から派遣された人材と現地の経営人材が協調して事業運営を行っています。日本の文化輸出というテーマの理解度を含め、現地人材は着実に成長しています。今後は、成長した現地人材がこれまで以上に経営の中心を担い、日本からの若手社員を育成し、現地だけで業務を推進するサイクルを確立することで、さらなる発展を目指していきます。このような相互育成の循環が生まれることで、組織全体のスキル向上と持続的な成長が期待できます。

データユニバース構想の進捗

 従前から進行していたグループ全体視点の統一的なプラットフォームである、データユニバース構想については、システムそのものの基盤構築がほぼ完了しました。今後は、いかに活用し、事業面に好影響を与えていくかが重要となります。
 まずは、版権元様からの許諾を受けて商品・サービスを展開するライセンシーとしては、様々な交渉や協議の場において、ファンの年齢層や購入する商品の種類、購入商品の活用などデータ分析を活用することで、IPやファンに対する私たちの理解度の高さを示し、強い信頼関係を築いていきたいと思います。私たちには、多様な幅広い事業領域を活用した出口戦略があり、出口ごとにファンの行動・嗜好をデータとして集約、掛け合わせた分析力は、IP軸戦略を推進するうえで大きな強みとなります。一方で、自社IPに対しても様々な角度からデータ分析が可能であり、ライセンスアウトする際の開発、販売、地域展開などあらゆるマーケティング情報として活用していきます。こうしたデータ分析の活用は、グループ内における商品企画やマーケティングにおける向上も実現できるはずであり、次期中期計画に向けて有効性を検証したいと考えています。
 中長期的な観点で考えると、グループ内に分散する様々なデータを集約し、分析することで未来予測もある程度可能になります。次期中期計画ではより有効にこれらデータを活用することを目指していますが、それぞれの事業で集計データのカテゴリー分類に違いがあるため、今後はグループ全体で共通化したマスターデータの確立が課題です。これには、中長期での取り組みが必要だと見込んでいますが、全体最適の観点で各ユニット・各事業の利害を調整しながら、実現したいと考えています。

国内外で境目なく、横断的な活動を通じて、グループの成長に貢献

 私にとって、海外と国内での課題解決に境目は存在しません。グループ横断での取り組みは、おのずとグローバル事業拡大に直結し、大きな影響を及ぼすはずです。私は、高い頻度で国内と海外を行き来しており、海外現地グループ会社の経営層と密に交流し、国内と海外、海外地域間のつながりを深める努力をしています。現中期計画の重点地域は、北米と中国ですが、将来的に成長余地の大きさで個人的に最も期待している地域は、メキシコをはじめとした中南米地域です。こうした地域での事業拡大には、育成による現地経営人材が成長し、主導的に事業を推進する体制を構築、現地経済圏で自社の位置付けを理解しながら戦略を効果的に展開することで、持続可能な成長が可能だと考えています。

 最後にグループ事業戦略本部として、2025年度の大きなテーマは、大阪で開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)でのパビリオン出展です。本パビリオンは「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の名称で、ガンダムと人類が共存する「次なる未来」を見据えることをテーマとしています。このパビリオンやガンダムというIPを通じて、子どもたちが宇宙や科学に興味・関心を持つきっかけとなることが最大の目的です。運営は色々と苦労もありますが、ぜひ成功に導きたいと思っています。このように、ALL BANDAI NAMCOでグループ全体を巻き込みながら、様々な課題を解決していくことを使命と捉え、全力を尽くしていきます。

「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」のジオラマ
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