㈱バンダイナムコホールディングスは、2025年3月期(2024年度)の業績と今後の見通しについて発表しました。今回は、業績や各事業の動向などについてバンダイナムコホールディングス 代表取締役社長の浅古有寿に聞きました。
2024年度の業績を発表しました
2024年度の業績は、売上高1兆2,415億円、営業利益1,802億円、経常利益1,864億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,293億円となりました。グループ全体では、すべての事業において予算を達成し、前期比においても増収増益となり、中期計画最終年度を過去最高業績という非常に良い形で締めくくることができました。
前中期計画3年間(2022-2024年度)の平均営業利益は1,291億円となり、前々中期計画(2018-2020年度)の平均営業利益824億円との比較でも、大幅にベースアップをはかることができました。今中期計画(2025-2027年度)においても、環境の変化やヒットの有無に左右されづらい収益基盤を厚く、強くすることを目指します。
事業別にみると、デジタル事業の家庭用ゲームでは「ELDEN RING」本編やその大型ダウンロードコンテンツ「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」の販売、新作タイトル「ドラゴンボール Sparking!ZERO」がワールドワイドで大ヒットしました。トイホビー事業ではトレーディングカードゲーム(以下、TCG)やガンプラなどのハイターゲット(大人)層向けの商品など、利益率の高い商品・サービスのヒット等により業績が大きく伸長しました。また、ガンダムシリーズの劇場作品「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」などがヒットしたIPプロデュース事業、バンダイナムコならではの施設「バンダイナムコCross Store」が好調だったアミューズメント事業も好調に推移しました。

2024年度の株主還元について教えてください
2024年度の株主還元については、2025年度からの新たな株主還元方針のもと、年間配当金は、安定配当と業績連動配当をあわせて合計71円とさせていただきます。配当金と、第4四半期に実施した自己株式取得をあわせると、総還元性向は62.7%となります。2025年度の株主還元については、新たな方針にのっとり、改めて検討します。
2025年度業績予想については?
2025年度は、売上高1兆2,000億円、営業利益1,450億円を見込んでいます。
バンダイナムコは、中期計画ごとに、安定した収益基盤を、厚く、強くすることを目指していますが、今中期計画の1年目となる2025年度は、前中期計画の平均営業利益の110%以上となる営業利益1,450億円を目指します。米国の関税見直しにより、主にトイホビー事業においてコスト増加などが想定されます。現時点では不透明な要素が多く合理的に見積もることができないため、業績予想には影響額を織り込んでいません。今後の動向などを見ながら、必要に応じて影響額を数値に反映したいと思います。
各事業の市場動向と
新たな展開に向けた成長戦略
事業別の2025年度の動向を教えてください。
トイホビー事業は?
2025年度のトイホビー事業は、引き続き、IP※、カテゴリー、地域をかけあわせ過去最高業績更新を目指します。TCGの世界各国での大型大会の開催、ガンプラ45周年などに伴い積極的なプロモーションを行うとともに、グローバル需要に対応するための生産設備増強のための投資も実施します。
ワールドワイドで規模が大きく、デジタルゲームとの親和性も高いTCG市場では、定番商品化を目指し、定期的な新商品と既存商品の販売に加え、大型のゲーム大会、店頭でのイベントやティーチングを継続することで、既存ファンの定着と新規ファン獲得を図ります。まもなく3周年を迎える「ONE PIECEカードゲーム」では、フランス語版の販売も始まりました。7月には「GUNDAM CARD GAME」を3言語で54の国と地域に向けて同時発売する予定です。このTCGは、海外のプレイヤーも強く意識した遊び方になっており、ファンや流通からも高い期待を集めています。また、ガンプラのミニチュアゲーム「GUNDAM ASSEMBLE」とのコラボによって、没入感をアップする取り組みも行います。
45周年を迎えるガンダムは、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」(以下、ジークアクス)の商品展開に加え、記念イベントの開催、ブランドや作る楽しさそのものを訴求するプロモーションを実施しています。海外では、先日、ニューヨークのタイムズスクエアの広告をジャックし、本作と商品を北米ファンにアピールしました。また、ガンプラ新工場については、現在本格稼働に向けた準備を着々と進めていますのでご期待ください。このほか、グローバル拡大にあたっては、日本発IPやカテゴリーだけでなく現地発のIP展開にも取り組んでいます。
※Intellectual Property、キャラクターなどの知的財産

