

45周年を迎え、進化を続ける「ガンダムシリーズ」
2024年に「ガンダムシリーズ」放送45周年、そして2025年はガンプラ発売から45周年を迎えました。次の節目である50周年に向けてガンダムのワールドワイドでのさらなる認知度向上をはかり、長期的な視点でガンダムのIP価値最大化に取り組むことが重要ですが、今回の45周年、そして50周年のいずれも通過点と考えています。長期的な視点で、100年続くガンダムの世界観を構築し、魅力を引き出していかなければならないと考えています。
そういった意味で、2025年4月から大阪・関西万博に出展している「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」は、未来を語るコンテンツとして非常に印象深いものになりました。パビリオンは、未来の平和な暮らしをテーマに、ガンダムが描く宇宙での生活やテクノロジーを通じて、子どもたちにとっての未来を考えるきっかけになることを目指しました。年齢、性別、国籍を問わず、様々な方々にご来場いただき、従来ファンはもちろん、これまでガンダムに触れてこなかった方たちにもガンダムを通じて、このテーマに興味を持っていただけたことは非常に嬉しいことです。
売上規模は6年間で倍増
「ガンダムシリーズ」のグループ全体の売上高は、前々中期計画スタート時の2019年3月期の793億円から、前中期計画最終年度の2025年3月期に1,535億円と、6年間でほぼ倍となる規模に拡大しました。
2026年3月期売上高1,500億円という目標に対して1年前倒しでの達成となります。
2025年3月期の伸びについては、トイホビー事業の貢献も大きいです。ガンプラなどのハイターゲット(大人)層向けを中心に、カプセルトイや玩具菓子・食品事業の伸長があり、まさに大人から子どもまでを対象に業績が拡大する結果となりました。これまでの「ガンダムシリーズ」は、映像作品とガンプラの両輪を中心とした成長を軸としていましたが、最近は展開する商品カテゴリーが着実に広がり、それに伴ってファンと接する機会も増えています。タッチポイント拡大に向けた強化策が、結果的にガンダムの裾野を広げることにもつながりました。
(株)バンダイナムコエンターテインメントのスマートフォンアプリゲーム「SDガンダムジージェネレーション エターナル」も非常に好調で、新たなファンとの接点として非に期待が持てます。グループ内の連携・連動はもちろんのこと、外部パートナーとの連携も含めた力が合わさって、今のガンダムがあるのだと考えています。
長期でガンダムのIP価値最大化をはかるために、既存ファンの皆様を軸として、次世代のファン層を開拓するために、タッチポイントをさらに拡大するなど、50周年を通過点として捉え、息の長いIPとしてガンダムの成長がどうあるべきかを追求していかなければなりません。
グローバル事業の成長をさらに加速
ガンダムのワールドワイド展開においては、これまで同様に北米および中国市場が重点地域です。北米・中国市場を中心に据えながら、中長期視点でワールドワイドでのマーケティング戦略を構築する必要ドでのマーケティング戦略を構築する必要があります。これまでは日本で公開された映像作品を時間差で海外展開することが一般的でしたが、2022年の「機動戦士ガンダム 水星の魔女」から最新作の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」においても、ほぼ日本と同時期に水平展開し、商品・サービスの垂直立ち上げも可能となりました。これが認知度拡大に大きく貢献し、新規ファンの拡大に大きな手応えを感じています。
北米市場では、ここ数年で認知度は拡大傾向にありますが、西海岸や東海岸といった一部のエリアのみのマーケティングにとどまっています。新たなプロモーションとして、ガンプラ45周年をきっかけに、公式ガンプラ総合施設「THE GUNDAM BASE」での体験を北米の多くのファンに体験してもらうため、移動式で展示・販売を行う「Gundam Base Mobile Tour」を全米12州12カ所で計画しています。
また中国市場では、沿海部を中心に都市部におけるガンダムの認知度は比較的高い状況で事業規模も順調に拡大しています。中国市場では「THE GUNDAM BASE」を主要都市に7店舗(2025年3月末時点)展開しており、今中計期間中に内陸部も含めて3倍となる20店舗程度に拡大する計画です。
今後も、ワールドワイド展開の拡大に向けて、グループ内連動はもちろん、外部パートナーとも引き続き連携し、総合力を発揮していきます。現地の文化や嗜好性も考慮した綿密なマーケティングにより、映像作品と商品・サービスを戦略的に展開することでタッチポイントを増やし、ワールドワイドでのファン拡大を強力に進めていく考えです。
ワールドワイドの需要拡大に対応すべく、生産能力強化をはかる
一方で、ガンプラにおいては、生産能力の増強が引き続き課題だと認識しています。映像作品や商品・サービスを全世界で同時展開することで、今後も需要は拡大すると予想しています。こうした課題に、短期ではなく、中期的にマーケティングと生産能力の両面で密接に連動して取り組む考えです。
すでに2025年1月には、プラモデル生産工場である「バンダイホビーセンター」の新工場「BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE(以下、BHCPDII)」が竣工、2025年7月より順次稼働を開始しました。今後、さらに生産設備を導入し、生産クオリティを整えたうえで本格稼働するのは、2026年夏頃となります。本格稼働時の生産能力としては、グループ会社・パートナー企業の協力によるプラモデル生産機能の強化も加え、プラモデル全体で2024年3月期比約35%の増産が可能になる見込みです。また、BHCPDIIは、これまで培ってきたホビーセンタークオリティと呼ばれる高品質の維持に加え、効率化の推進による生産能力向上も大きなテーマです。省人化と自動化を強く意識した工場づくりをして高効率の生産体制を構築します。
さらにBHCPDII内にはプラモデルを通じモノづくりなどを学ぶミュージアムを新たに設置しています。子どもたちが将来、BHCPDIIを通じてモノづくりに興味を持ち、働いてみたくなることをテーマに、こだわりのモノづくりを“魅せる”工場として、ブランディング強化を意識しています。こうした体験型のミュージアムの要素も持った新しい発想の工場として展開していきます。
100年愛されるIPに向けて
「ガンダムシリーズ」は作品ごとに主人公となるモビルスーツやキャラクターが存在します。だからこそ、45年の歴史の中でそれぞれの時代、国や地域により、ファンの入口となるそれぞれのファーストガンダムがあります。多様な作品群とそれぞれの世界観があるからこそ、IPとしての深みや奥行きが生まれ、長きにわたってファンに愛されてきたのだと思います。
今後は、映像と多様なカテゴリーで商品・サービスを連動させながら、さらに盛り上げていきます。当然、今以上にワールドワイドで認知度を向上することは必要不可欠であり、外部パートナーとの連携も様々な角度でガンダムの魅力を引き出すために重視しています。来るべき50周年に向けた構想も幅広く計画中であり、近いうちにいくつか発表できるよう準備しています。繰り返しになりますが、50周年はゴールではなく、その先も長く100年以上にわたって愛され続けるIPにしていきたいと私は強く願っています。そのためにまずは2029年の50周年に向けてガンダムの価値最大化に全力で取り組んでいきます。
私にとってのパーパス
ファンとは、単に商品・サービスが好きな人だけを指すわけではありません。消費者や従業員、関係者、地域の方々など、商品に関わるすべての人が楽しさや喜びを感じられることが大切です。そうした皆の幸せや満足が、企業の成長にもつながっていくと考えています。



