

「売り切り型」から「運営型」へ
「BANDAI CARD GAMES」は、(株)バンダイのカード事業部が展開するカードゲームをパーパスの価値観で捉え直し、2023年9月に立ち上げたカードゲームブランドです。地球をかたどるブランドロゴは、世界とのつながりを端的に表現しています。また、カードの販売にとどまらず、ファンとIPの世界観をつなぎ、リアルな交流の場を創出する「運営型サービス」への転換を表しています。
私はかつて(株)バンダイナムコエンターテインメントでスマートフォン向けゲームや家庭用ゲームの開発・運営に携わり、初代プロデューサーとして「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」といったタイトルを世に送り出してきました。こうした経験を「BANDAI CARD GAMES」で活かしていきたいと思います。ファンと向き合い、市場の一歩先を見据えた環境整備が、運営型サービスの要です。当事業部の組織文化と異業種の視点を掛け合わせ、この新たな方向性の定着・発展に努めていきます。

成長市場で世界第3位のシェア獲得
当事業部の主力は、トレーディングカードゲーム(TCG)です。1990年代に誕生した比較的新しいジャンルながら、第1世代のお客様がハイターゲット(大人)層を形成するにつれ、事業環境に大きな追い風が吹いています。2025年3月期のカードゲーム国内市場規模(P.59のグラフ参照)は3,197億円(前期比11.7%増)で、日本と最大市場の北米地域を中心に、グローバル市場でも堅調に拡大する見通しです。
この成長領域で(株)バンダイは、世界第3位のシェアを占めています(2025年3月時点)。飛躍のきっかけは、2022年7月に発売した「ONE PIECEカードゲーム」です。映画「ONE PIECE FILM RED」の公開と連動しつつ、ゲームの世界観を表現するテキストの簡素化など、蓄積したノウハウをフルに活用し、大ヒットにつなげました。2025年7月現在、全6タイトルを擁しますが、運営の質の充実を大前提に、さらなる拡充も視野に入れています。
一方、これと並行して、業務用ゲーム機とカードゲームを融合させたジャンル「データカードダス」を展開しています。2024年11月に新タイトル「ドラゴンボールスーパーダイバーズ」が立ち上がり、「機動戦士ガンダム アーセナルベース」と「仮面ライダーバトル ガンバレジェンズ」の2タイトルが2025年3月期の第4四半期で過去最高の売上を記録するなど、TCGとともにカードビジネスの柱として、国内やアジア市場を中心に、着々と基盤固めを進めています。

エリアの実情に応じたアプローチ

対戦型ゲームであるTCGは、参加する人が増えれば増えるほど戦略や楽しみの幅も広がり、またファンが新たなファンを呼ぶ連鎖が働きます。そこで、世界12地域でのタイトル集合イベント「BANDAI CARD GAMES Fest」の開催や、子ども向けのイベントなどを開催し、新規ファンの開拓を進めています。
エリア戦略としては、すでにTCG文化が根付いた北米地域では既存TCGファンの深耕を、将来の巨大市場・中国内地ではIPファンに向けたマーケティング強化というように、地域の実情に応じたアプローチを展開しています。特に北米では、テキサス州ダラスに新オフィスを開設し、より円滑なコンテンツ運営と顧客体験向上に努めています。

データに基づく意思決定・品質管理
供給体制の面では、旺盛な需要に応えるべく、国内の生産能力拡充に取り組む一方、各メーカーの海外生産拠点に協力していただき、展開国に合わせて生産地域を拡大できないかなどの検討を進めています。
また、カードに記載されたテキストの適切な翻訳・ローカライズは、商品の魅力を左右する重要な要素ですが、この工程に時間をかけすぎると、各エリアで商品導入のタイミングがばらつき、機会損失が生じてしまいます。こうした機会損失を防ぐため、2025年7月に発売した「ガンダムカードゲーム」では、日本語・英語・簡体字の3言語版の同時展開という新機軸に挑戦しています(ガンダムカードゲームについては、P.60をご覧ください)。
これら一連の工程を支えているのは、バックオフィスにおけるITやAIを活用した品質管理の進化です。また商品開発でも、グループのデータユニバースや独自アプリ「BANDAI TCG+」を介してお客様のニーズを把握、商品ラインナップに反映させるなど、日々の意思決定にデータの活用を徹底しています。
カードゲームの素晴らしさを世界へ
2025年春、幕張で開かれた「BANDAI CARD GAMES Fest」には、約2万人のお客様が来場されました。会場を埋め尽くすその熱量に、私は心から感動しました。TCGは「モノ」にこだわり、様々な喜怒哀楽をもたらす、リアルなコミュニケーションの場です。その素晴らしさを1人でも多くの方々に広めていきたいと思います。
カード事業は、まだまだ奥行きのあるビジネスです。過去の成功例に甘んじず、新たなチャレンジを重ね、世界を舞台にカードゲーム文化創造の一翼を担っていきたいと考えています。
私にとってのパーパス
私たちがやりたいことを掲げているものがパーパスであり、自然と受け入れることができました。エンターテインメントを通じて人と人とがつながり、ひいてはファンと一緒に作り上げていくことを一番大切にしています。