2025年3月29日、ニューヨークのタイムズスクエアはガンダム一色に
大勢のファンで賑わった

新規ファン層も獲得した「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」のガンプラ
「HG 1/144 GQuuuuuuX」
©創通・サンライズ
デジタル事業はいかがでしょうか?
2025年度は家庭用ゲームのワールドワイドタイトルが複数大ヒットした2024年度とのタイトルラインナップの違いが大きく影響する見込みです。一方、ネットワークコンテンツについては、前年度好調だった主力アプリタイトルと「学園アイドルマスター」に加え、新規タイトルにも期待しています。
現時点で公表可能な2025年度の家庭用ゲームのワールドワイドタイトルとしては、㈱フロム・ソフトウェアとの協業タイトルで、多人数での協力型サバイバルアクションゲーム「ELDEN RING NIGHTREIGN」、欧州開発タイトルの「リトルナイトメア3」などを発売予定です。いずれも、海外を中心に継続的に展開していくタイトルとして販売していきます。また、新プラットフォームはチャンスととらえ、Nintendo Switch 2にも、ELDEN RINGやたまごっちなどのタイトルを発売します。リピートタイトルについては、引き続き、ダウンロードコンテンツや継続的なファンコミュニケーションで売り伸ばしをはかります。
ネットワークコンテンツでは、4月にサービスを開始した「SDガンダム ジージェネレーション エターナル」がユーザー評価も高く好調な出足です。今後もガンダムシリーズの展開と合わせた連動イベントなども実施し、デジタル分野においてもガンダムタイトルを柱とするべく育成していきます。また、2025年に「DRAGON BALL PROJECT:Multi」もリリースします。
このほか、デジタル事業発のオリジナルIPでは、「パックマン」が45周年、「アイドルマスター」が20周年、「アイドリッシュセブン」が10周年を迎えます。グループでの商品化、他企業とのコラボなどを積極的に行い、IP価値拡大を目指します。

家庭用ゲーム
「ELDEN RING NIGHTREIGN」
2025年5月30日発売
©Bandai Namco Entertainment Inc.©2025 FromSoftware, Inc.

ネットワークコンテンツ
「SDガンダム ジージェネレーション エターナル」
好調なスタート
©創通・サンライズ
映像音楽事業※はいかがでしょうか
映像音楽事業では、2025年度も新たなファンへのアプローチ、オリジナルIPの創出など、さまざまな映像音楽コンテンツを提供するほか、ライセンスビジネスやライブ関連ビジネスを強化します。
主力のガンダムシリーズでは、スタジオカラーとの協業作品「ジークアクス」のTVアニメ放送が始まり、大きな話題となっています。国内で、TVアニメ放送に先駆け今年の1月から公開された劇場先行版「機動戦士GundamGQuuuuuuX -Beginning-」は、注力地域でもある北米や中国でも公開されています。現在制作中の実写版ガンダムの劇場作品公開に向けて、中期的に各事業と連携しながら、ワールドワイドでのガンダムの認知を広げ深めていきます。大阪・関西万博の「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」も、おかげさまで人気が高く、さまざまな地域のさまざまな世代の方に、ガンダムの世界観に触れていただける良い機会になっていると感じています。
ガンダムシリーズ以外にも、アニメと実写の両軸で展開する「九龍ジェネリックロマンス」など多彩な作品を提供します。また、「前橋ウィッチーズ」は映像、音楽ともバンダイナムコが手掛ける期待のオリジナル作品です。映像、音楽、ライブ、地域を絡めて盛り上げていきます。
映像音楽事業の一番のミッションは良質な作品づくりですが、今後は創出したIPの価値最大化のためのライセンスビジネスも強化します。4月より事業内のライセンス部門の組織を集約し、IPの世界観をしっかり保持したライセンス展開を行います。効率化とスピードアップも追求し、変化やチャンスにスピーディに対応していきます。
※旧IPプロデュース事業

