気候変動への対応
バンダイナムコグループでは、気候変動への対応が持続可能な社会の実現と事業の継続的な発展に不可欠であるとの認識のもと、2021年4月の「バンダイナムコグループのサステナビリティ方針」策定とあわせて、脱炭素化社会に向けた中長期の目標を設定しました。また、同年からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示を開始しています。2023年9月にはTCFD提言への賛同を表明しました。TCFDコンソーシアムにも参加しており、気候変動に関する最新情報の収集などに努めています。
引き続き、気候変動が事業に与える影響と、関連するリスクと機会についてシナリオに基づく分析を行い、これらのリスク・機会への対応を強化するとともに、さらなる情報開示に取り組みます。
TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスクと機会に関して、ガバナンス、戦略、管理、指標と目標の観点から取り組みの方針や体制について説明します。
ガバナンス
当社グループは、社会の持続可能性が事業活動において重要であることを認識しており、サステナビリティに関する活動をよりスピーディに決定・実行するため、代表取締役社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置しています。
本委員会は半期ごと(年2回)の頻度で開催され、重要議題の一つとして気候変動対応について協議を行い、各施策を検討後、グループ各社にて施策を実施。当社取締役会に定期的に結果を報告し、取締役会がその審議・監督を行います。また、本委員会の下部組織であるグループサステナビリティ部会は、バンダイナムコグループのサステナビリティ方針およびマテリアリティに沿った活動の推進に取り組んでいます。
2023年3月には、これら体制のもと、2023年度グループ目標KPIを決議しました。
サステナビリティ推進体制図
戦略
気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析方法
気候変動による当社グループ事業への影響を明らかにするために、以下の2つのシナリオを用いて2030年におけるシナリオ分析を実施しました。今回は、積極的な脱炭素政策により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオと、限定的な脱炭素政策により気候上昇が進む4℃シナリオを採用しました。各シナリオで分析するために、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオを参考にしました。災害などの気候変動による物理的な影響の分析のためにRCPシナリオを使用し、一方で、炭素税などの脱炭素経済への移行に伴う影響の分析のためにはIEAのシナリオを使用しました。
積極的な気候変動対策が実施され、 気温上昇が抑えられる世界 |
脱炭素政策は限定的であり、 気温上昇/気候変動が進む世界 |
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1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
概要 | 気温上昇が19世紀後半から2100年までで1.5℃に抑えられるシナリオ。炭素価格制度の導入など脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)が顕著となる。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べると比較的小さい | 気温上昇が19世紀後半から2100年までで4℃近く上昇するシナリオ。災害など気候変動による物理的な影響(物理リスク)が顕著となる。気候変動に関する規制強化は行われないため、移行リスクの影響は小さい | |
参 考 シ ナ リ オ |
移行 リスク |
IEA Net Zero Emission by 2050(NZE), IEA Announced Pledges Scenario(APS), IEA Sustainable Development Scenario(SDS) | IEA Stated Polices Scenario(STEPS) |
物理 リスク |
IPCC RCP 2.6 | IPCC RCP 8.5 |
注) 1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用
シナリオ分析結果
1.5℃シナリオ
1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や化石燃料の使用に関する規制導入など、脱炭素社会への移行に伴う影響が予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量取引制度)の導入により操業コストの増加すること、プラスチック規制に対する玩具事業における対応コストの増加、原材料価格の高騰による調達コストの増加などが挙げられました。一方で、機会としては、省エネ技術の向上による生産性の向上や、環境を配慮したコンテンツの提供による新規顧客獲得などが挙げられました。
