

食玩から菓子事業へ本格進出
(株)バンダイの菓子・食品事業に取り組むキャンディ事業部(以下、当事業部)の歴史は、1981年に遡ります。当初は玩具つき菓子(食玩)を切り口に、トイホビー事業のドメイン拡大をはかるのが主な目的でした。その後2010年に、菓子分野全般に本格参入して以降、業容は一変します。
現在、当事業部は①上述の玩具等の“おまけ”がメインで構成される「食玩事業」、②カード/シール付きウエハースなどを展開する「コレクション菓子事業」、③「キャラパキ」「釣りグミ」など玩具等の“おまけ”を付属せず、お菓子そのものがエンターテインメントで構成されている「菓子事業」の3つの事業カテゴリーで構成しています。いずれの事業カテゴリーもヒット商品を連続的に生み出し、業績は好調に推移しています。2025年3月期の売上高では、すべての事業カテゴリーにおいて過去最高を更新、事業部全体の売上高も直近5年間でほぼ2倍にまで伸長しています。
さらに今期より新たに④「スナック事業」をチームとして設立、スナック菓子カテゴリーにてバンダイならではの菓子エンターテインメントを展開し、菓子売り場におけるお客様とのさらなるタッチポイントと存在感を高めていきます。
国内市場でも積極的な成長路線へ
食玩事業やコレクション菓子事業においては、市場のニーズやトレンドに合わせ年間約400アイテムの商品を展開しています。食玩事業ではバンダイの強みを最大限発揮し、低価格、高クオリティを実現することで他の菓子メーカーにない独自の価値が支持され、100万個を超えるヒット商品を数多く生み出しています。
コレクション菓子事業では、様々なキャラクターに加え、スポーツや芸能など多種多様なエンターテインメントを広義のIPと捉えた商品展開により、ファンとのつながりが年々広がっています。中でも主力のウエハースカテゴリーにおいては年間販売数1億4,000万枚を超え、売場に不可欠な存在にまで成長しています。
このような多角的な事業ポートフォリオにより、子どもから大人まで男女問わず幅広いターゲット層を菓子売場に誘引することにもつながっています。
菓子事業の商品開発においては、トレンドを追うだけでなく、それ以上に子どもたちの中にある、いつの時代にも変わることのない、普遍的な価値と向き合うことを何よりも大切にしています。だからこそ、バンダイならではの「遊び」や「菓子自体の造形」にこだわる当事業部のスタンスは、菓子業界でも異色の存在であり、結果として「キャラパキ」「釣りグミ」「チョコパーキング」のような新しいヒットブランドを生み出すことができたと思います。そして、10年、20年先を見据えて大切に育て続け、世代を超えたブランドへと昇華させることを目標としています。
一方で、1つの商品を長く育て続けることは、ヒットを生み出す以上に難しいことでもあります。発売開始時の商品スペックに決して満足せず、お客様の声に真摯に耳を傾け、常に進化し続けることが大切 だと思っています。こうした取り組みにより、菓子事業は毎年拡大の一途を辿り、メインブランドである「キャラパキシリーズ」は国内のみで年間3,600万個、「釣りグミシリーズ」は年間3,000万個を販売し、わずか5年で大きな成長を遂げています。
アジア・北米市場への戦略的アプローチ
菓子・食品分野は、輸出入の局面などで国や地域ごとの規制が厳しく、また味覚や嗜好には文化・民族性も影響します。食を巡る宗教性にも注意を払っています。こうした課題を一つ一つ解決し、本格的な海外進出を果たすためには、生産・開発体制の現地化を進め、地産地消のビジネスを確立すべきだと考えています。
まずアジアにおいて上述を実現させるため、この3年の間で菓子の生産工場11社に製造委託を行い、現地生産の土台をつくり上げてきました。こうした取り組みにより、生産できる菓子のバリエーションが広がり、価格競争力、安定供給の実現に成功しました。そして何よりも、現地の嗜好に合わせた味を開発できるようになったことも、非常に大きいと感じています。
結果、アジアにおける菓子事業が急拡大しています。そして、このアジアでの成功事例をもとにしたサプライチェーンの構築を、2029年3月期以降の次期中期計画では北米地域にも拡大する方針です。

最も身近な顧客接点としてのキャンディ事業
グループの中長期ビジョン「Connect with Fans」の具現化に向け、当事業部の果たす役割は大きいと感じています。私たちの商品はスーパーやコンビニエンスストアなどの生活導線を中心に展開しており、いつもファンの身近に存在しています。だからこそファンとのつながりを大切にすることで、バンダイナムコグループの入口となり、同時に価値創造の一翼を担っていきたいと思っています。
私にとってのパーパス
パーパスは、進むべき方向に迷ったときに立ち返る場所だと捉えています。どの立場にいるとしても、バンダイナムコの従業員が抱く「ファンとつながり、ファンに喜んでいただきたい」という純粋な想いが言語化されたものなので、その想いが商品に宿り、企業価値向上につながると考えています。