スタジオカラーとの協業作品
「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」
©創通・サンライズ

期待のオリジナル作品
「前橋ウィッチーズ」
©PROJECT MBW

アニメと実写の両軸で展開する
「九龍ジェネリックロマンス」
© 眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会© 眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
アミューズメント事業については?
2025年度はアミューズメント事業の組織再編を完了し、4月から新体制でスタートしました。施設と機器の企画を行うバンダイナムコエクスペリエンス、施設運営を行うバンダイナムコアミューズメント、機器の開発などを行うバンダイナムコアミューズメントラボの3社が、それぞれの機能を強化し、役割に特化した人材を育成します。
アミューズメント施設は、ファンとIPや商品のタッチポイントとして、重要な存在です。それに加えて、ファンの反応をグループにフィードバックする機能も果たしています。また、「バンダイナムコCross Store」やアクティビティ施設、ガシャポン専門店などは、バンダイナムコならではの企画として、集客面への期待から、ショッピングセンターなどから多くの引き合いをいただいています。今後も差別化された施設を国内外で出店していきます。
業務用ゲーム機では、新たな戦略製品や人気シリーズのバージョンアップ「機動戦士ガンダム EXVS2 INFINITE BOOST」の稼働などを予定しています。3月からは新製品の「アイドルマスター TOURS」が稼働を開始し好評です。アイマスの原点は業務用ゲーム機です。アミューズメント事業でもしっかりファンをとりこみ、グループ内にも循環させていきたいと思います。

「バンダイナムコ Cross Store」を国内外で展開
上:アメリカ・ブルックリン
下:イギリス・バーミンガム
PAC-MAN™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.©SOTSU•SUNRISE

2025年3月から稼働を開始した「アイドルマスターTOURS」
©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™&©Bandai Namco Entertainment Inc.©Bandai Namco Experience Inc.
360投資によるIP価値最大化と
グローバル戦略の推進
中期計画の柱の一つでもある360投資について、具体的な進捗はありましたか?
360度全方位であらゆるステークホルダーとConnectするための戦略投資である360投資の第1号案件のアナウンスをしました。ソニーグループ㈱、㈱バンダイナムコホールディングス、㈱Gaudiyの3社は、エンターテインメントとテクノロジー領域における戦略的パートナーシップを開始し、この協業の推進にあたり、バンダイナムコもGaudiyに出資をさせていただきました。
本パートナーシップでは、グローバルでの事業展開、IP創出などさまざまなテーマで取り組みを行います。私たちが中期計画でさらなる強化を目指すグローバル展開という観点では、Gaudiyのグループ会社が運営し、99%が海外ユーザーである日本アニメ・漫画のコミュニティサイト「MyAnimeList」を、3社の連携によって、より良いサービスに成長させていきます。そして、より多くの世界中のIPファンと広く、深くつながり、その嗜好や熱量を分析し、事業に反映させていきたいと考えています。今後もさまざまな才能を持つ外部パートナーや外部クリエイターとつながり、WinWinな関係で協業・連携していきたいと思います。
最後に、読者にメッセージをお願いします
バンダイナムコグループは、お陰さまで、IP軸戦略を掲げて以来順調に業績が推移しています。今後中長期でグローバルに拡大していくことを目指す中、今このタイミングで、成長を支えるためのより強固な基盤をつくることが必要です。私の社長としての一番の役割は、強固な基盤をつくり、社員が安心して仕事に取り組め、事業のフロントが自由闊達にチャレンジできる環境を整えることです。先日国内グループ会社の退職金制度の統一についてお知らせしましたが、これも、グループ間の人材交流などを、より活発かつスムーズにするための取り組みです。このようなグループ全体のベース整備やレギュレーション統一は今後も進めていきたいと思います。
これからも、社員が笑顔で働き、商品・サービスを通じ世界中のファンと笑顔でつながり、社員とその家族が誇りに思えるバンダイナムコをつくっていけるよう、力を尽くしたいと思います。株主の皆さまにおかれましては、引き続きご支援いただけますようよろしくお願いいたします。