これらの課題に対応するため、例として太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入や、アミューズメント施設やライブ・イベント会場における電力使用量の削減、その他物流部門におけるエコドライブ活動、低公害車導入などに取り組んでいます。プラスチック規制や原材料価格の高騰への対応としては、リサイクル材の使用だけでなく、代替素材の導入、省資源製品(カプセルレスのガシャポン、エコアミューズメント製品、エコメダル認定製品)の開発など、製品設計の工夫によってプラスチック材の使用量を削減する取り組みを実施しています。なお、各社施策の詳細は「取り組み一覧」ページを参照ください。
4℃シナリオ
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されます。リスクとしては、当社事業所やサプライチェーンでの被災による事業活動の停止が挙げられました。また、猛暑や雨天増加などの気象パターンの変化によって、屋外イベント/サービスの売上減少も想定されました。一方で、機会としては、気象パターンの変化により、自宅や屋内で過ごす時間が増えることで、家庭用ゲームや玩具の売上や、屋内イベント/サービスの売上が増加することが想定されました。
リスク軽減としては、災害対応のためにBCP基本方針の策定や訓練を実施しています。さらに、バーチャルイベントの開催によって、猛暑や雨天に左右されないサービスの開発を進めています。また、この取り組みは機会獲得にも貢献すると考えられ、今後はお客様が天候等に左右されずエンターテインメントコンテンツを利用できるように、多様なサービスを開発していきます。
項目 | 想定される事象 | 影響 評価 |
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リスク 機会 |
中分類 | 小分類 | ||
リスク | 政策 ・ 規制 |
炭素価格の導入 |
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大 |
化石燃料の使用に関する規制 |
|
小 | ||
プラスチック・資源リサイクル規制 |
|
大 | ||
再エネ・省エネ政策 |
|
大 | ||
情報開示義務 |
|
中 | ||
市場 | 原材料コストの変化 |
|
大 | |
機会 | 市場 | 顧客行動変化 |
|
大 |
評価 | 投資家評価の変化 |
|
大 |
項目 | 想定される事象 | 影響 評価 |
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リスク 機会 |
中分類 | 小分類 | ||
リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 (台風、豪雨、土砂、高潮等) |
異常気象の激甚化に伴う風水害の増加により以下事項が想定される
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大 |
干ばつ |
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中 | ||
慢性 | 平均気温の上昇 | 平均気温の上昇に伴う夏季の猛暑により以下事項が想定される。
|
中 | |
降水・気象パターンの変化 |
|
中 | ||
平均気温の上昇による原材料生育影響 |
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中 | ||
海面上昇 |
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小 | ||
感染症の増加 |
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中 | ||
機会 | 慢性 | 平均気温の上昇 |
|
中 |
降水・気象パターンの変化 |
|
中 |
リスク管理
当社グループでは、サステナビリティに関するリスクと機会についてグループサステナビリティ委員会で協議のうえ、当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定し、グループ全体のサステナブル活動を推進しています。推進にあたっては、グループの危機管理体制を統括するグループリスクコンプライアンス委員会と連携しています。グループ各社が事業特性に合わせた施策にマテリアリティに沿って取り組んでおり、その結果は連結会計年度ごとに、グループ全体および事業セグメントごとに分析し、翌連結会計年度以降の施策の改善につなげています。この分析内容については、グループサステナビリティ委員会にて協議のうえ、取締役会に報告し、必要に応じて取締役会が審議・監督を行っています。
指標と目標
当社グループは、自社のESG経営の進捗および気候変動に対する政策リスク等の影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量を指標として設定し、自社拠点におけるエネルギー由来の二酸化炭素排出量を2030年までに2019年度比35%削減することを中間目標として掲げています。さらに、2050年までには、自社拠点(社屋、自社工場、直営アミューズメント施設等)におけるエネルギー由来の二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目標としています。今後は、目標達成にむけて、省エネルギー施策のさらなる推進や再生可能エネルギーの導入などを進めていきます。
