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PRESIDENT’S MESSAGE

社長メッセージ

川口 勝
株式会社バンダイナムコホールディングス 代表取締役社長 / グループCEO
次のステージを目指し、ユニークな発想とスピード
挑戦し続けていきます。

売上高は4期連続で過去最高を更新、1兆円の大台を突破

川口 勝

 2024年3月期(以下、当期)は、「機動戦士ガンダム」「DRAGON BALL」「ONE PIECE」といった定番IPを軸に、ワールドワイドでALL BANDAI NAMCOでの取り組みを推進してくれた従業員の頑張りにより、売上高は、1兆502億円と4期連続で過去最高を更新し、1兆円の大台に達しました。振り返れば2005年の経営統合によるグループ発足時に掲げた長期目標が「売上高1兆円、営業利益1,000億円」でした。当時の実績値の2倍以上に当たる売上高目標を、約20年越しに達成できたことに感慨深い思いです。
 一方、一足早く1,000億円を超えた営業利益は、当期906億円と減益となりました。これはデジタル事業で、新作オンラインゲーム関連の評価損や次期中期計画を見据えたタイトル編成見直しによる処分損を計上したことなどによるものです。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、政策保有株式の売却に伴う特別利益の計上により、初めて1,000億円を突破しました。

 事業別では、トイホビー事業とアミューズメント事業が引き続き過去最高業績を更新しました。特にトイホビー事業は、ハイターゲット(大人)層向け商品をはじめ、カード、カプセルトイ、菓子など幅広いカテゴリーが業績に貢献しました。アミューズメント事業は、業務用ゲームの人気シリーズや、グループの商品・サービスと連動した施設が国内外で好調に推移しました。IPプロデュース事業は、ガンダムシリーズの複数の映像作品の公開がグループの商品・サービスに波及したほか、ライブイベントも好調でした。一方、デジタル事業は、大幅な減益となりました。先ほど触れた評価損等の計上などによるものですが、すでにタイトル審査体制のさらなる強化などにスピーディに手を打っており、中長期での成長を目指し立て直しをはかります。

今中期計画(2022年4月~2025年3月)の進捗状況

 進行中の2025年3月期は、今中期計画の最終年度です。期初の業績予想は中期計画スタート時の目標をやや下回っていますが、売上高・営業利益とも、あと一歩で当初目標に手が届く水準です。
 また、環境変化の激しい市場において、将来に向けた投資を実行しつつ安定した収益を確保できる基盤を着実に厚くしています。過去からの中期計画期間中の年間平均営業利益を比較すると、前々回626億円、前回824億円、今回1,073億円(予想を含む)と、順調にステップアップしています。これは、IP軸戦略のもと、市場の変化に応じて業績の牽引役が入れ替わり、相互に補完し合う幅広い事業ポートフォリオの強みによるものです。この安定基盤をさらに厚くするとともに、新たな挑戦を続けていきます。
 次に、IP軸戦略の観点から、中期計画の進捗状況を整理します。

IP×Fan(IPでファンとつながる)
IP×Value(IPの価値を磨く)

 今中期計画では、データユニバース構想や新規IP創出などのIP価値最大化に向け、累計400億円の戦略投資を推進しています。
 データユニバースとは、従来、事業領域ごとに分散していた顧客(ファン)データを、グループ共通IDで一元管理するものです。質・量ともに当社グループならではのデータベースであり、大きな武器になっていくはずです。次期中期計画では、このデータユニバースを活用した、具体的な施策を推進していきます。

グループ連結営業利益の推移

 IP価値最大化の取り組みの成果のひとつに、グループ横断IPプロジェクトが挙げられます。これは、IPを軸にした横断プロジェクトで、意思決定の権限も付与しています。中長期の視点でIP価値最大化を最優先することで近年の業績向上に大きく寄与しています。例えば、定番IPのガンダムシリーズの売上高は、プロジェクトのもと事業間連携とグローバル展開を強化したことで、2022年3月期の1,017億円から、当期1,457億円に拡大しています。新規IP創出については、今後も映像や商品・サービス発、グループのプロジェクト発、外部パートナーとの協業発などあらゆる方向から取り組み続けます。また、自社IPと他社IP、定番IPと新規IPによるIPポートフォリオをより強固なものとしていきます。

IP×World(IPで世界とつながる)

 動画配信の普及などにより、日本発IPの人気が世界的に高まり、全世界でタイムラグなく事業推進できる環境が整ってきました。すでにデジタル事業ではワールドワイドを視野に入れた企画開発とマーケティングを行っていますが、トイホビー事業においても、全世界の需要に対応すべく生産体制の強化やECを含めた流通網の整備に取り組んでいます。地域別では、海外展開の拡大が重要な戦略となりますが、少子高齢化が進む国内においても早くからターゲットや商品カテゴリーの拡大に舵を切った当社グループでは、まだ伸びる余地は十分にあると考えています。国内でIPや商品・サービスのラインナップを拡充します。また、海外においては各地域で事業間連携を深めつつ、それらをスピーディに展開するというビジネスモデルの構築を目指します。
 今中期計画において、海外事業は順調に推移しているものの、国内も大きく伸びたこと、またもともと海外の比重が高いデジタル事業が足踏みしたことから、現地子会社ベースの海外売上高比率は当期27.8%となりました。これに対し、仕向け地ベースの海外売上高比率は、すでに40.5%に達しており、今後この数値をできるだけ早期に50%へ引き上げる方針です。

