未来を「創造」する企業であり続けるために
適切な監督と助言に努めていきます
島田 俊夫 株式会社バンダイナムコホールディングス
社外取締役
取締役会実効性評価手法の見直し
取締役会実効性評価は、ここ数年、非常に高いスコアを記録してきました。業績についても結果を出しており、妥当な評価と捉えています。企業業績と評価スコアには、一定の相関が認められる傾向にあります。結果が求められる経営の舵を握る取締役会の実効性評価ですから、必然の結果とも言えるかもしれません。とはいえ、取締役会の実効性とは、こうした側面のみにとどまるものではなく、経営リスクの所在の把握を執行側に促すことや、パーパスと整合しない取り組みや行動の兆しが生まれたときに、警告を発することも、果たすべき重要な機能です。こうした観点から当社では、取締役会実効性評価を開始して以来、ガバナンス環境の変化に合わせ適時、評価項目などの改訂を行っています。2027年3月期からは、新たな施策として従来のアンケート調査に加え、より実質的な改善提言につながる評価への進化を目的に、各取締役へのインタビューを実施することとしました。
実効性評価とは、取締役会の自己評価のプロセスであり、自分たちを評価するという特有の難しさがあります。評価プロセスがマンネリ化せず、また、好業績に流されることなく、常に新鮮な視点で、より適切な形での評価が担保されるよう、今後も進化に努めていく方針です。
社外取締役の陣容変更
2026年6月の定時株主総会をもって、社外取締役5名中、3名が新任に入れ替わりました。特に独立役員会や人事報酬委員会は、大幅な陣容変更となります。
私自身、2026年6月より就任6年目に入りました。様々な会議の場を通じて、常に社外の視点を持ち続けているつもりですが、それでも以前に比べれば、より社内の論理になじみやすくなっているかもしれません。社外取締役の過半が新任に変わるという機会をプラスに捉え、新鮮な視点、現場の事情や企業文化から一定の距離がある立ち位置からの新たな風を、執行側と新任の社外取締役をつなぐ媒介者としての役割を果たしていきたいと考えています。社外取締役の陣容変更が、当社の企業価値のさらなる向上に向けた新たな一歩になるのではないかと期待しつつ、その媒介者の役割の重みをしっかりと受け止め、未来を「創造」する企業への進化を確実にしていく責務を、楽しみ、しっかり果たすことに全力を尽くしたいと考えています。
長期の方向性とIP軸戦略
グループの短期的施策と長期的展望の関係については、独立役員会を中心に議論を重ねてきました。今日、多くの日本企業で採用されているのは、後者からバックキャストして前者を導出するというアプローチです。当社においても長期的に目指す姿をもとに中期で取り組む戦略を策定しています。しかしながら当社のように、未来を「創造」するエンターテインメント企業にとって、未来とは「予測」ではなく、自ら「創造」するものであり、未来の創造とは、現在の課題意識、環境変化、ファンの意識変化と結びついた、極めて能動的な行動の積み重ねであることが核心だと考えています。
そこで、より地に足の着いた議論を行うべく、2027年3月期は「IP軸戦略のあり方」を年間の議論視点に置き、オフサイトミーティングであるVision Meetingの場を中心に議論していくことにしました。全取締役が、IP軸戦略に関する認識を共有しつつ、時代環境の変化を踏まえて修正すべき点などを話し合う議論の中から、長期の戦略や展望がおのずと見えてくることを企図したものです。
人事報酬委員会の課題と位置付け
人事報酬委員会では、グループの役員人事・報酬等に関する議論を随時行っています。役員報酬制度は年々練り上げられ、一定の収斂を見せていますが、2026年3月期からは株主との一層の価値共有を促進するため、評価指標にEPS(1株当たり当期純利益)を新たに加えるなど、進化の手は緩めずに取り組んできています。今後の進化という面では、サステナビリティ評価のブラッシュアップなどは、議論の対象にはなろうかと思っています。サステナビリティ評価を巡っては、導入以降、見直しや微調整を続けていますが、サステナビリティを経営のコアに据えて、事業機会の創出とリスク管理の両立を目指すという視点に立てば、進化の余地があるものと認識しています。新任の社外取締役には、現在の評価項目の妥当性も含め、しがらみのない立場から、忌憚のない意見を期待しています。
また、現状人事報酬委員会は、役員候補者の選定そのものには直接的な関与はしていません。社外取締役が役員の人事権を握るといった手法もガバナンス議論の土俵に上がっている面もありますが、当社では、候補者の育成プログラムについては、個別人事とは切り離して当委員会で議論をしており、選抜プロセスの議論に入り込んでいくことを現在はしていません。しかし、人事報酬委員会の関与として選抜候補者の面談の機会はありますが最終選定への影響は限定的ですので、組織内の論理のみによる後継者選出が続くと、経営リーダーの同質化を招く懸念がないとも言い切れません。こうした点も踏まえ、未来志向で、人事報酬委員会の位置付けについても、議論を深めていきたいと思います。
ファンや投資家と対話する経営へ
時代状況が不確実性を増す中、事業を巡るリスクは、枚挙にいとまがありません。このうち、地政学リスクを別にすれば、当社グループにとって最大のリスクは、経営の向かう方向とファンの期待に乖離が生まれることです。未来のトレンドを創造するはずが、経営業績のみに目を奪われるなど、自社論理に陥るようなことがないように、常に謙虚かつ予見のない姿勢でファンに向き合うよう、適切な監督と助言に努めていきます。
また、資本市場との関係においては、好調な業績と株価が必ずしも相関しないケースを、重く受け止めています。企業経営において、「社外取締役と投資家の皆様は車の両輪」、というのが私の持論です。当社グループがその実力と潜在力を正当に評価していただけるよう、また、投資家の視点を経営現場にフィードバックするためにも、投資家の皆様とは、相互理解を深めるための意見交換を行い、謙虚に相互が自己の視点を磨き直すような関係を構築していければと考えています。

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私にとってのパーパス