脱炭素化に向けた中長期目標
※ 社屋、自社工場、直営アミューズメント施設など
バンダイナムコグループ 二酸化炭素排出量の推移
注) Scope1 とScope2の合計値
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||||
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CO2 排出量 |
Scope1(t-CO2) | 6,271 | 6,039 | 5,540 | 6,131 | 7,882 | ||
Scope2(t-CO2) | 60,001 | 51,878 | 50,978 | 49,272 | 41,558 | |||
Scope1 + Scope2(t-CO2) | 66,272 | 57,916 | 56,517 | 55,403 | 49,441 | |||
Scope3(t-CO2) | - | - | - | 1,091,255 | 1,202,209 | |||
カテゴリー1 | 購入した 製品・ サービス |
- | - | - | 576,512 | 636,698 | ||
カテゴリー2 | 資本財 | - | - | - | 95,884 | 110,312 | ||
カテゴリー3 | Scope1、 2に含まれ ない燃料 および エネルギー 関連活動 |
- | - | - | 5,758 | 5,490 | ||
カテゴリー4 | 輸送、配送 (上流) |
- | - | - | 10,399 | 9,174 | ||
カテゴリー5 | 事業から 出る 廃棄物 |
- | - | - | 2,669 | 2,931 | ||
カテゴリー6 | 出張 | - | - | - | 5,158 | 8,817 | ||
カテゴリー7 | 雇用者の 通勤 |
- | - | - | 710 | 837 | ||
カテゴリー8 | リース資産 (上流) |
- | - | - | 対象外 | 対象外 | ||
カテゴリー9 | 輸送、配送 (下流) |
- | - | - | 3 | 2 | ||
カテゴリー10 | 販売した 製品の加工 |
- | - | - | 対象外 | 対象外 | ||
カテゴリー11 | 販売した 製品の使用 |
- | - | - | 21,792 | 12,284 | ||
カテゴリー12 | 販売した 製品の廃棄 |
- | - | - | 372,368 | 415,664 | ||
カテゴリー13 | リース資産 (下流) |
- | - | - | 対象外 | 対象外 | ||
カテゴリー14 | フラン チャイズ |
- | - | - | 対象外 | 対象外 | ||
カテゴリー15 | 投資 | - | - | - | 対象外 | 対象外 |
※1:2021年度の再生可能エネルギー使用(購入)量は非再生可能エネルギー使用量に合算されております。
※2:Scope3を除く数値については第三者による限定的保証またはレビューを実施しています。
※3:過去の実績値については、集計結果の精査を行い、遡って修正する場合があります。
※4:Scope3の対象はバンダイナムコエンターテインメント、バンダイ、BANDAI SPIRITS、バンダイナムコフィルムワークス、バンダイナムコアミューズメントとなります。
【CO2排出量Scope3算出方法】
カテゴリー1:調達額に排出原単位を乗じて算出。(内部取引を除く)
カテゴリー2:設備投資額に排出原単位を乗じて算出。(グループ全体)
カテゴリー3:各エネルギーの消費量に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー4:輸送サービスの購入額に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー5:各廃棄物の発生量に処理方法別の排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー6:移動手段別の交通費支給額に排出原単位を乗じて算出。バンダイナムコエンターテインメントのみ、従業員数に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー7:交通費支給額に対し、すべて"旅客鉄道"を使用した場合の排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー9:ゲーム筐体の輸送重量に対しトンキロ法を用いて算出。(バンダイナムコアミューズメント)
カテゴリー11:電池を使用する製品に対し、2回電池交換をすることを前提に、製品の販売数量、電池使用本数、平均電池寿命から消費電力量を算出し、排出原単位を乗じて算出。(バンダイ)
ゲーム筐体の販売数量、消費電力、ゲームセンターの平均営業時間と営業日数から算出した年間使用時間に排出原単位を乗じて算出。(バンダイナムコアミューズメント)
カテゴリー12:販売した製品の重量に排出原単位を乗じて算出。ただしバンダイ、BANDAI SPIRITSは部門別売上シェア10%商材の平均重量を使用、バンダイナムコフィルムワークスは販売数量トップ10の平均重量を使用。バンダイナムコアミューズメントはゲーム筐体のみ算出。
※カテゴリー8、10、13、14、15は対象外