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Independent Outside Director’s Message

筆頭独立社外取締役からのメッセージ

中期と長期の時間軸で
経営を監督し、
グループガバナンスの
さらなる進化を追求していきます。
島田 俊夫
株式会社バンダイナムコホールディングス
社外取締役

導入から10年を超えた実効性評価

 2015年に開始された取締役会実効性評価は、その後ほぼ毎年、改訂を重ねています。2025年3月期は、質問票の項目として「株主/従業員とのエンゲージメント」を新設したほか、「取締役個人のパフォーマンス」の他者評価を、より本音の部分を引き出せるようにしました。また、Vision Meetingや役員合宿の運営ぶりも評価対象に加えるとともに、評価後のプロセスを、執行側が独立役員会の提言を持ち帰る形から、社外・社内の取締役が一体となって議論する形へ変更しました。
 取締役会事務局の対応は概ね適切で、私たちが求める情報は十分に提供されています。一方で、ステークホルダーの熱量、距離感をつかむヒントとなる任意の情報提供には、改善の余地があるでしょう。業績が好調な時には評価スコアも高く出る傾向があり、過信は禁物です。様々な生きた情報に触れる中で、経営課題への理解を深め、グループ戦略の思わぬ盲点を探知していきたいと思います。

ハイブリッド型のグループガバナンス

 当社取締役会は、モニタリングボードに軸足を置きつつ、マネジメントボードの特徴も併せ持つ「ハイブリッド型」の会議体です。特に、事業統括会社の代表取締役が当社の取締役として参画する構成は、個別戦略ベースのガバナンスの表れで、ファンと向き合う事業展開に多大な利点を有します。一方で、資本戦略や中長期のテーマに時間を割きづらい一面もあり、Vision Meetingや役員合宿がそうした議論の場になっています。今回の取締役人事では、中長期の経営基盤強化に向けて、社内役員を1名増員しました。一見、ガバナンス改革の流れが後戻りしているように見えますが、現状のガバナンス体制下、コーポレート基盤を強化するという意味でも最適な陣容になったと評価しています。
 一連の人事には、人事報酬委員会も深く関与しています。同委員会の役割は、複数候補者から絞り込み、指名を行うことではなく、執行側の候補者案そのものの妥当性を吟味することです。その際の重要な判断基準は、執行側の推挙理由と中長期戦略の整合性です。というのも、社外役員が候補者の適性や人となりを、限られた面談時間で判断するのは難しいからです。もっとも、グループ会社の役員との面談機会は定期的に設けられており、こうした枠組みの援用も可能でしょう。また、スキルマトリクスを抜本的に拡充し、役員人事への活用をはかるのも有力なアイデアで、引き続き検討を進めていきます。

中期と長期の時間軸

 今中期計画で打ち出された諸施策のうち、資本政策やキャピタル・アロケーション、還元方針などには、私たち社外やコーポレート側の問題意識が強く反映されています。対して事業戦略の多くは、各事業単位で作成した案に、私たちが様々な疑問をフィードバックする過程を経て完成しました。中長期かつグループ全体の視点で行うCW360による“360”投資と併せて、今後はこれらの進捗状況を、地政学的な影響や市場の変化などを考慮しつつ、モニターしていく段階です。
 こうした中期スパンの戦略が2030年のグループのあるべき姿を想定しているように、次期中期計画(2028年4月~)の策定においては、2035年の未来図をどう置くかがテーマとなるでしょう。一般に、短~中期の施策と長期の方向性の関係を巡っては、①短~中期の積み重ねの中から後者を模索するアプローチ、②長期ビジョンから前者をバックキャストするアプローチの2つの考え方があります。近年の当社グループの急成長を支えてきたのは①の考え方ですが、ビジネスの長期的な持続可能性が問題となる局面では、②も重要でしょう。ただ、その場合には、長期ビジョンの必要性の認識、内発的な動機付けが不可欠です。まずは、長期の方向性を議論できる土壌づくりに努め、ビジョン策定の可能性を探っていきたいと思います。

資本市場とのさらなる対話に向けて

 コーポレート基盤強化というガバナンス改革の方向性は、基本的に妥当と評価しています。一方で、こうした改革が社内で正しく理解され、事業サイドの手足を縛るのではなく、より自由度を高めるものとなるように、施策の運用にあたっては細心の注意が必要です。
 また、今中期計画では資本市場との対話のスタンスを強く打ち出しています。私自身、機関投資家と面談を実施しており、ご指摘に真摯に耳を傾けつつ、忌憚のない意見交換に努めています。また取締役会等の場では、株主の「代理人」として執行側に様々な問いかけを行い、より良いアイデアを引き出すべく努力しています。バンダイナムコらしさとマーケットの要請への対応の両立は容易なテーマではありませんが、その最適なバランスの実現に向け、グループガバナンスのさらなる進化を追求していきます。

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