組織・人材戦略:従業員が生き生きと働ける環境整備を推進

 当社グループは、多彩なエンターテインメントを創出するため、様々な独自性を持つ会社と、多彩な才能、個性、価値観などを持つ人材が生き生きと働くことができる「同魂異才」の集団でありたいと考えています。そのためにも最も重要な財産である人材が個性を発揮し、心身ともに健康で働くことができる環境づくりに注力しています。組織再編や、海外の各地域における拠点の統一、さらには地域や事業を横断した人材交流の活性化、チャレンジを推奨する制度や風土の醸成により、様々なプロジェクトやチャレンジが自然発生的に現場から生まれています。
 従業員の士気の高さは、当社グループの大きな特徴です。直近のエンゲージメントサーベイでは、“自分の仕事にやりがいを感じる”、“バンダイナムコグループでは多様な価値観や考え方を尊重している”などのエンゲージメントやダイバーシティに関する複数の設問で高いスコアを記録しました。この数字の背後にあるのは、IPや事業に対する強い愛、さらには「バンダイナムコ」の存在意義そのものへの支持ではないでしょうか。バンダイナムコはチャンスに満ちあふれた会社です。従業員たちが世界を舞台に羽ばたけるよう、その頑張りがグループの最上位概念である「パーパス“Fun for All into the Future”」につながっていくよう、経営者として最大限後押ししていきます。

非財務の経営基盤強化に向けて

 サステナビリティの取り組みにおいては、2022年4月に司令塔の役割を担うサステナビリティ推進室を新設、さらに同年より取締役報酬の評価指標にサステナビリティ評価を導入しました。こうした施策により、グループ全体の意識改革が着々と進みつつあります。
 当社グループの目指すサステナブル活動とは、IP軸戦略のもと、ファンとともにつくり上げていく活動です。ガンプラのランナー回収やカプセルトイのカプセル回収などが、その好例です。こうした取り組みから生まれた一人ひとりの小さな気づきが、様々な業務に波及していくことを期待しています。
 ガバナンス面では、2022年6月より監査等委員会設置会社へ移行しました。すべての役員が取締役会の議決権を持つことで、同じ課題に向き合うという一体感が一層強まっています。また、業務執行に関する一部権限を常勤役員会に委譲した結果、取締役会においても中長期のテーマを議論する機会が増えました。取締役会の議論は非常に活発で、社外取締役からの意見・質問も多く受けます。さらに長期で議論すべきテーマについては、独立役員会の提言を踏まえVision Meetingを設置するなど、様々な形で充実した議論を行っていると感じています。

川口 勝
私たちが商品・サービスを通じて提供する
“夢・遊び・感動”は、世界中をつなぎ、
人々の人生を豊かにするうえで、
かけがえのない役割を担っていると自負しています。

真のグローバルIP企業を目指して

 当社の代表取締役社長に就任して、3年余りが過ぎました。グループはこの間さらに成長し、売上高1兆円、時価総額2兆円へ成長しました。このことが持つ意味を、私たちは十分に自覚する必要があります。1兆円企業となった当社グループは、これまで以上に重い社会的責任があります。ステークホルダーからの注目、期待度もより大きくなっています。こうした期待に私たちは、2つの側面から応えていかねばなりません。
 それは第1に、より良質なエンターテインメントの提供です。エンターテインメントは生活必需品ではありませんが、生きていくうえで無くてはならないものです。エンターテインメントは文化であり、人々に活力や安らぎ、未来への希望を与えてくれます。その力は、通常考えられているより、はるかに大きなものです。「パーパス“Fun for All into the Future”」が示す通り、私たちが商品・サービスを通じて提供する“夢・遊び・感動”は、世界中をつなぎ、人々の人生を豊かにするうえで、かけがえのない役割を担っていると自負しています。
 そして第2に、さらなる事業成長です。率直に言って、私は現在の業績水準に満足していません。リアルとデジタルの両輪を保持し、大きなポテンシャルを私たちバンダイナムコグループは有しています。経営者として、そのポテンシャルを引き出し、次のステージへとグループは成長していかなければならない。そうした思いで私自身、日々取り組んでいます。
 国内外を問わず、バンダイナムコのポテンシャルを発揮しきれていない地域や事業領域は数多くあります。こうした領域にIP軸戦略のもと挑んでいくことで、もう一段上のステージが見えてきます。全世界でALL BANDAI NAMCOで一体となり成長のための基盤を強くし、日本発IPと海外発IPが相互乗り入れを果たすことで、真のグローバル企業へと進化を遂げるはずです。
 こうした新たなステージで、IP軸戦略もさらに進化させていきます。これからはIPを取り巻く競争環境はさらに激しくなります。その時問われるのは、事業体としての強みです。私はバンダイナムコの強みとは、「ユニークな発想」と「スピード感」だと思います。「ユニークな発想」とはバンダイナムコならではのIP軸戦略であり、これを推進するうえで「スピード」が非常に重要です。この両者を研ぎ澄まし、環境の変化にも機動力を発揮し対応する機敏にして柔軟なバンダイナムコでありたいと思います。私たちは今後とも、良質なエンターテインメントの提供を通じ、笑顔と幸せあふれる未来を従業員や世界中のファン、あらゆるパートナーやステークホルダーの皆様とともに創っていきたいと思います。ワールドワイドでさらなる進化を目指す私たちの挑戦に、より一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2024年9月
川口 勝
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