

長く愛されるIPとして成長してきた「アイドルマスター」シリーズ
「アイドルマスター」シリーズは、2005年7月にアミューズメント施設向けゲームとしてスタートし、2025年に20周年を迎えました。この間にリリースした作品ごとに新たなファンが生まれ、ゲーム以外のライブや音楽、グッズなどに触れていただくことで「アイドルマスター」シリーズは、成長を遂げてきました。売上の中心は、ゲームコンテンツですが、同様の規模でライブ、音楽コンテンツ、ライセンス事業も成長するなど、グループの様々な事業と連動しているほか、外部パートナーとの共創もあり、事業規模は大きく拡大しています。
20年にわたる成長の要因としては、何といってもプレイヤーであるファン(=プロデューサー)、ライブでパフォーマンスを披露するキャスト、クリエイターを含む開発チームが三位一体となって「アイドルマスター」を育ててきたことです。
常にファンの声に耳を傾けて作品に反映
「アイドルマスター」とは、プレイヤーが芸能プロダクションの“プロデューサー”という立場でアイドルを育成する「アイドルプロデュース」ゲームコンテンツであり、ロールプレイングの要素が強いことが特徴となっています。この育てるという動機付けが、プロデューサーとなるファンの感情移入を強め、その想いが周囲のプロデューサーにも伝播し、コミュニティが形成されるという好循環がつくられます。こうしたコアなファンは、個々に作品を解釈してコミュニティ内で情報交換しており、強固なファン同士のつながりが生まれ、かつ情報が拡散することで周囲を巻き込みながらファン層が拡大していきます。私たちも、こうしたファンの声や解釈を大変重視しており、過去作品から一貫してファンの声に耳を傾けながら常に作品に活かしてきました。過去の土台が、次の作品へと受け継がれ、ファンとともに作品をつくり上げてきた自負があります。これこそが長く愛されるIPとして続いてきた秘訣だと思います。
今の時代に合わせて誕生した「学園アイドルマスター」
「学園アイドルマスター」(以下、学マス)は、2024年5月にリリースした6年ぶりとなるスマートフォン向け新作ゲームアプリです。これまでとコンセプトに変わりはありませんが、アイドル養成学校をスタートの舞台に設定し、アイドルの卵たちがプロデューサーとともに成長していく姿を描いています。過去作品では事務所に所属するプロのアイドルの育成から物語がスタートしていきますが、「学マス」はアイドルの卵として養成学校でアイドルへと育成され、さらに大きなステージに立つまでの2段階で物語が構成されています。一人ひとりのアイドルたちの成長過程が丁寧に描かれており、ファンはプロデューサーとして深く入り込むことで、自分の存在を作中でより強く実感できます。こうした体験価値の向上が「学マス」における非常に重要なポイントです。
様々な挑戦が盛り込まれた「学マス」ですが、初期の「アイドルマスター」から関わってきた社内の開発メンバーや、プロデューサーであるファンの声を活かした作品になったと、大きな手応えを感じています。「学マス」リリース当初は既存ファンに受け入れられるか不安もありましたが、反響も非常に大きく、結果5カ月で200万ダウンロードを達成するなど、「これまでの想いと、新しい挑戦を掛け合わせて表現できた」と実感できました。また、「アイドルマスター」シリーズは10~30代男性をメインターゲットとしていますが、「学マス」を通じて女性ファンが増えていることも印象的です。
「アイドルマスター」の価値最大化に向けて
「アイドルマスター」シリーズは、その時代にフィットした新しいアイドル像を描くため、数年ごとに新しい作品をリリースする構想があり、初期から最新作「学マス」に至るまで、作品のリリースごとにIP価値は拡大し、存在感を増しています。今後もゲームコンテンツを定期的にリリースすることが、中心的な戦略となります。
また、より多彩な事業と接続することも戦略の1つです。ゲームから触れるファンもいれば、音楽、映像やライブから興味を持つファンもおり、過去から多岐にわたるタッチポイントを増やしてきたことが、「学マス」にも触れる機会を増加させたと考えています。バンダイナムコグループは、ゲームコンテンツだけでなく、様々な事業分野を持っているからこそ、スピード感を持って多面的な展開を実現できることが大きな強みです。展開については、もちろんグループ内に閉じず、様々なパートナーと取り組みますが、IPの展開方針においてはグループ内で完結することでコミュニケーションが取りやすく、素早い決断と実行が可能です。
また海外においては、まだ展開規模が大きいとは言えませんが、中国を中心としたアジア圏で人気を得ています。今後はMRライブ(P.68も併せてご覧ください)の定期的な開催で、アジア地域にコンテンツを届けていきたいと考えています。
「アイドルマスター」シリーズは、ファンが独自のコミュニティを通じて様々な楽しみ方を発信しており、中長期ビジョンの「Connect with Fans」を体現するIPに成長していると自負しています。今後も常にファンの声に耳を傾けながら、IPの価値最大化に向け、様々な可能性を探りながら挑戦し続けていきます。


私にとってのパーパス
波多野アクションスローガン「CRE@TE POWER WITH YOU!(クリエイトパワーウィズユー!)あなたらしさが、きっと誰かの力になる。」が示すように、アイドルマスターは、アイドル、制作陣、ファンであるプロデューサーの皆さまの個性が誰かの力に繋がることを一貫して重視してきました。これはパーパスの実現そのものだと感じています。
小美野エンターテインメント企業として当たり前な言葉ではありますが、あえてパーパスとして位置付けられていることで、意識的に実践できています。目の前の仕事に集中していると忘れがちですが、従業員やパートナーの存在を思い出させる言葉として掲げていることに意味があり、当たり前だからこそ、意識的に実践し続けていきたいです。



